■危惧すべきは米国株の急落か
では、「正常ではない米ドル高」はあるか。正常範囲を超えた急激な米ドル高があった場合、いわゆる米ドルを資金避難先とみなす「悪い米ドル高」のケースに当たる確率が高い。ゆえに、急激な米ドル高があれば、それは「悪い米ドル高」に当たるのではないかと思う。
米ドルが避難先とみなされる場合は、いつものように危機か混乱、そして戦争などの局面を伴う。
足元、その可能性があるとすれば、もっとも危惧されるべきなのは、史上最高値圏にある米国株の急落がもたらすパニックではないかと思われる。なにしろ、米国株はあまりにも高い水準に到達しているから、FRBは株バブルを懸念し、意図的に冷やしていくような政策を練り始めているのではないかといった観測も出ている。政策の一環として早期QE縮小も考えられるわけだ。
(出所:米国FXCM)
一方、史上最高値圏に達している米国やドイツの株式市場がバブルであるかどうかは見方によって違ってくるし、バブルであってもいつ崩壊するかを事前に予測するのは至難の業だ。
(出所:米国FXCM)
■「緩やかな米ドル高」となる可能性がもっとも高い
もっとも、バブルというものは、崩壊した後、初めてバブルとして認識されるケースが多いから、崩壊していないうちにバブルを指摘しても、あてにならないケースが多い。ましてや猫も杓子もバブル、バブルと騒いでいるうちは余計にそうである。
したがって、筆者は「悪い米ドル高」の可能性は否定しないものの、マーケットが危惧しているうちは、なかなかそれは来ないのではないかと思う。この場合、やはり緩やかな米ドル高、といった市況に発展していく可能性が一番大きいと思う。
この場合、もっとも恩恵を受けるのは米ドル/円であろう。
なぜなら、悪いドル高、すなわち急激な米ドル全面高の局面は、往々にしてパニックが伴っているから、安全な避難先を求める流れのなかで円も買われる羽目になる。そして、急激なドル高の場合、ユーロの急落がユーロ/円に波及し、円買い圧力と化して米ドル/円を圧迫するといった構造も想定される。
ゆえに、急激な米ドル高ではなく、緩やかなドルインデックスの反騰に留まった場合、米ドル/円も上放れしやすいとみる。5月高値から煮詰まりつつある米ドル/円の大型トライアングルは、そろそろブレイクされる時期に来ているから、どちらにブレイクするか、注目されるところだ。
(出所:米国FXCM)
目下、筆者は引き続き上放れを有力視。市況はいかに。
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