■円安トレンドはスピード調整へ
今週(12月2日~)、円安トレンドの継続とそれに対するスピード調整の両方がみられた。
米ドル/円とユーロ/円、英ポンド/円は、ともに12月3日(火)まで高値更新を続け、またそこから反落してきた。そのうち、「スピード違反」だった英ポンド/円の調整幅(3円超)は、そのスピードに比例して比較的大きかったが、上昇波の値幅に比べ、なお限定的であろう。
なにしろ、円売りポジションはずっと積み上がってきたから、今週(12月2日~)まで高値更新を続けること自体、オーバーな値動きそのものだった。
先週(11月25日~)は米感謝祭で薄商いという環境において、値動きが一方通行になりやすかったこともあり、英ポンド/円の168円の節目打診や、ユーロ/円の140円の節目打診は、当面の天井にかなり接近してきたのではないかとみる。
■ユーロ/円、英ポンド/円はこれから本格的な調整下落か
言い換えれば、本格的な調整はまだ展開されていないから、天井を打ったかどうかは慎重に判断すべきだが、ユーロ/円、英ポンド/円の上昇変動は、2012年安値から続くブル(上昇)トレンドの一区切りとして、もう最終段階に入った気配が濃厚だ。
ゆえに、ここからのさらなる上値追いには慎重なスタンスで臨むべきではないかと思う。
上値の目安に関して、シンプルなアプローチで測れば、2012年安値からのユーロ/円の切り返しは、2008年高値を起点とした全下落幅に対する切り返しという位置付けができるだろう。この場合、同全下落幅の61.8%反騰位置は140.95円となり、当面の天井として意識されやすい。
(出所:米国FXCM)
その上、RSIで見るように、2月から構築されてきた弱気ダイバージェンスの構築が煮詰まりつつある状況にあり、これがこれから効いてくるなら、ユーロ/円もより本格的な反落を果たしてくるだろう。
英ポンド/円の状況も似ている。英ポンド/円は2008年高値を起点とした全下落幅に対する38.2%反騰位置の168.06円を突破しているが、RSIで2月高値か ら構築されてきた弱気ダイバージェンスのサインが煮詰まりつつあり、これがいつ効いてきてもおかしくなかろう。
したがって、目先の調整はまだ初歩段階にすぎず、調整があるのならば、むしろこれからではないかと思う。
(出所:米国FXCM)
■ドル/円がこれから5月高値を更新すると考える理由とは?
一方、本格的な調整が来る前に、この2つのクロス円(=ユーロ/円と英ポンド/円)の上値余地が、なお残されている可能性も完全には排除できない。
最大のカギは、米ドル/円の値動きだ。
前回のコラムで指摘したとおり、米ドル/円もスピード調整を果たしているが、まだ5月高値を更新していないだけに、トップアウトは時期尚早だろう。
【参考記事】
●ドル/円は100円台後半までの反落警戒も、いずれ高値更新し、105円台が射程圏に!(2013年11月29日、陳満咲杜)
下のチャートに記しているように、米ドル/円は10月25日(金)安値96.93円から上昇波を展開してきたが、まだ5月高値を更新していないため、RSIとの相違からのシグナルを読み取れずにいる。
一方、同上昇波は2010年10月安値75.56円を起点とした5波構造上昇波の最終波に当たるだけに、これから高値更新をしていく宿命にある。
(出所:米国FXCM)
エリオット波動論では、5月高値(3波のトップ)を更新しないうちに第5波がトップアウトすることは稀である。もし、それがあれば、「5波の失敗」という位置付けとなり、どちらかというと、大きなトレンドを転換させる前兆と受け止める場合が多い。
【エリオット波動に関する参考記事】
●宮田直彦氏に聞く(2012年-1) 米ドル/円は新たな長期米ドル高・円安時代に入った!
2010年安値は戦後の米ドル/円最安値だから、そこからの反騰は、一区切りとしてどこかでトップアウトする可能性が大きいものの、それをもって大きなトレンドが転換されるとは考えにくい。
言い換えれば、2010年安値をもって戦後一貫した米ドル安・円高に終止符を打ったのならば、同安値からは息の長い米ドル高・円安トレンドが想定されるため、反落があっても調整波という位置付けとなり、トレンド自体は続く公算が大きい。ゆえに、「5波の失敗」は考えにくい。
こういったロジックに基づき、米ドル/円のスピード調整は比較的浅く済み、これから高値更新を狙う公算が大きいと結論づけられるだろう。
■米ドル/円の次のターゲットは105.55円前後か
問題は、次の上値ターゲットをどこに置くかである。もっともポビュラーな計算では、96.93円を起点とした第5波の値幅が第1波(75.56~84.17円、約860pips)と等しいと想定した場合、105.55円前後のターゲットが得られる。これを当面の上値として意識しておきたい。
米ドル/円の高値更新がむしろこれからであれば、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の頭打ちや反落も後ズレになる可能性を否定できない。
前述のように、確かにユーロ/円とポンド/円の週足では、反落の兆しが濃厚になってきたとはいえ、再度高値打診なしといった判断も性急かもしれない。
なにしろ、ドルインデックスの急伸、すなわち米ドルに対する外貨の急落なしなら、クロス円はなおブル基調を保てるからである。
要するに、ユーロ/円、英ポンド/円の当面の上値余地は限定的だが、本格的なトップアウトは、ユーロ/米ドルと英ポンド/米ドルの反落を持たなければならないので、目先一段と慎重に考えたい。
■ドルインデックスは上昇フラッグ形成でブルトレンド加速へ
肝心のドルインデックスは、11月に入って、7月高値から構築された下落ウェッジの上放れを果たしたが、昨日(12月5日)までダラダラと反落し続け、一見弱い値動きに留まっている。
(出所:米国FXCM)
しかし、上のチャートに記しているように、11月8日(金)高値を起点とした反落は、10月安値から始まった「上昇フラッグ」というフォーメーションの「フラッグ」部分に当たるから、そろそろ底打ちを果たし、上放れをもってブルトレンドを加速する公算が大きい。
早ければ、本日(12月5日)の米雇用統計リリース後にでもそういった値動きが観察されるのでは。
ちなみに、本日の米雇用統計、年内QE(量的緩和策)縮小の有無や来年(2014年)の政策に多大な影響を与えるから、指標次第で本日また一反乱も。市況はいかに。
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