■ユーロ/円は10月に予測した上値ターゲットを達成!
円安が一段と進んでいる。英ポンド/円の連日高値更新に続き、ユーロ/円も140円の節目手前に迫り、早くも10月25日(金)にて提示した138.90円という上値ターゲットを達成した。
【参考記事】
●ドル安は陰の極まり。ドル/円は96.56円を下回らない限り、三角保ち合い上放れか(2013年10月25日、陳満咲杜)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 1時間足)
当然のように、米ドル/円の騰勢も続いている。執筆中の現時点では、一時102.60円まで上昇し、円安トレンドを推進する土台となっている。
たびたび強調しているように、米ドル/円は5月高値から5カ月半もかけて保ち合いを形成していた。長く続いた保ち合いがいったん打破されると、強いモメンタムを伴う傾向が強いから、この意味では現在の米ドル/円の上昇スピードに大したサプライズを感じないトレーダーも多いかもしれない。
その上、5月高値の103.73円まであと1円ちょっとの値幅だから、高値更新はもはや時間の問題で、連動する英ポンド/円、ユーロ/円に比べ、米ドル/円の上昇スピードがむしろ鈍いと感じる市場参加者も多いようだ。
米感謝祭(11月28日)で薄商いの中、一段と上昇が加速し、直接5月高値を打診してもおかしくなかろう。
■円売りは、いったん限界に達するか
もっとも、米感謝祭(11月28日)を挟んでいることの影響は大きい。例年この時期は薄商いになりがちだから、相場は一方通行か、乱高下しやすくなる。
今年(2013年)は明らかに前者で、一方通行になっているのだろう。したがって、先週(11月22日)のコラムにて注意を喚起したスピード調整の可能性、実現されてはいないものの、論理的には間違っていないと思う。目先一段と強まる円売りのモメンタムは、いったん限界に達する公算も大きい。
【参考記事】
●「スピード調整に注意すべきだが、円安トレンドはまだ続く。そう考える理由とは?」(2013年11月22日、陳満咲杜)
特に英ポンド/円とユーロ/円は、目先なお上値余地があるものの、すでに行きすぎの状況にあり、これからトップアウトを警戒する時期を迎えよう。
反面、まだ高値更新していない米ドル/円は、これからもブル(上昇)トレンドを維持し、高値更新の公算が大きいから、仮に押しがあれば、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)より米ドル/円を買うほうが確実ではないかとみる。
言い換えれば、英ポンド/円、ユーロ/円がリードする円安局面から、米ドル/円をメインとした円安局面へのシフトがこれから確認されよう。
■CFTCの円売りポジションは過去最高記録を更新!
こういった推測の根拠は、主に以下の2点に集約できる。
まず、円売りポジションの偏りは、先週(11月18日~)よりも、また一段と深刻になってきた。
先週(11月22日)のコラムで指摘したように、円売りポジションが一段と膨らむことは容易に推測できたはず。案の定、11月19日(火)までのCFTC統計では、円売りポジションの総計はなんと11万枚超となり、同統計開始以来の最高記録を更新した。
【参考記事】
●スピード調整に注意すべきだが、円安トレンドはまだ続く。そう考える理由とは?(11月22日、陳満咲杜)

(詳しくはこちら →経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
今週(11月25日~)に入ってから一段と進んでいる円安の状況から考えて、同統計はさらに最高記録を更新していることも容易に推測できるから、少なくとも短期スパンにおける円売りのピークに、そろそろ差し掛かっているのではないかと思う。
■英ポンド/円は168円台前後がメインレジスタンスゾーンか
前述したように、米ドル/円よりも、今までリードしてきた英ポンド/円やユーロ/円の行きすぎが深刻である。英ポンド/円のパフォーマンスが特に目立つから、英ポンド/円を例として見てみよう。
英ポンド/円の週足から考えてみると、目先のレベルは2007年高値を起点とした全下落幅に対する38.2%反騰位置の168.09円に迫っており、目先目標達成感を漂わせる。
(出所:米国FXCM)
次に、2012年高値から引かれたレジスタンスラインが、目先の水準と合致した上、2012年末安値から引かれるサポートラインと共に「上昇ウェッジ」というフォーメーションを形成しており、同フォーメーションが成立すれば、これから反落の機運は高まる。
最後に、現在の水準は2011年安値以来の最高レベルに達しているにもかかわらず、対応するRSIの水準は、2013年4月、5月高値に対応するRSIのレベルより明らかに低く、弱気ダイバージェンスが点灯している。
同サイン、実は2013年4月高値と5月高値の関係でも検証されていたから、RSIが点灯する弱気ダイバージェンスは過去の延長とみなされる。したがって、より信憑性が高いのではないかとみる。
ゆえに、目先やはり高値圏での反落リスクを警戒し、高値追いには慎重なスタンスを取るべきであろう。円安の行きすぎがいずれ修正されるなら、目先の水準で言えば168円台前後はメインレジスタンスゾーンとして意識せざるを得ない。
■英ポンド/米ドルの大幅上昇は当面考えにくい
もっとも、クロス円であるだけに、英ポンド/円の急騰は英ポンド/米ドルと米ドル/円の同時高でないと実現できない。
ゆえに、これから高値を更新していく米ドル/円を有望視するなら、英ポンド/円の上昇一服、至って反落というシナリオは、英ポンド/米ドルの頭打ちや反落の可能性に依存する側面が強い。それでは、英ポンド/米ドルはどうなるのだろうか。
英ポンド/米ドルは2013年初来高値を更新する勢いだ。2009年8月高値から引かれるレジスタンスラインのブレイクも確定し、大幅に上値余地を拓いたように見える。
(出所:米国FXCM)
しかし、1月高値1.6381ドルの突破なしでは一時の打診に留まり、いわゆる「ダマシ」のサインを点灯する可能性がある。
RSIで測る場合、2009年8月から形成された抵抗ゾーンの役割もはっきり示されており、同ライン前後にてRSIが再度頭打ちという可能性を無視できない。
仮にこれから2013年初来高値を更新しても、英ポンド米/ドルの大幅上昇は当面考えにくいので、やはり英ポンドの頭打ちを警戒しておきたい。
■ドル/円はいずれ高値を更新し、105円の大台を射程圏に!
こういったロジックはユーロ/円にも通用する。140円の節目前後はメインレジスタンスゾーンと考えるべきだろう。
事情が異なるのは豪ドルだが、豪州中央銀行の市場介入もウワサされており、当面強気トレンドを望みにくい。ただ、対英ポンド、対ユーロでの大幅な下げに対しては、そろそろ反騰してもおかしくないから、いったん保ち合いを形成してから続落するだろう。
米ドル/円は、クロス円の反落があれば、リンクした形でスピード調整が入る公算が高まる。102円台後半におけるレジスタンスゾーンを突破できなければ、100円台後半までの反落余地もあるのではないか。
ただし、ドルインデックスと同様、米ドル/円の反落があっても修正波と位置づけられるから、押し目があれば、しっかり拾いたい。前述のように、米ドル/円はいずれ高値を更新し、105円の大台を射程圏に収めるだろう。市況はいかに。
(11月29日 PM1:30執筆)
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