■円安トレンドは一段と加速し、米ドル/円は高値更新!
円安トレンドは一段と加速している。執筆中の現時点では、米ドル/円は高値更新を果たし、ユーロ/円は節目の143円、ポンド/円は節目の170円打診に迫っている。

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米ドル/円に関して、前回コラムで指摘したように、高値更新は当然の成り行きで、105円台の上値打診なしではブル(上昇)トレンドの一服はなさそうだ。
【参考記事】
●「5波の失敗」は考えにくい! 米ドル/円はなぜ、5月高値を更新すると考えるのか?(2013年12月6日、陳満咲杜)
一昨日(12月11日)、102円の節目手前までの反落も見られたが、高値更新していないうちは、絶好の押し目買いの機会であったことは明らかだ。
問題はユーロ/円や英ポンド/円だ。両通貨ペアは、一段と上値余地を拡大し、前回指摘していた週足でも、短期スパンでは上昇一服の可能性を感じられずにいる。
米ドル/円が高値更新し、さらに105円の大台打診を確実視している以上、両通貨ペアの上値余地は、ドルストレートの見通しに依存するほかあるまい。要するに、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルの見通しだ。
■米ドル全体の調整はそう長くは続かないとみる
先週末(12月6日)の米雇用統計は想定より良かったものの、ドルインデックスの底打ちにはつながらず、むしろ、リスクオンで一段の下値打診を果たしてきた。
当然のように、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルの上値余地の有無は、結局、ドルインデックスの底打ちの有無で測られる。
結論から申し上げると、ドルインデックスの日足を読む限り、11月高値から始まった反落波は、構造的にはジグザグ変動パターンを示している以上、調整波という位置付けは不変で、目先、下値余地限定の公算はなお大きいとみる。
(出所:米国FXCM)
深押しがあっても、ドルインデックスは79台前半のレベルにてサポートを再確認できる見通しで、安値更新を回避できるだろう。したがって、米ドル全体の調整は、そう長く続かないと思う。
■QE縮小について、市場コンセンサスは一辺倒ではない
もっとも、12月6日(金)の米雇用統計後の市況を見る限り、マーケットは「この程度の強さ」ではFRB(米連邦準備制度理事会)の早期QE(量的緩和策)縮小はない、つまり来週、12月17日(火)~12月18日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で政策変更はない、という見方に傾いている模様。
しかし、多くの専門家は油断できないと警告を鳴らしており、市場コンセンサスは決して一辺倒ではない。
それにしても為替マーケットにおける米ドル売り・円売りのセットは明らかにリスクオン相場そのもので、巻き戻しを警戒しているような気配を感じられない。昨日(12月12日)、ドルインデックスは反騰したものの、なお50日移動平均線以下で推移しており、目先、米ドル売りの優勢を示している。
■現在の相場には一種の「慢心感」さえ漂っている
では、リスクオン相場を支える源泉はどこにあるのか。よくよく考えると、マーケットの強気は本当のところはFRB政策変更の有無ではなく、あっても大した変更ではないといった確信に基づいているのではないかと思う。
FRB幹部は「出口政策が講じられても、漸進的かつ小規模に留まる」と散々言ってきたし、「長期間低金利を維持する」といった約束もしていたから、これがマーケットの安心感につながっているところが大きいだろう。
ゆえに、米ドル売り・円売りのセットは、リスクオン相場の反応として当然だし、また、そこには一種の「慢心感」さえ漂っている。
こういった雰囲気を反映して、一部市場関係者はユーロ/米ドルをはじめ、外貨買い・米ドル売りの上値ターゲットを一段と上方修正している。
ゴールドマンサックスの駐ロンドンチーフアナリスト、トーマス・ストルパー氏の見方は代表的なものであろう。同氏は2014年のユーロ/米ドルのターゲットを1.4ドルへ上方修正したばかりだ。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 月足)
このような見方に基づくとすれば、また当然のように、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)のターゲットも上方修正せざるを得ない。ユーロ/円で言えば、146-147円の上値余地を覚悟すべきところだろうが、果たしてそうなるだろうか。
答えは来週、12月17日(火)~12月18日(水)のFOMC後に明らかになるだろう。前述のように、目先のマーケットの安心感は、一種の慢心と読み取れる。そして、過去の経験から、こういう時期こそリスクが大きい。
■米ドル/円はいずれ5~6円以上の調整がある可能性も
特に、米ドル売りと並行して深まっている円売りは、ここから一段と拡大していく可能性がないこともないものの、やはり逆転のリスクを警戒せざるを得ない状況にある。
12月3日(火)までのCFTC(米商品先物取引委員会)の統計では、通貨先物市場における円売りネットポジションは13万3000枚超となり、2007年7月以来の大きな規模に膨らんでいる。2007年7月と言えば、あのリーマンショックの前夜だ。その後の米ドル/円の長期ベア(下落)トレンドへの突入は記憶に新しい。
(※11月29日のコラムに「円売りポジションの総計はなんと11万枚超となり、同統計開始以来の最高記録を更新した」と書きましたが、今回のコラムに記したとおり、史上最高記録は2007年7月の15万枚超であり、誤りでありましたこと、お詫び申し上げます)
(出所:米国FXCM)
当然のように、2007年後半から始まったベアトレンドは、サイクルの後半、つまり下げ局面に沿った値動きで、現在位置するサイクル上の位置と大きく異なるから、円売りポジションの過大な積み上げが仮に崩れたとしても、また円高全盛時代に逆戻りするとは考えられない。
それにしても、やはり「史上2番目」の高い水準まで円売りポジションが膨らんでいるから、いったん調整があれば、5~6円程度ではすまないだろう。
この意味では、すでに高値更新を果たした米ドル/円は、いつ頭打ちしてもおかしくないし、目先の上値余地はやはり105円台半ばが限度ではないかとみる。
■米ドル/円はそろそろ利確準備を。クロス円は高値追い禁物
米ドル売りポジションは円売りほど傾いていないものの、マーケットの心理面では同じ位置づけではないかとみる。
要するに、円と米ドルを売りさえすれば儲かるといった発想やパターンに慣れてきたから、安心感が「慢心感」に変わりつつある。年末相場に入り、こういった「慢心感」が一段と広がっているならば、いっそう警戒しておきたい。
ゆえに、米ドル/円に関しては、上値余地はあるものの、欲張らず利益を確定する作業をそろそろ取り込んだほうが良さそうだ。
ユーロ/円と英ポンド/円は引き続き高値追いを避け、近々トップアウトの可能性を警戒しておきたい。市況はいかに。
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