■既定路線を踏襲した米FOMC
3月18日(火)~19日(水)、米国ではFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、その結果が日本時間で20日(木)未明に発表されました。
FRB(米連邦準備制度理事会)は、すでに2013年12月から毎月100億ドルずつ量的緩和を縮小してきていますが、今回のFOMCではこれを踏襲。4月から、さらに100億ドルの資産購入額を減額し、月額650億ドルから550億ドルへと量的緩和を縮小することを決定しました。
この決定は既定路線であり、特段の驚きはありませんでした。
また、量的緩和をすべて終了した後も、相当の期間は政策金利の実質ゼロ金利(FF金利を0.0%から0.25%を目標に誘導)を続けるとしていますが、これも従来と同じです。
■失業率の数値目標を削減したが…
1つの変更点は、失業率がフォワードガイダンスとしてメドとなっていた6.5%近くにまで低下したために、この数値目標を削除。将来の政策金利の方向性を示す時間軸を変更したことです。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)
ただ、これもすでに失業率が6.5%近くまで低下していることは既知の事実であったため、こうした変更も十分に予想されていたことでありました。
■イエレンFRB議長が示した「相当の期間」とは?
むしろ、市場関係者はFOMC後に行われたイエレンFRB議長の定例記者会見での発言に反応しました。
彼女は会見の中で、量的緩和を終了した後にゼロ金利政策を続ける「相当の期間」とはどれぐらいであるかという問いに対して、予想するのは難しいとしながらも、半年程度と期間の目安を示しました。
こうした期間について具体的に言及するとは考えられていなかったため、市場関係者は驚いたわけです。
会見ではまた「今秋にも量的緩和を終了する」見通しを述べていますが、そうなれば、利上げの時期は2015年の春から夏にかけてということになります。
会見での発言を受けて、NYダウが下落し、米ドルが上昇したのはそのためです。

(出所:米国FXCM)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 1時間足)
■米ドル/円は100円台から101円台は押し目買いも良い
こうした状況がしばらく続くと考えると、米国の長期金利はある程度堅調に推移するでしょう。米10年債利回り(米国長期金利)は3月19日(水)に、10ベーシスポイント(0.1%)を超える急上昇となりました。

(出所:CQG)
となると、為替市場でも米ドルは底堅いということになってきます。
米ドル/円はもみ合い相場の中に入っていますが、少なくとも下値はしっかりしてくると予想できるため、100円台から101円台は押し目買いをしてみるのも良いのではないでしょうか。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
3月14日(金)の安値101.205円や3月3日(月)の安値101.20円が、目先のサポートレベルとして意識されることになるでしょう。
■米国のリーダシップ欠如が浮き彫りに
また、ウクライナを巡る状況は報道のとおりであり、ここでは解説しませんが、米国のリーダーシップの欠如が浮き彫りになってきていることは明らかです。
EU(欧州連合)諸国もそれぞれの思惑に温度差があり、制裁と言ってもかなり曖昧なものとなってしまう可能性が出てきています。現状ではロシアやクリミア自治共和国の幹部に対する渡航禁止や個人資産の凍結にとどまっていますが、実質的な影響はまったくないと言っても過言ではありません。
そうなると、ややなし崩し的に現在の状況が続き、曖昧な制裁が今後も続けられる状況が長期化するのではないでしょうか。市場への影響度は、次第に小さくなっていますが、マイナスであることだけは間違いないでしょう。
■中国でマネーバブルの逆回転が起きる懸念も
最後に、何かと最近話題の中国です。
先日、中国の中堅不動産会社が経営破たん状況にあることが報道されました。不動産価格は、ここのところ中国全土で伸び率が鈍化し、今までのビジネスモデルが通用しなくなっています。
不動産バブル崩壊→不良債権の増加→破綻の連鎖という、お決まりのパターンが中国でも起きそうな状況にあるかもしれないということは意識しておくべきでしょう。
先日は、再生エネルギー関連への投資商品にデフォルトが発生しましたが、マネーバブルの逆回転が中国全体で起きてくるかもしれないと、少し警戒しておいた方が良いでしょう。
こうした懸念をすでに金融市場は敏感に織り込んできています。中国人民元は予定どおり1日の変動幅を2%までに拡大しましたが、それに対する反応は、やはり中国人民元売りでした。

(出所:CQG)
これは、中国に対する期待感からの中国元買いの解消であることは間違いありません。
全体的には依然として株式市場、為替市場とも混沌とした状況が続くという見方を踏襲しておきたいです。取引をする際には、レンジ相場を意識して細かいトレードを心がけることが得策でしょう。
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