■リスクオンの限界でも米ドル/円が102円以下ということは…
続いてリスクオンの環境についてだが、VIX指数で見る限り、すでに11.57という極端な数値(過去最低に近い水準)を示し、もう限界一杯に来ていることは間違いない。
(出所:CQG)
こういったリスクオンの限界に来ても米ドル/円は102円以下に留まっているわけで、それをもって底打ちしたという感触を得るのはかなり甘いのではないかと思う。
目下の状況では、むしろ逆のロジックで考えたほうが良さそうだ。
つまり、こんなにリスクオンの環境でも米ドル/円が102円以下なら、いったんリスクオフになれば米ドル/円はどこまで下げるのかと。こちらのほうが健全な考え方であろう。
なぜなら、相場には永遠に続くトレンドがない。VIX指数は相場のトレンドと直接リンクしているだけに、同指数の安値更新自体、トレンド反転の「臨界点」に近づいているとみるべきだ。
リスクオンの環境がこれからも続くという考え方は、甘すぎるというか、歴史音痴の発想だ。
■夏場が近づくにつれ、マーケットの反乱を警戒しておきたい
ただし、歴史は繰り返されるとはいえ、毎回相場は少しずつ違った側面を見せるため、なかなかその途中や転換点ではいわゆる「歴史の教訓」を活かせないものだ。
小幅とはいえ、たびたび高値を更新しているNYダウやS&P500指数の値動きに心を奪われずにいることは難しい。こういう時、「リスクオンはもうじき終わりだよ」と言ってもあまり信用されないどころか、バカにされるハメになる。
しかし、歴史の教訓を活かせば、こういう時こそ大きな転換が生じやすいのだ。ゆえに、夏場が近づくにつれ、マーケットの反乱を警戒しておきたい。
日本のマーケットに関しては、前述のように、リスクオンの限界においても米国に追随できずにいるから、株安・円高のセットが一段と進むといった従来の予想は不変だ。
【参考記事】
●全面円高でドル/円はあっさり100円割れ?ロイター記事にあった恐ろしい内容とは?(2014年5月16日、陳満咲杜)
●麻薬中毒のごとき市場に興奮剤が出たが効果は一時的? ドル/円は年内一杯下落も(2014年5月23日、陳満咲杜)
■日経平均は再度1万4000円を割り込むだろう
日経平均に関しては、5連陽とか6連陽を喜んでいる場合ではないだろう。なぜなら、これでも200日線を超えずにいるから、一見強かった値動きでもよりマクロ的な視点をもって検証すれば、実に弱い証拠でもあり得る。日経平均は、再度1万4000円の大台を割り込むだろう。
(出所:米国FXCM)
円高のターゲットに関して、米ドル/円の100円節目割れの予想はそのまま維持し、場合によっては98円や96円台へ下方修正の必要が出てくるかもしれない。
そしてユーロ/円に関しては、以前提示していた136円という下値ターゲットの打診は必至と思われ、132~133円台への下方修正も現実味を増しているだろう。前述のように、すでにユーロ/円主導の円高局面に来ているから、ユーロ/円の下落モメンタムは、より激しいとみる。
【参考記事】
●麻薬中毒のごとき市場に興奮剤が出たが効果は一時的? ドル/円は年内一杯下落も(2014年5月23日、陳満咲杜)
この見方を証左するために、米ドル/円とユーロ/円の週足を見比べることをお勧めする。賢い読者なら、本コラムが前に書いたテクニカルの視点をもって検証でき、納得してくれるだろう。市況は如何に。
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