■ユーロ/円は138円台へ下落、136円ターゲットから修正も?
前回コラムで指摘したとおり、全面円高の兆しが見えてきた。その証拠は何と言ってもユーロ/円の動きであろう。200日移動平均線の打診を試みるユーロ/円は、一時138.14円まで下落。前回コラムで提示した136円のターゲットと2円程度の差しかなく、近々ターゲットの下方修正をすることも必至ではないかとみる。
【参考記事】
●全面円高でドル/円はあっさり100円割れ? ロイター記事にあった恐ろしい内容とは?(2014年5月16日、陳満咲杜)
(出所:米国FXCM)
筆者がたびたび言ってきたように、ユーロ/円の下落をもって円高の第2段階、つまりクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)主導の円高が始まった気配を見せている。
【参考記事】
●ユーロのトップアウトがもたらす全面円高。杞憂ではなく相場の「天」は時に落ちる!(2014年5月9日、陳満咲杜)
言うまでもないが、ユーロ/円の下落は米ドル/円とユーロ/米ドル両方の下落を意味するもので、両通貨ペアがともに重要な分岐点に立たされていることがわかる。
それはすなわち、米ドル/円もユーロ/円と同様に200日移動平均線を試しているということに他ならない。
(出所:米国FXCM)
ただし、同じ200日移動平均線を巡る攻防でも、それぞれの事情は違ってくる。
200日移動平均線の重要度としては、ユーロ/米ドルは米ドル/円ほどでないことは一目瞭然であろう。なぜなら、2013年10月、そして同11月、米ドル/円は明らかに200日移動平均線のサポートを受けて反発し、2014年年初の高値につながったが、ユーロ/米ドルにおける200日移動平均線の効果は米ドル/円ほどではなかったからだ。
(出所:米国FXCM)
そして、ユーロ/円に至っては、2012年11月以来、1回も200日移動平均線への打診がなかったのであり、今回は同線への打診をもって基調変化の兆しを見せたわけだ。これからの相場では、米ドル/円とユーロ/円の200日移動平均線割れの有無がもっとも注目されるポイントになるであろう。
(出所:米国FXCM)
■ 米ドル/円、ユーロ円の目先の高値維持は短命!?
結論から申し上げると、これから米ドル/円とユーロ/円の両通貨ペアは、ともに200日移動平均線を割り込み、円高基調を一段と強めていく公算が高いとみている。なぜなら、ある出来事なしでは、米ドル/円とユーロ/円の両通貨ペアはすでに揃って同線を割り込んでいたと考えられるからだ。したがって、目先の高値維持は、長く続かないだろう。
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
その出来事とは、5月21日(水)、日銀総裁・黒田さんの記者会見後に発生した。タイミングとしては絶妙すぎたので、政府主導の「市場介入」に近いと思わせるほどのインパクトがあった。ゆえに、米ドル/円は再度102円の節目に接近し、日経平均も再び1万4500円の大台手前まで回復した。
実際、5月21日(水)においては、日経平均は再度1万4000円の節目を一時割り込み、米ドル/円に至っては、黒田さんの記者会見中に101円の節目割れを果たした。
黒田さんの記者会見は、従来どおり景気回復やインフレターゲットの達成に強気の見方を示すと事前に予想されており、実際もそのとおりであった。
(出所:株マップ.com)
では、なぜ黒田さんが強気だったにも関わらず、マーケットは弱気となったのだろうか。
当コラムで指摘してきたように、マーケットとしては、建前ではアベノミクスの成功や成長を期待するとは言っていたものの、本音は日銀の緩和頼りの一心。したがって、黒田総裁が強気になればなるほど緩和観測の剥落が加速し、株安・円高のセットにつながったわけだ。
【参考記事】
●市場に残る緩和期待と「アベノミクス成功」とに生じる矛盾が相場に波乱をもたらす?(2014年5月2日、陳満咲杜)
●米国株バブル崩壊のシグナル点灯! 日本株は暴落か。ドル/円は100円割れへ(2014年4月11日、陳満咲杜)
マーケットは昨年、2013年の「異次元緩和」を…
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