■ドルインデックスは昨年9月以来の200日線超え
為替マーケットでは、米ドル高・円高のセットが進行している。米ドル高といえば、もちろんドルインデックスの話となるが、同指数は2013年9月以来初めて、200日移動平均線(200日線)超えを果たしている。
(出所:米国FXCM)
言うまでもないが、米ドル全体の上昇は、対極通貨とされるユーロの下落を意味するから、ユーロ/米ドルが一時1.3600ドルの節目を割れたことも自然の成り行きとみる。
ちなみに、ユーロ/米ドルの200日線以下の大引け(終値)は2013年9月以来、2日連続同線以下の大引けは2013年7月以来の出来事だ。
■ユーロ/米ドルの下落は、米ドル全体が強いことも理由に
ユーロ下落の背景にあるのは、ECB(欧州中央銀行)によるユーロ高阻止の意図であり、そして、そのために次回(6月5日)の会合でQE(量的緩和)に踏み込むのでは、といった思惑があることが大きいだろう。
しかし、ユーロ/米ドルの下落は、ユーロ安のみで説明しきれないところがある。換言すれば、米ドル全体が強いということを見逃せない。
もっとも、米国株高が進む一方、米長期金利(10年米国債利回り)が2.47%まで下がり、2013年7月以来の安値を記録している。
(出所:CQG)
こういった現象については、市場関係者たちが「謎」と言って、それぞれ説を披露しているので、ここでは深追いしないが、注目していただきたいのは、金利低下の米ドルは対ユーロのみならず、対英ポンド、対豪ドル、対NZドルなどでも強含みしていることだ。
特に対NZドルに関しては、前回のコラムで指摘したように、利上げ観測が一番強いNZドルでも0.8800ドルの節目を超えずにいたから、米ドルに対する反落につながったわけだが、反落自体が米ドルの強さをうかがわせる値動きと言える。
【参考記事】
●麻薬中毒のごとき市場に興奮剤が出たが効果は一時的?ドル/円は年内一杯下落も(2014年5月23日、陳満咲杜)
(出所:米国FXCM)
同じように、英ポンド/米ドルの大台乗せ(1.7の節目)の失敗も重要なシグナルを点灯、2013年7月安値を起点とした上昇波の終焉、至って反落波の展開を示唆するものとみる。
(出所:米国FXCM)
■米ドル/円底打ちという解釈には致命的な落とし穴が!
米ドルは全体的に強いものの、円に対してのみ弱い。これが円高の可能性を一層証左している。
巷では、米ドル/円はすでに底打ちしたのではないかといった観測も根強いが、米ドル全体の上昇に米ドル/円がついていくとか、リスクオンの環境で円高の余地が限定的とといった解釈には、致命的な落とし穴がある。
その落とし穴がどこにあるかというと、究極的にはクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)、特にユーロ/円の値動きを見ればわかると言えよう。ユーロ/円が200日線を割り込むという、2012年11月以来の出来事が起きているのだ。
(出所:米国FXCM)
ユーロ/円の値動きから考えると、円高トレンドは第2段階、すなわちクロス円主導の段階に入っている印象が強い。
米ドル全体の上昇がユーロなど外貨の下げを意味するなら、ユーロ安・円高の圧力と化し、米ドル/円の頭を押さえ込み、至って円高モメンタムの加速をもって米ドル/円を押し下げることも十分想定できる。
実際、足元米ドル/円が辛うじて200日線を維持しているが、ユーロ/円の一段下げがあれば、早晩割り込むと見なされる。
続いてリスクオンの環境についてだが、VIX指数で見る限り…
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