■米ドル/円は120円台、目先の目標達成感も
米ドル/円は、120円の節目を打診した。たびたび指摘してきたように、2011年安値(戦後最安値)を起点とした米ドル/円の上昇は、ほぼ一本調子に進んできたので、この心理的大台の達成をもって、「目先一服しやすいかと思う。
実際、1998年高値147.63円を起点とした全下落幅に対する61.8%フィボナッチリトレースメントは120.18円前後を示し、昨日(12月4日)の高値による同レベルの打診をもって、目先の目標達成感を漂わせているところも大きい。
(出所:米国FXCM)
もっとも、5年移動平均線との最大乖離で計算した場合、本コラムで指摘したように、約119.40円前後のターゲットを算出したが、1円程度の上乗せが許容範囲だとしても、スピード調整なしで、このまま上値余地を拡大し続けていくのは容易ではなかろう。
【参考記事】
●ドル/円の上値メドは119.4円だが、円安が「解散クライマックス」となる可能性も…(2014年11月14日、陳満咲杜)
■米雇用統計で米ドル/円は利益確定されるのではないか
今晩(12月5日)の米雇用統計次第で、さらなる上値を追うのでは…といった見方も多いが、筆者は現在のレートがすでに同材料をだいぶ織り込み済で、仮に米雇用統計が良い数字であっても、ロング筋は上値追いよりも利益確定に動くのではないかと思う。
なにしろ、今回10月末のサプライズ量的緩和後の値幅は、昨日(12月4日)高値までで11円超を達成している。途中のスピード調整も、最大でも1.7円の値幅を超えなかったので、事実上、一本調子の上昇と言えよう。こうなると、警戒せざるを得ない。
1カ月ちょっとで11円超の円安は、いくらなんでも行きすぎだったが、以下の2つの材料なしではここまでのスピード感はなかっただろう。すなわち、日本コアCPIの1%割れと、米雇用環境の一段の改善だ。
前者は日銀のさらなる緩和(3回目の緩和)、後者は米早期利上げといった思惑を高め、米ドル/円の上昇を推し進めてきた。ゆえに、その分、期待値の織り込み済みも覚悟しておきたい。
したがって、今晩(12月5日)の米雇用統計が良いにもかかわらず「ウワサの買い、事実の売り」といった反応パターンがあったとしても、サプライズではないだろう。
2014年年初来、米ドル/円とドルインデックスの連動性が強まっており、米ドル/円の上昇一服があれば、米ドル全体の一服と相俟って、売りシグナルが点灯するはずだ。昨日(12月4日)の値動きから考えて、この可能性が高まっているとみる。
(出所:米国FXCM)
■ドラギECB総裁の発言でユーロ/米ドルはいったん底打ち
ドルインデックスの対極として、ユーロ/米ドルのチャートを見れば、わかりやすい。昨日(12月4日)はドラギECB(欧州中央銀行)総裁の発言が市場関係者をがっかりさせたため、ユーロ/米ドルの買い戻しが見られた。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足)
市場関係者はECBによるQE(量的緩和)政策に期待し、具体的な手段(国債購入など)を聞きたがったが、ドラギ総裁はそれを示唆せず、むしろQE策後ズレの可能性を暗示していた。
ユーロショートポジションが過大に積み上げられている以上、ショートカバーの動きも当然な成り行きで、ユーロのいったんの底打ちにつながっている。
5月高値1.3994ドルから、ユーロはほぼ一本調子に下げてきた。ユーロ安を押し進めた原動力は、何と言ってもECBのQE策にからむ思惑であったが、QE策の早期実施がなければ、思惑の後退で利益確定の動き、つまり、ユーロの買戻しにつながるのも自然な動きだ。
「ネコも杓子も」ユーロ売り、誰でもユーロのショートポジションに片寄っている目下の状況では、買い戻しがいったん始まれば、その効果も軽視できないだろう。
■ユーロ/米ドルはテクニカル的にもリバウンドの可能性
テクニカルの視点では、2014年5月高値からの下落波を5波構造と数える場合、10月高値1.2887ドルから最終子波の進行がカウントできる。
この最終子波自体の5波構造の完成も、昨日(12月4日)の安値をもって鮮明になりつつある。
また、9月からRSIが構築されてきた「強気ダイバージェンス」の継続や10月からの値動きが示すダイアゴナル・トライアングルといったフォーメーションの形成から考えて、いったん底打ち、至ってリバウンドを展開する可能性が増しているとみる。
【ダイアゴナル・トライアングルの参考記事】
●宮田直彦氏に聞く(3) 米ドル/円相場は「最終局面の最終局面の最終局面」にある
(出所:米国FXCM)
そうなれば、前述のように、今晩(12月5日)の米雇用統計で良い数字が出ても、ユーロ/米ドルの下落余地は1.22ドル台までに限定されるのではないだろうか。
また、良い数字が出てもユーロ売りが進まず、逆にユーロの買戻しが見られた場合、米ドル/円と反対に「ウワサの売り、事実の買い戻し」が確認され、マーケット全体がしばらくスピード調整の段階に入るだろう。
もちろん、スピード調整があっても、メイントレンドは修正できず、いずれ米ドル高のトレンドへ復帰するだろう。
ただし、スピード修正は通貨ペアごとにその程度も違ってくるから、想定できる範囲では、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の上値余地を再考する必要も出てきたが、やはり、クロス円の中でも通貨ペアによって、それが違ってくる可能性が大きい。
クロス円代表格のユーロ/円は、最大152~153円台へ上昇余地を修正しておく必要も出てくるが、それには前提条件もいくつかある。詳説はまた次回。
(14:30執筆)
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