■米ドル/円と日経平均の連動性が薄れてきた理由とは?
日経平均が連日高値更新を果たしている間、1つの「異変」が浮き彫りになっている。すなわち、米ドル/円と日経平均の連動性が薄れてきた、という現象が起こっている。
(出所:米国FXCM)
15年ぶりの高値更新となった日経平均に対し、120円の大台を回復しきれずにいる米ドル/円は、明らかに「出遅れ」の状況だ。両者の連動性が回復してくれば、米ドル/円も2014年高値を超え、新高値を記録していくはずだろう、という見方が多いと思うが、はたしてそう簡単にいくかどうか。
まず、両者の連動性が従来のように高まっていく場合、米ドル/円が日経平均に追随し、高値更新していくのみではなく、日経平均が反落し、米ドル/円の値動きに「回帰」する可能性も排除できない。
次に、両者の連動性がこれから高まらないまま、一定期間に渡って維持される可能性も大きい。
株サイドでは、円安に頼らない株高だからこそホンモノであり、脱金融相場の象徴だという論調もあるが、日銀が直接ETFを買い入れ、相場を支えている足元で、脱金融相場云々は早計かつ滑稽であろう。言ってみれば、株式市場こそ日銀金融政策の最大の受益者であり、また、現在進行形でその恩恵をこうむっている。
対照的に、為替市場には日銀による直接な買い入れ(米ドル買い・円売りのオペ)がないから、2014年10月末の追加緩和効果も薄れてきた。その上、追加緩和を受けて米ドル/円は約2カ月間で12円もの上昇幅を達成したから、この材料に対して、食傷気味となっている感もある。
したがって、量的緩和政策が続くなか、株式市場はその直接的なメリットをより享受できる側面が大きいことが、日経平均が米ドル/円のパフォーマンスを超えている大きな要因であろう。
■米ドル/円を含めた市場の動向はユーロが決めている状況
次に、為替市場には直接な介入がない以上、現在ではなく、将来の要素がより重く受け止められるはずだ。先週(2月13日)のコラムで指摘したように、日銀内部の反対意見が表に出ており、少なくとも3回目の金融緩和の早期観測が後退していることは確かだ。
【参考記事】
●追加緩和は逆効果?日銀騒動でドル/円急落! 日銀関係者の「単独犯」ではない可能性も(2015年2月13日、陳満咲杜)
実際、今回(2月18日)の日銀政策会合後の会見では、黒田日銀総裁が従来のスタンスを繰り返したものの、早期追加緩和の必要性も否定しており、積極的な円売りの地合ではないことも明白である。
そして、何よりもECB(欧州中央銀行)の量的緩和以降、「緩和戦争」の主役が円からユーロにシフトされた影響が大きい。ユーロの動向がマーケットを決め、ユーロ/円が米ドル/円に大きな影響を及ばす側面があるから、ユーロの下げ止まりなしでは、米ドル/円の上放れが難しくなっていると言える。
■売られすぎでもリバウンドしないユーロは一段安を警戒
肝心のユーロは、ギリシャ問題がもめるなか、安値圏での推移に留まり、1月安値は更新していないものの、リバウンドも限定的で、ブレイク待ちの状況を示す。
もっとも、ユーロ/米ドルは2014年5月高値からほぼ一本調子に急落し、1月だけでも1000pipsに近い下げ幅を記録していたから、ユーロはかなりのオーバーショート(売られすぎ)の状況にある。
(出所:米国FXCM)
それでもなかなか修正されずにいるから、ベア(下落)志向の強さがうかがえる。本格的なリバウンドが展開される前に、ユーロの一段安を警戒しておきたい。
検証材料として、ギリシャに関する…
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