■目先の問題は米ドル全体の調整が終わったかどうか
ところで、目先の問題はというと、米ドル全体の調整が終わったかどうかである。
(出所:米国FXCM)
トレンドが続くなら、遅れてきたロング筋に参戦のチャンスを与えることになるから、市場関係者は虎視眈々と調整の完了時を狙っているはずだ。
しかし、調整がいつ終わるかを決定するのは、新規参入を狙うロング筋ではなく、すでに米ドルのロングポジションを保有する者だ。なぜなら、長くかつ一本調子に進んできた米ドル高トレンド自体、押し目を狙ってこれから参入する者よりも、ロングポジションを保持している者のほうが圧倒的に多いことを示唆しているからだ。
したがって、問題の核心は「一昨日(3月18日)の変動だけでロング筋がすべて逃げ切ったかどうか」にある、と言っても過言ではなかろう。
この問題に回答するには、近々の値動きがポイントとなってこよう。なぜなら、昨日(3月19日)はドルインデックスが切り返し、ユーロを始めとするメイン外貨が、米ドルに対して軒並みまた反落しており、米ドルはまた高値更新してもおかしくない状況だからだ。
(出所:米国FXCM)
決済したい米ドルのロング筋がすでにあらかたポジションを手仕舞っていたとすれば、再び高値を更新しそうになるまで米ドルを押し上げているのは新規の買いということになる。この場合、早く逃げきれなかったロング筋がいれば、むしろ幸運である。
■本日ドルインデックスが再反落してくれば、調整はまだ続く
しかし、そうでない場合、昨日(3月19日)の米ドルの反騰や目下の高値圏での保ち合いは、一昨日(3月18日)逃げ切れず、でもどこかで手仕舞いしたいロング筋にとって絶好のチャンスと映る。
したがって、近々というか、実際は本日(3月20日)の値動きをもって早くも検証できるのではと思う。本日(3月20日)、ドルインデックスが再反落してくれば、高い確率で米ドル全体の調整がまだ続く、ということになろう。
昨日(3月19日)の米ドル全体の切り返しは、以下の側面もあったのではないかとみる。
1つは外貨サイドにおける個々の材料(ユーロの場合はギリシャの迷走、英ポンドの場合は利下げ議論など)、もう1つはトレンドが長く続いているがゆえの慣性が挙げられる。
ユーロ売りは「鉄板」トレードと見なされるだけに、一昨日(3月18日)の反騰は売り好機と見なす向きが多く、実際、昨日(3月19日)はそれが成功したから、本日(3月20日)もまた多くの新規売りを誘い込むことも推測される。
よって、本日(3月20日)、ユーロが続落ではなく反騰してくれば、これこそユーロショートポジションの手仕舞いニーズが強いことを暗示する値動きになるから、要注意だ。
(出所:米国FXCM)
筆者は、このままドルインデックスが高値を再更新していくといったシナリオに懐疑的だ。ユーロも、英ポンドもかなりオーバーシュートであったから、ベア(下落)トレンドの基調自体は変わらないものの、たちまちスピード調整が終焉するとは思わない。少なくとも目先は、米ドルの高値追いには慎重なスタンスを取ったほうが無難だ。
■米ドル/円に限っては、調整は限定的で近々終わるとみる
ところで、米ドル/円の話になると、見方がやや違ってくる。肝心なことはやはり、ユーロ/円のリバウンドが、米ドル/円の値動きに大きな影響を及ぼすということだ。
2015年年初来、ドルインデックスの大幅上昇になかなかついていかなかった米ドル/円の頭を押さえ込んでいたのは、ユーロ/円の急落がもたらした円高圧力が大きな要因であった。したがって、ユーロ/米ドルの下げ一服がユーロ/円のリバウンドをもたらせば、米ドル/円の堅調につながるだろう。
つまるところ、ドルインデックスがブル(上昇)トレンドを維持しながら、スピード調整している間は、直接的には円買い圧力がかかるものの、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)経由での円売り圧力が高まりやすいので、米ドル/円の調整は限定的で、近々終わるとみる。
(出所:米国FXCM)
この意味では、リスクオフの動きが強まらない限り、クロス円の多くはいったんリバウンドしやすい構造にある。市況はいかに。
(PM2:00執筆)
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