■足元のドルインデックスは再度反落
マーケットは横ばい状態を継続している。ドルインデックスは、先週後半(3月26日)の「反転サイン」に支えられた形で、今週火曜日(3月31日)まで切り返しを継続したものの、足元は再度反落し、週初来の上昇分をほぼ帳消しにする勢いだ。

(出所:米国FXCM)
一方、米ドル/円はいったん120円台前半へトライしてから反落しているものの、119円台前半のサポートを維持し、前回のコラムで指摘したように、3月26日(木)の安値打診をもって、3月高値を起点とした調整を完了させた公算が強まりつつある。
【参考記事】
●米ドル全体の調整はもう終わったのか?イエメン空爆後の今が相場の正念場!(2015年3月27日、陳満咲杜)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
総合的に見ると、足元ではおおむね前回の見方を継承する。すなわち
「米ドル全体はなお調整の余地あり、と同時に米ドル/円は底堅さを発揮し、ユーロ/円を中心とするクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)のベア(下落)トレンドは変わらないものの、スピード調整を先行させる可能性がある」
といったシナリオだ。
【参考記事】
●米ドル全体の調整はもう終わったのか?イエメン空爆後の今が相場の正念場!(2015年3月27日、陳満咲杜)
■本日の雇用統計の市場への影響は来週以降に出るか
本日(4月3日)は米雇用統計のリリースがあり、マーケットの一波乱も想定されるが、イースター休暇のため、薄商いとも見られ、よほどのサプライズがない限り、マーケットへの影響は来週(4月6日~)以降に反映されるのではないかと思う。
薄商いで大波乱といったシナリオも念頭におきたいが、株式、債券市場ともにお休みの中、為替市場のみ変動率を高めていくのもやや難しい話だと思う。
【参考記事】
●主要市場休場の中で発表される雇用統計。過去3回の同一ケースで為替はどう動いた?
もっとも、4月1日(水)夜に発表された米3月ADP雇用統計とISM製造業景況指数は芳しくなかった。前者は今晩(4月3日)の米雇用統計が市場の想定を下回る可能性を示し、後者は米ドル高が米企業収益を圧迫していることを示唆。
イエレンFRB議長が米ドル高を懸念材料として挙げていただけに、あとを追う形でそれが証左されたわけで、当面、米ドル高のスピード調整が継続しやすいと思われる。今晩(4月3日)はよほど良い数字にならない限り、たちまち米ドル全面高につながる、ということはないとみる。
■日本のファンダメンタルズの悪化はどう影響する?
ところで、利上げ前夜の米サイドと違って、量的緩和途中の日本サイドでは、ファンダメンタルズの悪化はむしろ追加量的緩和観測につながるから、市場関係者にとって必ずしもマイナスの材料とは限らない。
4月1日(水)に発表された3月日銀短観は、その典型であろう。
市場センチメントに比べ、明らかに横ばい状況に留まった今回の日銀短観は、景気の先行きに対する企業の慎重姿勢をうかがわせるもので、3月CPI(消費者物価指数)の実質ゼロ成長と相俟って、デフレに逆戻りするリスクを示唆している。
自民党の山本幸三議員が「4月にも追加緩和が必要」と主張したのも、こういった危機感の表れだと思う。
【参考記事】
●山本幸三議員発言があっても4月緩和の可能性は低い。ドル/円の調整に要注意!(4月2日、西原宏一)
原油安は想定外というのを理由に、日銀総裁の黒田さんはある程度の進捗の遅れを認めているものの、なお2%のインフレターゲットを堅持し、それが達成可能だと主張している。
■3度目の量的緩和の効果は限られる
しかし、異次元緩和に続き、2014年10月末にサプライズ追加緩和が実施されても、足元でゼロインフレとなっている状況から考えて、日銀内部でも疑問の声が上がっているのも当然である。
量的緩和の結果、株高・円安といった「副作用」はもたらしているが、本来の目標をまったく達成していないなら、金融政策自体が疑われても仕方がない。黒田さんの苦悩はまさにここにあり、これからも続くだろう。
つまるところ、日銀の「2年で2%」の目標がほぼ達成不可能なので、2年の期限をどれぐらい延長したら達成できるかが、新たな焦点となりつつある。
その上、さらなる追加緩和が必要かどうかが論議の中心となり、また、必要なら、いつ実施するかも問題だ。過度な円安や国債マーケットの硬直化を招く量的緩和策のマイナス面が懸念される以上、日銀の決定はたやすいものではなかろう。
何しろ、戦力の逐次投入はしないと宣言してきた黒田さんにとって、「三度目の正直」があっても、その効果が逓減されていくことは明白である。
ましてや、山本議員に言われるがままに4月緩和があったとしても、マーケットに対するインパクトはだいぶ減じられるだろう。
その上、3回目の追加緩和は、あったとしても、量的な意味合いにおいて、前2回を超えるはずもないから、発動された突端、政策余地の一段の縮小が露呈され、いつもどおりの効果を期待できないばかりか、逆効果になるリスクも無視できないから、まさに進退これ、きわまる。
■追加緩和への期待がある限り、米ドル/円は深押ししない
実際、こういった「空気」をマーケットがうまく読み取り、4月1日(水)の山本議員の発言があっても、追加緩和の思惑は想定より膨らまなかったと思う。何しろ、米ドル/円は3月31日(火)の高値を更新できず、当日夜の米経済指標悪化を受け、上昇波をほぼ帳消しにした。
(出所:米国FXCM)
上のチャートは米ドル/円1時間足だが、「1」は日銀短観を受けた下落で、「2」は山本議員の発言による追加緩和思惑がもたらした動きで、「3」は米経済指標の悪化による反落を指している。
実際、日銀短観を受けて追加緩和の思惑を高めたわけで、「1」と「2」はワンセットと見なした方が妥当だから、マーケットは追加量的緩和を必ずしも確実視していないのではないかと思う。
もう1つの見方をすると、目先、米利上げ時期ばかりに市場の関心が奪われ、相対的に日銀政策に対する注目度が下がっている可能性もある。
いずれにせよ、日銀による2回の量的緩和を経て、マーケット自体の期待効果も逓減しているのは間違いない事実で、日銀の政策運営の難しさが浮き彫りになっている市況だと受け止める。
とはいえ、少なくとも今月(4月)の日銀会合まで、3度目の追加緩和に対する警戒感や期待感も簡単には消えないだろう。
こういったセンチメントが存在する限り、米ドル/円は深い押しを回避でき、また高値をトライしていく公算が高いとみる。ただし、追加緩和なしという前提では、従来の上値ターゲット(124~125円)より、若干下方修正する必要も浮上してくるので、今月(4月)の日銀会合の結果をみて、再度判断したい。
■ユーロはショート筋のポジション削減の程度がポイント
最後に、ユーロサイドでは、ギリシャ危機再燃の雰囲気が強まるなか、ユーロ/米ドルがなかなか1.07ドルの節目を割り込めずにいるのは、ショートポジションの過大な積み上げを背景にした値動きなのでは…と推測。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
言い換えれば、目下の切り返しはショート筋がどれぐらいポジションを削減していくかがポイントであり、またその程度に左右される。ユーロのポジション整理が先行した場合、ユーロ/円も反発しやすいので、引き続きユーロ/円の133~135円台打診を有力視。市況はいかに。
(PM2:30執筆)
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