■3度目の量的緩和の効果は限られる
しかし、異次元緩和に続き、2014年10月末にサプライズ追加緩和が実施されても、足元でゼロインフレとなっている状況から考えて、日銀内部でも疑問の声が上がっているのも当然である。
量的緩和の結果、株高・円安といった「副作用」はもたらしているが、本来の目標をまったく達成していないなら、金融政策自体が疑われても仕方がない。黒田さんの苦悩はまさにここにあり、これからも続くだろう。
つまるところ、日銀の「2年で2%」の目標がほぼ達成不可能なので、2年の期限をどれぐらい延長したら達成できるかが、新たな焦点となりつつある。
その上、さらなる追加緩和が必要かどうかが論議の中心となり、また、必要なら、いつ実施するかも問題だ。過度な円安や国債マーケットの硬直化を招く量的緩和策のマイナス面が懸念される以上、日銀の決定はたやすいものではなかろう。
何しろ、戦力の逐次投入はしないと宣言してきた黒田さんにとって、「三度目の正直」があっても、その効果が逓減されていくことは明白である。
ましてや、山本議員に言われるがままに4月緩和があったとしても、マーケットに対するインパクトはだいぶ減じられるだろう。
その上、3回目の追加緩和は、あったとしても、量的な意味合いにおいて、前2回を超えるはずもないから、発動された突端、政策余地の一段の縮小が露呈され、いつもどおりの効果を期待できないばかりか、逆効果になるリスクも無視できないから、まさに進退これ、きわまる。
■追加緩和への期待がある限り、米ドル/円は深押ししない
実際、こういった「空気」をマーケットがうまく読み取り、4月1日(水)の山本議員の発言があっても、追加緩和の思惑は想定より膨らまなかったと思う。何しろ、米ドル/円は3月31日(火)の高値を更新できず、当日夜の米経済指標悪化を受け、上昇波をほぼ帳消しにした。
(出所:米国FXCM)
上のチャートは米ドル/円1時間足だが、「1」は日銀短観を受けた下落で、「2」は山本議員の発言による追加緩和思惑がもたらした動きで、「3」は米経済指標の悪化による反落を指している。
実際、日銀短観を受けて追加緩和の思惑を高めたわけで、「1」と「2」はワンセットと見なした方が妥当だから、マーケットは追加量的緩和を必ずしも確実視していないのではないかと思う。
もう1つの見方をすると、目先、米利上げ時期ばかりに市場の関心が奪われ、相対的に日銀政策に対する注目度が下がっている可能性もある。
いずれにせよ、日銀による2回の量的緩和を経て、マーケット自体の期待効果も逓減しているのは間違いない事実で、日銀の政策運営の難しさが浮き彫りになっている市況だと受け止める。
とはいえ、少なくとも今月(4月)の日銀会合まで、3度目の追加緩和に対する警戒感や期待感も簡単には消えないだろう。
こういったセンチメントが存在する限り、米ドル/円は深い押しを回避でき、また高値をトライしていく公算が高いとみる。ただし、追加緩和なしという前提では、従来の上値ターゲット(124~125円)より、若干下方修正する必要も浮上してくるので、今月(4月)の日銀会合の結果をみて、再度判断したい。
■ユーロはショート筋のポジション削減の程度がポイント
最後に、ユーロサイドでは、ギリシャ危機再燃の雰囲気が強まるなか、ユーロ/米ドルがなかなか1.07ドルの節目を割り込めずにいるのは、ショートポジションの過大な積み上げを背景にした値動きなのでは…と推測。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
言い換えれば、目下の切り返しはショート筋がどれぐらいポジションを削減していくかがポイントであり、またその程度に左右される。ユーロのポジション整理が先行した場合、ユーロ/円も反発しやすいので、引き続きユーロ/円の133~135円台打診を有力視。市況はいかに。
(PM2:30執筆)
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