(「金融社畜の妖精「にほんばっしー」に突撃(5) 80%の的中率! 最後はカンが物を言う!?」から続く)
■ほかの人たちもこんな感じで予想値を出しているの?
世の中には、たくさん米雇用統計の数値を予想する人がいますが、そういう人の予想も、多かれ少なかれ、こんな感じでやってるんでしょうか?
「ええ。多かれ少なかれ、こんな感じで数値を使って、雰囲気を見ていると思います。エコノミストの場合は、僕と同じような方法で雰囲気を見た上で、想いを乗せるんです」
エコノミストの想いって?
「米国経済は、どっちに向いているかというシナリオを描き、そこに達するには、これくらい人を雇わないとダメだろうみたいな予想をするんです。だから、予想値を出すにあたって、自分のセンスが占める割合が僕なんかよりうんと大きい。これが、エコノミストの想いの部分です。
米雇用統計は、エコノミストの中でも、当てるのは難しいと言われていますし、想いの部分が大きいほど、コンスタントに当てるのは難しくなります。だから、基本は、最後の最後まで僕と同じような定量的な分析をやって、その上で想いを乗せる。でないと、ヒットレンジの理論で、鳴かず飛ばずになってしまいますから」
話を聞けば聞くほど、米雇用統計の予想って難しいんだなぁと記者も実感…。ですが、こうした統計的な分析がしっかりされている上に、Aさんの経験とカンに基づく職人技が合わさって、驚異の的中率を誇るNFP予想、「にほんばっしーモデル」が成り立っているんですね。
「にほんばっしー」、いえAさん。今後もキレのある予想をお願いします!
■米ドル/円はジリジリ上昇し、123円まではいく!?
せっかくなので、米ドル/円とユーロ/米ドルの相場予想もお願いしちゃいましょう。
まず、米ドル/円の今後の予想を教えてください!
「米ドル/円は、123円くらいまではいくと思います(※)。日経平均もそうですが、米ドル/円のちょっと落ちてもすぐ戻すというあの動きは、凄まじいでしょう? センチメントは明らかに米ドルロングに偏っています。
よく言われるのは、外人が足元の米ドル/円の動きについてきていないということなんです。遅れた外人が、あとから買ってくるので下がらない。なんだかんだありながら、アメリカの景気はジリジリ回復していくと考えられますし、米ドル/円が下がるというのは考えづらいという印象を持っています」
(※取材を行った5月中旬は、停滞気味だった米ドル/円ですが、月末になると突如動き始め、5月27日にはAさんの予想を上回る124円台に到達。さらに、6月2日には125円台にまで上昇しました)
米ドル/円が下がるのは考えづらいというAさんですが、その理由として、アベノミクスや米景気の観点から、さらに突っ込んだ話をしてくれました。
■アベノミクスは円高を許容しない
「アベノミクスは、政策的に円高許容のスタンスはとれません。先日、春闘の結果が発表されましたが、インフレに関する文脈を見ると、あまり良い模様を描けていない…。日銀が追加緩和をするほどではないですが、やや悩ましいという状況において、円高を許容するなんてことはしないでしょう。
こういう時は、マクロシナリオに則るべきです。世界を見た時、一番金融引き締めが早いのはアメリカ。アメリカの景気回復に対するリスクは、天気だったり、原油だったり、ストライキだったり、あるにはありますが、方向性として悪い時期は通過して、底を打ったのかなという認識です。
4月米雇用統計も、中身はそんなに良くはなかったですが、NFPで20万人(200k)台が出ているので、決して悪くありません。景気が縮小しているのではなく、遅々としながらも一歩ずつ回復している状態だと考えられます。
ですから、米ドル/円が下がるというのは考えづらいんです」
米ドル/円の123円というと、現時点の価格から見てもそう遠くない価格ですが、やはり2014年のような急激な円安は望めないでしょうか?
「2014年みたいなすさまじい上げは、異質ですから。あのペースのまま2015年もいってしまうと、さすがにノイズが出てくるだろうと思います。ジリジリとレンジを切り上げながら、123円あたりまでいくというのが、マクロ経済的に見ても、政治的に見ても、妥当な予想ではないでしょうか?」
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
予想レートはともかくとして、取材後の米ドル/円の動きは、Aさんが「米ドル/円が下がるというのは考えづらい」と指摘していたとおりの動きではあります。でも、さすがにちょっとペースが早すぎる気が…。同じく、Aさんが指摘していた「ノイズが出てくるだろう」という言葉も脳裏にチラつきますね…。
125円台到達以降は、このままさらに上昇! という雰囲気でもなさそうですし、これからの米ドル/円の動きに注意したいですね。
■ユーロ/米ドルはパリティまではいく!? その理由は?
続いて、ユーロ/米ドルはどうでしょうか?
「先ほど、『政治的な要因が強くなるので、アメリカの景気状態は、ビビッドにユーロ/米ドルに反映されるワケではない』という話をしましたが、ユーロについては、こうした政治的な要因が背景にあるという点は、まず、押さえておきたいところ」
【参考記事】
●金融社畜の妖精「にほんばっしー」に突撃(4) 驚異の的中率を誇る米雇用統計予想法!
「その上で、単純に経済状況を見ると、アメリカよりも欧州の方が、微妙に良いと感じています。非金融機関への融資も増えているので、ファンダメンタルズ的に欧州の経済は良い。とはいえ、ギリシャ問題は色濃く残っています」
ユーロの動きには、政治的な要因が背景にあると指摘するAさん。やはりギリシャ問題は色濃く残っているそうで…
経済状況に加え、政治的要因も強いとなると、予想するのも難しいですね…。ユーロ/米ドルは、これから上がる? 下がる?
「そうですね。こうした背景を考えると、ユーロ/米ドルは、パリティ(1ユーロ=1米ドル)までは下がると思います。そして、欧州はその状態でできるだけ長くいきたいだろうと思うんです。
アメリカとしても、米ドル高になっているというくらい米国経済が強くないと利上げはできないワケですから、パリティまではいくでしょう。それに、強い米ドルというのは、国の象徴でもあります。2016年に大統領選挙を控えている中でもありますので、そこまで米ドル高牽制はしないと思っています」
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル週足)
そういえば、2016年は大統領選挙も控えていましたね。最近は、ちょっと米ドル高牽制発言っぽいものも出てきて、米ドルが下がることもあるのかな? なんて思っていましたが、Aさんのお話によると、そうでもなさそうです。
いったいどうなるのか? 2015年の為替マーケットに注目ですね。
ここまでお話をうかがうと…
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