(「窓開け大暴落のときこそ、知っておきたいFXでは追証のある会社とない会社がある話」からつづく)
ここまで、ロスカットや証拠金判定に伴う、FX会社による強制的な決済のしくみなどについて詳しく見てきましたが、以下では余談として、関連する話題を1つお届けしましょう。
■なぜか、日本時間の朝方に急激な円高が進む事態が頻発
東日本大震災が起こった2011年当時、日本時間の朝方に、「急激な円高が進む」という事態が頻発していた時期がありました。1米ドル=70円台という史上最安値水準で、米ドル/円が推移していた頃です。

(出所:米国FXCM)
【参考記事】
●円高が進行し、ドル/円は78円台に突入。早朝に急激な動き! 介入はあるのか?

(出所:米国FXCM)
NYクローズから翌営業日オープン直後というのは、もともとマーケット参加者が少なく、流動性が低下しやすい時間帯ではありますが、それにしても、立て続けに同じ時間帯で「急激な円高が進む」というのは、違和感がある話…。
■個人投資家の強制決済で日本時間の朝方は円高に?
実は、日本時間の朝方は、多くのFX会社でNYクローズ後のメンテナンス時間帯にあたり、証拠金判定に伴う「強制決済」の処理を行う時間であったことから、個人投資家のロングポジションの「強制決済」が影響して、円高が進んだのではないか?と、一部で言われていました。
また、日本のFX会社で証拠金判定に伴う「強制決済」が行われているこの時間帯を狙ってヘッジファンドが仕掛け的な売買を行っていたことも、日本時間の朝方に「急激な円高が進む」という結果につながっていたというウワサも…。
これが事実なら、それだけ日本の個人投資家のポジション動向がマーケットに与える影響が大きいということを示す事例とも言えますし、それなら日本時間の朝方は、トレードチャンスじゃない?なんて考え方もあります。
ですが、流動性が低い時間帯であるぶん、トレードするには変動が大きそうでちょっと怖いという気もしますが…。
■「ロスカット」や「強制決済」をあてにせず自己管理を!
それでは、最後は話を戻して…とても大切なことを改めて確認しておきましょう。
それは、「ロスカット」も証拠金判定に伴う「強制決済」も、相場が急激に大きく動けば、預け入れた証拠金以上の損失が出る可能性がある、という点です。
どちらも、100%確実に損失を食い止めるルールではないということを、決して忘れないようにしてください。
万が一、預け入れた証拠金以上の損失が出た場合は、不足分をFX会社へ追加で納めなければならなくなります。この預け入れた証拠金以上の損失は「ロスカット未収金」と呼ばれ、過去にはこの「ロスカット未収金」がたくさん発生した“事件”が起こったこともありました。
たとえば、2015年1月に起きたスイスショックで発生したロスカット未収金の件数と金額は、「個人が1137件、法人が92件で、発生金額は個人・法人合計で33億8800万円」にも及んでいたのです。
一部では、この件をめぐって裁判に発展するとかしないとかってケースもあったようです…。
【参考記事】
●スイスショックで借金の悲劇!個人投資家を直撃、裁判への動きも…
結局は、「ロスカット」や証拠金判定に伴う「強制決済」といった最後の砦的なルールをあてにせず、日頃から資金管理をこまめに行うとともに、必ずストップ注文を入れるようにするなど、自分でできるリスク管理をおろそかにしないことが、万が一に備えるもっとも有効な手段のように思います。
この機会に、今一度、基本的なリスク管理の方法を確認し、そのうえで、より利益を上げられるトレーダーになれるよう、日々トレードに挑戦していきたいですね。
(ザイFX!編集部・向井友代)
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