■「黒田ライン」根拠のショートは投機筋に狙われやすい
黒田さんの真意がどこにあるかは測れないところだが、これ以上の円安が好ましくないなら、追加緩和に過大の期待をできないのも自明の理だ。ただし、こういっても「黒田ライン」が絶対的で、これから破られないといった判断も性急だと思う。
経験則では、マーケットは行くところまで行ってしまう傾向が強いので、たとえ中央銀行総裁でも、単に「口先介入」のみでマーケットの流れを阻止するのは至難の技だ。
場合によっては、「口先介入」があればあるほど、マーケットは当局のラインを試す意欲に燃える習性もあるから、「黒田レジスタンスライン」があるからこそ、米ドル/円が一段と上値トライをする可能性もある。
(出所:米国FXCM)
こういう局面は、一般的に踏み上げを伴うケースが多い。現時点ではあくまで仮説だが、「黒田ライン」を気にする市場参加者が多ければ多いほど、米ドル/円の売りポジションは増えていくだろう。
こういった積み上がった売りポジションが逆に投機筋に狙われ、仕掛け的な買いで一気に「黒田レジスタンスライン」をブレイクしていく可能性が大きい。
なぜなら、「黒田レジスタンスライン」を根拠にショートを仕掛ける売り筋の多くは同ラインのちょっと上にストップロスを設定するはずで、投機的な買い筋にとってどこまで踏み上げすれば良いか、わかりやすい。よって、相手に手の内が読まれている以上、リスクが大きいわけだ。
前述のように、現時点ではあくまで仮説だが、言いたいことは、マーケットに周知されているラインが存在すれば、一時的にせよ、ブレイクされるリスクが大きいから、注意が必要ということだ。
先々週(7月6日~)中国株の暴落につられ、米ドル/円が急落していたが、120.40円から急速に切返しを果たしたため、目先、米ドル上昇のモメンタムがなお強いことを無視できないと思う。
■一気に130円の大台にトライできるかどうかは慎重に判断
とはいえ、米ドル/円の上値余地をガンガン上方シフトしていくのもリスキーだと思う。米ドル/円は、これから「黒田レジスタンスライン」を突破していくとしても、一気に130円の大台をトライできるかどうかは慎重に測るべきだ。
米ドル/円の日足は一段と高値更新の余地を示しているものの、2011年安値を起点とした大型上昇波の最終段階に位置しているだけに、再度高値更新があれば、それ自体、頭打ち間近のサインと見なすべきだと思う。
このシナリオを、筆者が7月20日(月)に書いたレポートをもって説明したい。原文は以下のとおり。
(出所:米国FXCM)
※昨年7月安値を起点とした上昇波、新たな5波構造をもって展開され、昨年年末高値121.84をもって第3子波を完成したと見る。同高値の更新をもって第5波子波の進行を確定。
※新たなカウントでは、第5子波の起点、1月安値115.85から数え、最終子波の拡大を有力視。この場合、最終子波特有のエキスバンディング・トライアングルが形成される見通し。
※この場合、同トライアングル、フォーメーションではブロードニング・トライアングルの形に近く、足許最終子波の上昇波に位置しよう。124.45のブレイクがあれば、一段とブル基調を強める。
※124.45以上の終値をもって高値更新をもたらし、従来の通り127/128のターゲットを目指すでしょう。但し、最終子波、前記フォーメーションに制限され、おのずの限界あり、高値更新後の頭打ちを警戒。
このシナリオの最大の焦点は最終子波のフォーメーションにあり、同フォーメーションが成立した場合、米ドル/円のトップアウトが強く暗示されるだろう。詳細はまた次回、市況はいかに。
(14:20執筆)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)