■日銀来週緩和説まで浮上! 市場は大荒れとなるかも…
支持率が低下している安倍政権にしても、後世に英名を残したい黒田さんにしても、3度目の量的緩和を必要としており、最後の「博打」を打たざるを得ない情勢だから、その可能性は高いとみる。
ここで急浮上しているのが、何と来週(9月13日~)にでも追加緩和に踏み切るという見方だ。真相はともかく、黒田さんならあり得ないとも言いきれない、と多くの市場関係者はそう思うだろう。
したがって、昨日(9月10日)、円がさらに大きく売られたことは、こういった市場の思惑と緊密にリンクしている。
米FOMCを控え、日銀も行動してくれば、マーケットは大荒れとなるだろう。目先の円売りの正体は、株式市場の回復に伴うリスクオフ一服による反動、といった側面も大きいが、日米金融政策、取りわけ日銀政策に関する思惑の方も影響が大きいとみる。
しかし、思惑というものは極端に言えば、基本的に外れるために存在するものだ。
筆者の考え方としては、今月(9月)の米利上げ自体が確実なものではなく、日銀の早期緩和も確率が低く、結果的に目先の円安傾向は、基本的に8月以来大きく進行した円高トレンドに対する反動にすぎず、過大評価すべきではなかろう。こういった修正が一服してくれば、また、円高トレンドへ復帰するのが筋である。
■「リスクオフだからユーロ高」という解釈に落とし穴
もっとも、目先の相場環境は、過激なリスクオフの一服があったとしても、リスクオンに戻ったとまでは言いにくい。
また、リスクオフの一服があったというのも、リスクオフによって買い戻されたと言われるユーロ/米ドルの底堅さから考えると、何となく違和感を覚える。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
周知のように、ユーロ/米ドルはドルインデックスに占めるシェアが半分以上であり、米ドル全体の対極として考えればよい。
米利上げ思惑があっても、ユーロ/米ドルが想定以上に底堅く推移するなら、リスクオフの環境がまだ続くか、もしくは「ユーロ高になるのは、リスクオフによってユーロキャリートレードが巻き戻されているのだ」といった解釈自体(筆者もそう思っていたが)に落とし穴があると言える。
【参考記事】
●「リスクオフでユーロが買われている背景にあるものとは?」(「2015年は中国で『李万姉妹』事件発生!? 経済危機警戒、リスク資産から手を引け!」より)
もっとも大きな落とし穴は、米利上げ=米ドル高といった発想にあるだろう。何しろ、前回の米利上げ周期はかなり前のことだったから、市場参加者の記憶も薄れているところではないか。調べてみると、この前の米利上げ周期は2004年6月~2006年6月までの2年間で、米金利が1%~5.25%へ上昇したものの、ドルインデックスは上下しながらも、低下傾向を維持していた。
(出所:米国FXCM)
その検証はまた次回に。
■今は偏ったポジションを取らない方が無難
最後に、大きな波乱や大きな思惑が一巡し、マーケットは冷静さを取り戻している公算が高い現在は、この間のような激しい値幅を期待しない方が良いだろう。
FOMC待ちで大きな方向感を定めにくいからこそ、偏ったポジションを取らない方が無難だ。もちろん、円のポジションに関しても同様で、日銀に関する思惑のみでポジションを取ってはいけないことも記しておきたい。市況はいかに。
(AM10:30執筆)
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