■休暇前のポジション調整もあり、米ドルの反騰が拡大
米ドル全体が切り返しの基調を強めている。
FRB(米連邦準備制度理事会)幹部は、タカ派発言を繰り返し、市場関係者たちに「年内最低2回利上げ、来月利上げに踏み切る」といった警戒心を抱かせた。
その上、本日(3月25日)からのイースター休暇を控えたポジション調整も見られ、米ドルの反騰を拡大させていると思われる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
ただし、FRB幹部の発言、明らかにこの前の声明文と異なる基調だ。
3月FOMC(米連邦公開市場委員会)では、慎重な言い回しに終始していたから、市場は2016年内の利上げは、せいぜい2回、場合によっては1回しかないと織り込んでいたところ、ややサプライズを受けている模様。
【参考記事】
●米株上昇と金&円上昇、ニセモノはどっち?桜満開のころ、ドル/円は105~106円へ!(3月18日、陳満咲杜)
ベルギーのテロが安全資産、あるいはリスク回避先である金や円、スイスフランの上昇をもたらせなかったことも米ドル上昇を加速させた一因として挙げられるかと思う。
■米ドルのブル基調への回復はハードルが高い
ところで、ドルインデックスを見る限り、17日(木)の安値94.65を起点とした切り返しが継続されてきたものの、その値幅は大きいとは言えず、またブル基調へ回復するにはハードルが高いとみる。
なにしろ、100.51を起点とした下落波、大型ジグザグの変動パターンを示し、また、98.58を起点とした下落が進行していることがはっきり見えるから、この構造が否定されるまでは性急な判断を避けたい。
その上、明白なサインとして見逃せないのが、3月10日(木)と16日(水)のチャートの意味合いであった。
両日はともに、上ヒゲ大陰線を形成したのみでなく、「フェイク セットアップ」のサインを灯していたからだ。
【フェイク セットアップの参考記事】
●「■フェイク セットアップとは?」 (「ユーロのトップアウトがもたらす全面円高。杞憂ではなく相場の「天」は時に落ちる!」(2015年5月9日、陳満咲杜)より)
(出所:CQG)
要するに、ザラ場の高値は、過去数日の高値よりも高かったものの、終値をもって安値を更新したから、強力な売り線として解釈され、また、その役割を果たしたからこそ、ドルインデックスの安値打診につながったわけだ。
したがって、こういった「ダブル・フェイク」が存在している以上、米ドルのブル基調回復が、少なくとも一気にできるという余地は小さいだろう。
現実的な見方として、3月16日(水)の高値を更新できない限り、目先のリバウンドを過大評価せず、さらなる下値打診を警戒といったスタンスが望ましいだろう。同日高値が97.06だったことに鑑み、容易なブレイクは想定されにくい。
ゆえに、米ドル全体の調整波はなお進行中で、目先スピード調整の段階にあり、スピード調整の拡大があってもポジション調整の範疇に留まるだろう。
さらに、ファンダメンタルズ上の理由から見ても、米ドル全体のブル基調回復には、時間がかかる公算が大きいかと思う。
米利上げ観測に左右されるドルインデックスの強弱だが、年内2回の利上げがあっても、米ドル全体を押し上げていくには力不足だ。
なにしろ、2015年末の時点では2016年に4回の利上げが想定されていたわけだから、4回未満の利上げ回数では物足りない感が強いからだ。
■FRB幹部の発言は信用できない側面が大きい
その上、何よりもFRB幹部たちの発言には、信用できない側面が大きい。
近年、彼らは言いたい放題の傾向にあり、また、お互いに矛盾した見方を披露していることもある。これがマーケットに混乱をもたらしたり、中銀の信頼性を損なうといった懸念を引き起こしたりして、市場関係者のひんしゅくを買ったこともしばしばあった。
マーケットは、ときどき彼らの発言に振り回されるが、結局は中銀自体のスタンスにしたがった値動きになりやすい。
3月FOMC声明文を見る限り、FRBは「経済指標次第」よりも「市場次第」のスタンスに転換しており、現在は市場が落ち着いているとはいえ、これから波乱が起こらないという保証はどこにもない。
したがって、「市場次第」なら、結局、相場のことは相場に聞くしかない。
■NYダウのリバウンドは限界に近い
NYダウは、たしかに2016年1月の安値から大きく反騰して、再度1万7515ドルの高値を打診しているから、目先の相場に安心感はある。
しかし、よくよく見ると、2015年11月高値1万7977ドルを超えない限り、NYダウの反騰はあくまでリバウンドという位置づけであり、むしろ、リバウンドの限界に近いことがわかる。
(出所:CQG)
落ち着いた相場はあくまで目先の現象で、いつ波乱が起きてもおかしくないといった感触が得られる。
もっとも2015年からの相場の急変は…
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