■最新の世論調査ではEU残留が再び勢いづく
6月23日(木)、世界中が固唾を呑んで見守る英国のEU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票が実施される。
当初はEU残留派がかなり優勢だったが、その後は、EU離脱派がどんどん支持を伸ばす展開に。
【参考記事】
●米雇用統計ショックで6月利上げ消滅! 英国のEU離脱支持が増えたワケとは?(6月7日、西原宏一&松崎美子)
ところが、6月16日(木)、EU残留を支持していたジョー・コックス議員が銃で撃たれた上に、刃物で刺され死亡する事件が発生。これでEU残留派が再び勢いづき、まさにシーソーゲームの様相となっている。
以下は英国の国民投票の世論調査をしている調査会社・ORBのこれまでの結果をグラフにしたものだ。
(出所:ORBのデータを元にザイFX!編集部が作成)
こちらをご覧いただくとわかるように、当初は圧倒的にEU残留派が優勢だったが、その後、EU離脱派が追い上げてきたことがわかる。とくに、6月13日(月)に発表された世論調査では、EU離脱派が55%とEU残留派を10%も上回る状況となっていた。
【参考記事】
●EU離脱派が55%へ急増との世論調査も! 流れはリスクオフも日銀サプライズは警戒(6月14日、西原宏一&松崎美子)
●英国がEU離脱なら英ポンドは20%暴落か。7500万円払えば、いち早く結果がわかる!?
ただし、ORBの世論調査は、先ほど取り上げたジョー・コックス議員の銃撃事件が発生する前までのもの。そこで、同じく調査会社のYouGovの世論調査で最新の情勢をチェックしてみよう。
(出所:YouGovのデータを元にザイFX!編集部が作成)
上のグラフを見ると、ORBと同じく、このところEU離脱が残留を上回る状況が続いていたが、最新の世論調査では逆転している。
■ブックメーカーのオッズもEU残留が優勢
そして世論調査と同じく、英国国民投票の結果を予想する上で重要視されているのが、賭け屋(ブックメーカー)が発表しているオッズだ。
こちらは、お金がかかっているため、真剣さが増し、世論調査よりも信憑性があるとされている。過去の実績的にも世論調査より、よく当たっているらしい。
【参考記事】
●英国がEU離脱なら英ポンドは20%暴落か。7500万円払えば、いち早く結果がわかる!?
●議員殺人事件の衝撃が流れを変えた! 英国民投票で核兵器並みの為替介入も!?
では、駆け屋の最新オッズをまとめて掲載しているウェブサイト「OddsChecker」見てみよう。
上の画像をご覧いただくと、大手の賭け屋、CORALのオッズはRemain(EU残留)が「1/4」、Leaveが「11/4」となっている。
これは、それぞれ右側が賭ける側の額で、左側がそれに対して勝ったときに賭け屋からもらえる利益の額となる。
もちろん勝てば賭けた額も戻るので、左側+右側の額がトータルの払い戻し額になる。たとえば、EU残留に賭ける場合は「1/4」なので、4払えば、勝ったときは1+4=5の払戻しがあるというわけだ。
でも、これは英国で使われているオッズの表示方式なので日本人にはなじみが薄くわかりにくい…。
そこで、競馬や競輪など、一般的に日本の公営ギャンブルで使われているオッズの表示方式、倍率に換算してみた。倍率への計算式と結果は以下のとおり。
EU残留:(1+4)÷4=1.25倍
EU離脱:(11+4)÷4=3.75倍
倍率は、勝って支払われる総額(賭け屋からもらえる利益の額+賭けた額)を賭けた額で割ることによって算出される。このように倍率に換算してみると、EU残留が優勢ということがよくわかる。
ちなみに、「OddsChecker」で、「Most Popular Bets」とされているのは、Remain(EU残留)が1.29倍、Leave(EU離脱)が4.00倍となっている。
こうして見てみると、世論調査よりも賭け屋のオッズの方が、EU残留の確率が高いことを示しているようだ。
■ザイFX!編集部が市場関係者に緊急アンケートを実施
ここまで、調査会社による世論調査と賭け屋のオッズについて紹介し、比較してきたが、ここからはザイFX!編集部が独自に調査した結果について紹介したい。
はじめに、市場関係者に「英国国民投票に関する緊急アンケート」を行った結果を紹介しよう。市場関係者への質問は以下のとおり。
(1)英国国民投票の結果はどうなると思いますか?
(2)英国のEU離脱が決定した場合、英ポンド/円の下値メドは?
アンケート期間は、2016年6月15日(水)~6月20日(月)まで。対象は銀行、証券会社、FX会社などの専門家や投資情報会社、各種メディアの関係者で、23名から回答を得た。なお、アンケートは無記名・選択式で行っている。
なお、大手通信社の記者によると、「今回の英国国民投票については、取材や予想を控えている市場関係者が多い」そうだ。そのため、今回のアンケートに関しても回答者に偏りが出てしまっている可能性がある。この点についてはご了承いただきたい。
では早速、気になるアンケート結果を見てみよう。
英国の国民投票については、EU残留が83%、EU離脱が17%と、EU残留が大勢を占めた。
そして、英国のEU離脱が決定した場合の英ポンド/円の下値メドについては、131円~135円が21%ともっとも多く、116円~120円、121円~125円が17%で続いた。
また少数だが、176円~180円に「上昇する」というかなり驚きの回答も…。質問は「英ポンド/円はどこまで下落する?」だったのだが、これはかなり予想外だ。
ザイFX!コラム執筆陣の陳満咲杜さんは、英国のEU離脱はすでに織り込まれているため、たとえEU離脱となっても、英ポンドは暴落しないという見解を披露しているが、前述の回答者も陳さん同様に「織り込み済み」という見方なのだろうか。
【参考記事】
●織り込み済みか。英国がEUを離脱しても英ポンド暴落、欧州株暴落はない!?(6月17日、陳満咲杜)
そのほか、普段は英ポンドを見ていないとした上で、「英国のEU離脱により米ドル/円が100円割れにチャレンジする」なんていう回答もあった。
(出所:CQG)
また、英国のEU離脱が決まった場合、「実際にいつ離脱するのか」、「EU(欧州連合)の単一市場へのアクセスがどれだけ認められるのか」を注目ポイントに挙げる市場関係者もいた。
■ザイFX!読者はEU離脱、残留どうみる?
次に、ザイFX!公式ツイッターを使ったアンケートを複数回行っているので、こちらも紹介しよう。
【参考記事】
●緊急特集:EU離脱・英国国民投票まとめ。英国は本当にEUを離脱するのか?
こちらのアンケートは、各回、投票開始から締め切りまでの期間は24時間と設定した。
以下はアンケート結果だが、回数を重ねるごとに投票数もグングン伸びていて、6月19日(日)に実施した第4回目では752票を集めた。
6/23に予定されている英国のEU離脱の是非を問う国民投票。
— ザイFX! (@ZAiFX) 2016年6月14日
EU残留派とEU離脱派、どちらが勝つと思いますか?
6/23に予定されている英国のEU離脱の是非を問う国民投票。
— ザイFX! (@ZAiFX) 2016年6月16日
EU残留派とEU離脱派、どちらが勝つと思いますか?
6/23に予定されている英国のEU離脱の是非を問う国民投票。
— ザイFX! (@ZAiFX) 2016年6月18日
EU残留派とEU離脱派、どちらが勝つと思いますか?
6/23に予定されている英国のEU離脱の是非を問う国民投票。
— ザイFX! (@ZAiFX) 2016年6月19日
EU残留派とEU離脱派、どちらが勝つと思いますか?
そして、投票日が迫るにつれて、EU残留という見方が着実に伸びていることがわかる。直近2回のアンケートでは、いずれもEU残留が70%を超えているのに対し、EU離脱が20%台に落ち込んでいる。
このように、ザイFX!編集部が独自に調べたデータでも、多くの市場関係者や個人トレーダーはEU残留の可能性が高いと見ていることがわかった。
■セントラル短資FXでも独自に調査を実施
ほかにも、セントラル短資FXが英国国民投票に関連した独自調査を公式ツイッターで実施している。質問は以下の2つ。
(1)英国のEU離脱を問う国民投票、みんなの予想は?
(2)投票間近!英国国民投票時はポンド買い?
こちらは、投票開始から締め切りまでが数日間と長く、途中経過になるのだが、(1)はEU残留が62%、EU離脱が38%と、やはりEU残留との見方が優勢となっている。
そして(2)は、「ポジションを持たない」が53%、「買い」が24%、「売り」が23%という状況だ。
EU残留でも離脱でも英ポンドは大きく動く可能性が高い。にもかかわらず、「買い」と「売り」を合わせて、47%の人が英国国民投票時に英ポンドのポジションを持っていようと考えているわけだ。
【参考記事】
●英国民投票で儲ける方法とは? チャンスは英ポンドではなく、あの通貨ペアにあり!(6月21日、西原宏一&松崎美子)
なお、ザイFX!公式ツイッターによる調査も、セントラル短資FXの調査もツイッターの当該アカウントをフォローしている人しか投票ができない。そのため、調査対象に一定の偏りがあることは念頭に置いて、データは見ておいた方がいいだろう。
■モーサテ調査では、EU残留予想が100%!
さらに、テレビ東京で放送されている早朝の経済番組「ニュースモーニングサテライト」(通称:モーサテ)では、出演している市場関係者に「モーサテ・サーベイ」というアンケートをいつも実施しているのだが、これがオドロキの結果となっていたので、紹介しよう。
6月20日放送分の「モーサテ・サーベイ」はいつも聞いている日経平均や米ドル/円相場の見通しの他に、英国のEU残留・離脱の予想も聞いており、その調査期間は6月17日~6月19日となっていた。
そして、その結果はなんと、アンケートに回答した市場関係者33人すべてがEU残留を予想しているというものだったのだ。つまり、EU残留予想100%というわけだ。
ここまでさまざまなデータを紹介してきたが、それらを総合して考えると、本記事を公開した6月22日(水)の時点では、「EU残留優勢」は揺るがないと思える。
ただ、「モーサテ・サーベイ」で発表された市場関係者の「EU残留予想100%」という調査結果にはやや不気味なものも感じる。ここまで予想が偏っているとなると、EU離脱のケースへの準備が不十分になっていることも考えられ、もしも、予想が外れて、EU離脱となった場合の市場への衝撃度は計り知れないものになるのではないだろうか。
相場がものすごい大荒れになったときのことも考え、投票日当日に向けて、リスク管理はしっかりしておいたほうがよさそうだ。
(ザイFX!編集部・庄司正高&井口稔)
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