■コラム執筆中に米ドル/円が105.749円まで急伸!
米ドル/円は、このコラムを書いている途中、なんと105.749円まで急伸しました。正直言って、ここまで相場が大きく反応するとは思っていませんでした。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)
■雇用統計の結果が出たあと、ドル/円はなぜあんな動きを?
さて、週末(7月10日)の参議院選挙が終わって、週明け(7月11日~)から急速に株高・円安が進行しています。
7月8日(金)の米雇用統計では、失業率や平均時給こそ予想を下回ったものの、非農業部門雇用者数が28.7万人と市場予想の18.0万人を遥かに上回る結果となりました。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)
ところが、101.305円まで上昇した米ドル/円は、米長期金利の急低下を受けて99.99円まで急落。引けにかけては、米国株が急上昇した影響もあって、100円台半ばまで戻すという二番底を確認した形ではありましたが、単純にそれだけでは説明ができない動きとなっています。
(出所:ヒロセ通商)
■バーナンキの「表敬訪問」は、実は「政策協議」だった
一番の理由は、今後の政府、日銀の動きに対する期待感です。
安倍総理は、参議院選挙が終わると、ただちに大規模な経済対策の策定を石原経済再生相に指示しました。
週明け7月11日(月)のランチタイムには、その経済対策で「新規国債の発行を検討」することが報じられ、加えて、バーナンキ前FRB(米連邦準備制度理事会)議長が訪日。
黒田日銀総裁とプライベートな会合の場が設けられました。
翌日12日(火)には、安倍総理を表向きには「表敬訪問」したわけですが、その場には浅川財務官も、菅官房長官も、そして浜田内閣官房参与も同席。
「政策協議」の場であったことは明らかでしょう。
■「ヘリコプターベン」は「まだ追加緩和の手段がある」と表明
バーナンキ前FRB議長といえば、その持論から「ヘリコプターベン」のニックネームがつけられるほど、財政出動や大規模な量的緩和に積極的であることは周知の事実。
まだプリンストン大学で教鞭をとっていた2000年1月に、日銀に対する政策提言を講演し、その中では、「政策金利がゼロになっても、国債などの買い取りを通してマネーサプライを押し上げられる」としたほか、「外貨建て資産の購入や財政資金を通じた家計への所得移転を提案」したことでも知られています。
かつて「デフレ克服のためにはヘリコプターからお札をばらまけばよい」と発言したこともあるというベン・バーナンキ前FRB議長。「ヘリコプターベン」の異名を持つ同氏の来日が憶測を呼び、急激な円安が進行した (C)Bloomberg/Getty Images
安倍総理との会談後にも、「日銀にはまだ追加緩和の手段がある」との見解を表明しました。
市場には、「これまでの前提を覆されるかもしれない」との恐怖心が生まれ、マクロファンドを筆頭に、これまで日本の金融政策や財政政策の手詰まり感から構築してきた米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)、日経平均のショートポジションを一斉に閉める動きにつながったと言えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
(出所:株マップ.com)
■「ヘリマネ政策」前提で市場が動き出してしまった
そして、本日7月14日(木)、本田前内閣官房参与がインタビューに答える形で、「4月訪米時にバーナンキ前FRB議長が永久国債の発行を提案した」ことを明らかにしました。
デフレ脱却の政策手段として、日銀保有の国債を、償還期限のない永久国債に切り替える議論です。
こういった「ヘリマネ政策」が、建設国債の発行や財投の活用も盛り込まれた10兆円規模の経済対策、日銀の追加緩和とパッケージで表明される可能性も出てきています。
まだ、政策の検討が始まったばかりであり、どのような政策となるかはわからないはずですが、市場はまさに、この「ヘリマネ政策」という新たな「前提」で動き出してしまいました。
結果が判明する7月末までは、この期待だけが先行する相場が展開されることになりそうです。
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