■8月2日(火)の高値・安値をどちらに更新していくかがカギ
とはいえ、日銀の敗北云々は時期尚早であろう。日銀が「次回会合にて政策効果を検証する」と言っているだけの段階で、「日銀の政策余地はもうない」とか、「日銀政策変更」などと推測するのは、性急なことだと思う。
いずれにせよ、相場というものは現状認識のみで形成されるものではなく、皆の将来に対する推測、あるいは思惑から行った行動の結果である。だから、相場は日銀政策の可能性を織り込んだ形で形成されている。
したがって、「相場のことは相場に聞く」というスタンスが一番大事なので、米ドル/円チャートの現状を検証してみよう。シンプル・イズ・ザ・ベストの原則に基づき、米ドル/円の検証も大局観でいきたい。
最近の値動きは、8月2日(火)の大陰線に包まれた形(黄線に囲まれた部分)で「インサイド」のパターンを示す。
(出所:アイネット証券)
だから、これから8月2日(火)の高値・安値のどちらをブレイクしていくかということが大事だと思われる。これは日本のチャートパターンでいうところの「はらみ」なので、ブレイクされる方向についていくのが基本とされる。
■下落モメンタムがすでに一服した可能性も
さらに左へさかのぼって見ていくと、英EU離脱の6月24日(金)の大陰線が、その後の日足をほぼ包んでおり、大きな「インサイド」(緑線に囲まれた部分)のパターンを示しているが、唯一、7月21日(木)の高値がいったん6月24日(金)の高値を更新していることがわかる。
(出所:アイネット証券)
この高値をつけたあと、足元まで大きく下げてきているから、この高値の一時更新は「ダマシ」であった可能性が高いと言え、これから安値を更新してもおかしくなかろう。
ゆえに、8月2日(火)の安値を本来は割り込むはずであり、先の「ダマシ」は、さらなる下値トライに道筋をつける存在であるとみられる。
しかし、本日(8月12日)を含め、8日間の取引日が経過しても8月2日(火)の安値を割り込んでいないから、下落モメンタムはすでに一服した疑いがある。その上、8月2日(火)の安値が7月8日(金)の安値より高かったことも、今の相場が下落構造にない可能性を示している。
となると、7月21日(木)の高値は「ダマシ」ではなく、上放れの前兆なのではないか、といった視点をもって相場をフォローしていく必要も出てくるだろう。
このような必要性は当然、今後8月2日(火)高値102.83円のブレイクによって強化されるはずで、これから102.83円のブレイクがあれば、最初のサインが灯ると推測される。
■肝心なのは日銀政策自体ではなく、相場がどう反応するか
総合的に見ると、現在は日銀政策の行方に関する憶測が多いが、肝心なのは政策自体ではなく、相場がどう反応するかにある。また、相場の反応パターンは、実は相場の内部構造を示唆してくれるから、細かく相場のサインを検証していけば、材料より先に相場の本音をつかめるかと思う。
現時点では、米ドル/円のブル(上昇)トレンド復帰にほど遠いとはいえ、底割れにはなっていないから、筆者は引き続き、「日銀政策限界論による円高」予想とは距離を置きたいと思う。市況はいかに。
【参考記事】
●マイナス金利導入後の残像に翻弄される市場。ドル/円は102円さえ割らない可能性も(2016年7月29日、陳満咲杜)
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