■米長期金利を頭打ちにするのは利上げプロセス停止のみ
では、米長期金利を頭打ちにし、場合によってはベアトレンドへ転換させる材料は、いったい何だろうか。答えは1つしかない。それは米利上げのプロセスを停止することである。
現時点で、このような懸念をもたらす材料は見当たらず、むしろ、その逆の可能性が大きいのではないだろうか。
言い換えれば、確かに今回FOMCは年内3回の利上げしか示唆していないが、本当のところは慎重なスタンスを取りすぎて、かえって市場との対話に失敗したのでは…と疑われるところが米ドル売りのもっとも大きな背景になっていると思う。
■これまでのFRBの行動が市場を疑心暗鬼にさせている
米利上げ後の市場の反応(株高、金高、米長期金利安、米ドル安)は、FOMCにとって明らかに「誤算」であった。
ゴールドマン・サックスによると、同行のFCI(フィナンシャル・コンディションズ・インデックス)が2000年以来の低いレベルに落ち込むような、今回の米利上げがもたらした市場のパフォーマンスは、利上げよりも利下げの効果に近いという。
ここまで「誤解」されるのは決してFRB(米連邦準備制度理事会)の本来の願いではなかろう。FOMCの声明文やドッドチャートが、より明白な金融引き締めのメッセージを出せなかったところが大きいが、本当のところは、マーケットはFRBが示唆する利上げのスピードについて疑心暗鬼であることが一番大きい原因だと思う。
なにしろ、FRBの見通しに沿った形なら、現在(2017年3月17日)、米長期金利は3%に届いているはずだ。
(出所:Bloomberg)
FRBの「誤算」が市場の信頼を得られなかったことに起因しているのならば、「ではなぜ、市場関係者はFRBを信頼していないのか」と問われると、問題のカギは、株の動向やこれまでFRBが取った行動にあると思われる。
なにしろ、史上最高圏にある米国株は利上げに敏感なはずであり、3%以上の金利レベルには耐えられないと思われる。
が、いったん米国株が大きく調整してくると、いつものようにFRBが利上げプロセスを停止する公算が高いとされている。「やはりFRBは口だけか」と思われても仕方がない。このような市場心理をFRBが読み切れずにいるのは大きなミスだと思う。
■今後の米利上げ見通しのカギを握るのは株式相場
いずれにせよ、今回の利上げがもたらした「逆効果」は、典型的な市場反応とはほど遠く、単純に「事実の売り」と解釈しきれないところが多い。
ゆえに、今後の米利上げ見通しは、株式相場がカギを握るのは間違いない。
皮肉なのは、米利上げ後、株式相場が堅調に推移しているから、逆に足元の米ドル安がいかに「間違った市場反応」であったかを露呈しているようにみえる。
(出所:Bloomberg)
このあたりの話は、また詳説したいが、ドルインデックスが反落しているなか、引き続きクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の動向が気になることを記しておきたい。
結論から申し上げると、クロス円が総じて堅調な推移になりやすいのではないかと思う。検証はまた次回、市況はいかに。
(13:30執筆)
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