■米利上げ後、米ドル全体は反落
米ドル全体は反落している。
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米利上げ後、FOMC(米連邦公開市場委員会)の声明文が市場関係者らの想定よりタカ派基調になれなかったとか、年4回の利上げ予想が3回に留まったとか、(いつものように)いろいろ後付けの理由が挙げられているが、問題の本質は米長期金利(米10年物国債の利回り)であろう。
前回のコラムで指摘したように、カギは米長期金利(米10年物国債の利回り)にあった。米国債のショートポジションがかなり膨らんでいたため、利上げ後、これが買い戻された模様で、政策金利は上がったのに、米長期金利(米10年物国債の利回り)は低下することになった。
【参考記事】
●米ドル/円115円台復帰も精彩を欠く米ドル。ドルがなかなか上がらない2つの理由とは?(2017年3月10日、陳満咲杜)
(出所:Bloomberg)
こういった値動きのパターンは、通常、「事実の売り」と言われているが、今回も然り。
■ドルインデックスは三尊型を形成するのか?
ところで、ドルインデックスの値動きから考えると、米ドルの反落自体よりも、この間の高値水準が注目されるべきではないだろうか。なにしろ、米ドルの失速で日足における「三尊型(※)」の形成が疑われてきたからだ。
(※編集部注:「三尊型」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。仏像が3体並んでいるように見えるために「三尊型」と呼ばれていて、人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼ぶこともある)
(出所:Bloomberg)
仮に、このようなトップアウトのフォーメーションが成立する場合、これから2月安値99.23割れをもって、下値余地を大きく拡大するだろう。果たしてこのような市況になるだろうか。
■米長期金利の動向から米ドルのパフォーマンスを推測
米ドルと米長期金利(米10年物国債の利回り)の相関性で問題を整理すると、シンプルな見方として、以下のような答えが出てくるだろう。
すなわち、仮にドルインデックスが2月安値を割り込み、日足における「三尊型」のフォーメーションが成立して大幅に下値余地を拡大する場合、米長期金利(米10年物国債の利回り)もそれなりに、重要な下値サポートを割り込むだろう。
同じく2月の安値水準では、同利回りが2.31%を記録していたから、果たして米長期金利(米10年物国債の利回り)が同水準を下回れるのかどうかが、問題の争点であろう。
米長期金利(10年物国債の利回り)の週足でみると、2016年12月高値を超えられなかったから、利回りの反落は自然の成り行きに見えるが、2017年2月安値を割り込むのは、だいぶハードルが高いだろう。
(出所:Bloomberg)
なにしろ、1月高値をいったんブレイクしたので、1月安値と2月安値で形成した「ダブルボトム」の構造がなお維持されていることがわかる。
そうなると、足元の反落はむしろ上昇途中におけるスピード調整と見なされ、ダブルボトムの構造を完全に否定するのは何らかのサプライズなしでは難しいのではないだろうか。
実際、前述のダブルボトムの構造を否定する場合、米長期金利が再度ベア(下落)トレンドへ復帰する恐れも高まるから、サプライズもだいぶ大きなものでなければならない。
では、米長期金利を頭打ちにし、場合によってはベアトレンドへ…
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