■市場は米ドルの「売られすぎ」にやっと気づく
ドルインデックスと米ドル/円の値動きから考えると、2017年年初来の米ドル全体の調整(反落)が正式に終焉したという結論を得られる。
米利上げは想定範囲内だが、バランスシートの縮小を明言したFRBのスタンスに、マーケットは戸惑いながら、米ドルの「売られすぎ」にやっと気づいた模様だ。
換言すれば、足元はまだ、一部米ドルのショート筋がポジションを買い戻しただけで、米ドルの本格的な上昇はまだまだこれからであるということだ。
(出所:Bloomberg)
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何しろ、米利上げ継続やバランスシート縮小に、なお懐疑的な見方を持つ市場関係者が多ければ多いほど、これから米ドルが上昇する余地は大きい。よって、足元は懐疑論の方が主流であるだけに、米ドル高の継続が想定される。
米利上げ継続やバランスシート縮小開始の可能性に懐疑的な見方を示す市場関係者の多くは、米景気回復を疑問視し、米小売売上高や米CPI(消費者物価指数)など米景気指標が予想に届かなかったことで悲観論に傾いた。
また、ナスダック指数の最近の急落で「利上げ自体が株式市場を圧迫し、株式『バブル』が弾ければ米利上げもなくなるだろう」といったロジックに支配されている模様である。
言い換えれば、リスクオフの本格化を心配しているわけだ。
■リスクオフの本格化は杞憂、調整自体が市場を健全化
しかし、冷静に点検すればわかるように、米GDP成長率が2~3%ベースを維持している限り、リスクオフの本格化は杞憂であろう。
また、本格的なリスクオフの進行がない限り、ハイテク株をメインとするナスダック指数の調整があっても、続くとは限らないうえ、調整自体がむしろ株式市場の健全化につながる。
なにしろ、米三大指数はそろって史上最高値を更新し続けていたわけで、バブルであるかどうかは別にして、強いブルトレンドが継続されているから、途中のスピード調整はむしろ歓迎されるべきではないだろうか。
要するに、米景気回復が続くという大前提が崩れていない限り、米金利低下、米ドル安は「行きすぎ」を極めており、すでに底打ちした可能性が大きい。
実際、米地方連銀の中には、アトランタ連邦準備銀行のように第2四半期GDP成長率の予想値を3%から3.2%へ上方修正した例もあって、トランプ大統領が示唆しているように、同期米GDP成長率が「大変よい」数字になる公算が高い。
この意味では、マーケットコンセンサスの「弱気」が行きすぎで、いずれFRB(米連邦準備制度理事会)のように「強気」に傾いてくるだろう。
足元はまだその初歩段階であり、市場センチメントの修正はこれからであるからこそ、米ドルの上昇余地が大きいとみる。
■上昇トレンドが長いというだけで米国株反転と考えるのは危険
歴史的に考えて、景気回復が続く限り、米利上げ継続は可能であり、また、米利上げ継続が可能な限り、株式市場崩壊といったリスクは小さい。
株式市場の本格的な反落は、むしろ利上げが続き、これ以上、利上げが難しいのでは…と疑われた時点において発生しやすいから、現時点はこのような環境にはほど遠い。
米金利低下を、米利上げ継続に対する懐疑論がもたらした結果とみれば、現在はむしろ逆の環境にあるといえる。
確かに8年も上昇トレンドを維持してきた米国株の状況は、未曽有のロングラリーとなっているが、これだけで米国株市場の反転を判断するのはリスキーな考え方だ。
(出所:Bloomberg)
今まで米国株の「過熱」を理由に米国株を空売りしてきた筋が多かったが、彼らは例外なく破滅した。また、ショート筋の破滅があったからこそ、米国株の長期ブルトレンドがもたらされた側面も強かっただけに、米ナスダックの最近の急落も新たな「破滅組」の参入を誘っているようにみえなくもない。
■為替市場に限っては「トランプ・ラリー」の再来も!?
筆者としては、為替市場に限っては、これからリスクオフばかりか、「トランプ・ラリー」の再来があってもおかしくないとみる。
この理由はまた次回詳細を記すが、仮に「トランプ・ラリー」にならなくても、リスクオンに傾く公算は大きいとみる。
その証明材料は何と言っても、米ドル/円のみでなく、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)全体の強気変動がもっとも有力であろう。
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ユーロにしても英ポンドにしても、これから米ドルに対して続落しやすいとみるが、ユーロ/円、英ポンド/円は逆に上昇しやすいのではないだろうか。このような市況がみられたら、リスクオンの相場に違いないから、要注意だ。市況はいかに。
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