■与党圧勝で海外勢の日本株買いが再開か
日本の総選挙は自公が大勝。3分の2を超える議席を獲得しました。
日本人からすれば「そうだろうな」という印象ですが、小池新党の立ち上がり当初の勢いを聞いた一部の海外勢は警戒感を抱いていました。
希望の党はあっさりと失速しましたが、海外勢には日本人ほど圧勝のイメージはなかった。選挙結果を確認して日本株や米ドル/円を買ってくる投資家もいるでしょう。
海外勢はまだまだ日本株がアンダーウエイトだと言われていますね。米ドル/円も選挙明けの朝、一時114円を抜けました。まだここから買ってくるでしょうか。
(出所:Bloomberg)
今年(2017年)の特徴として、イベント前にはポジションを閉じて、結果が出てから再開する動きが目立ちます。
フランス大統領選挙が顕著でしたし、何度もあった「○日は北朝鮮リスクに警戒」というときも同じ。今回の総選挙でもそうなる可能性がありそうです。
■米ドル/円の114.50円には輸出勢の売り
日経平均は約57年ぶりの連続上昇記録となっていますが、PERは15倍程度。まだまだ過熱感はありません。出遅れていた米ドル/円もやっとついてきはじめましたね。
(出所:Bloomberg)
10月になって欧米の年金基金が日本株を買い始めているようです。為替ヘッジをかけない短期筋と違って、彼らは為替ヘッジをかけながら買っていきます。
日本株に比べて出遅れていた米ドル/円のキャッチアップが始まるかもしれません。
【参考記事】
●米大型減税の行方がマーケットの関心事。米ドル/円118円上昇のカギを握るのは…!?(10月19日、西原宏一)
早くも「年内には1ドル118円」なんて声も出てきています。
僕も中長期的には118円を見ていますが、目先で言えば114円から114.50円では輸出勢の売りが待っています。
そこでいったん止まりやすいし、すんなり115円へ乗ってくるようだと118円が見えてくる。
(出所:Bloomberg)
■26日ECB理事会通過後の動きは1.16ドル台ミドルに注目
今週(10月23日~)は26日(木)にECB(欧州中央銀行)理事会が控えています。
この日のテーパリング(※)発表を織り込んで今年(2017年)のユーロ/米ドルは1.2095ドルまで上昇してきました。
(出所:Bloomberg)
9月8日(金)にトップアウトしてユーロ上昇は止まっていますが、テーパリングの開始発表はもう完全に織り込まれてしまったということでしょうか。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
【参考記事】
●今週は北朝鮮情勢に絡むリスクに警戒! でも、無風で通過すれば米ドル買い再開か(10月9日、西原宏一&大橋ひろこ)
問題はペース、金額や期間でしょう。これまでカタルーニャの独立問題やドイツやオーストリアでの極右政党の台頭があってもユーロが落ちなかったのはECBへのテーパリング期待があったためですから、ECB理事会を通過して1.16ドル台のミドルを割ってくるとガサッと落ちる可能性があります。
ただ、ユーロ/米ドルは年初の1.03ドル台で中期的なボトムをつけています。落ちるといっても上昇トレンドに対する深めの調整。
(出所:Bloomberg)
欧米勢は12月に向けて勝負の時期。トレンドフォローで攻めるなら米ドル買いかなと思いますが、いかがですか。
以前は11月のサンクスギビングデイ(感謝祭)までが勝負と言われていましたが、最近では12月半ばのFOMC(米連邦公開市場委員会)まで粘る投資家が多いようですね。
今年(2017年)も12月12日(火)~13日(水)のFOMCでの利上げが見込まれています。そこまでの勝負となるのでしょう。
方向性でいえば9月8日(金)に金(ゴールド)、米ドル/円、ユーロ/米ドルが一斉に転換し、米ドル高へ向かっていることは何度も話しましたが、米10年債金利もこの日に2.014%のボトムをつけています。
そこから2%を割らずにジワジワ上げてきている。底固い米金利も米ドル、とくに米ドル/円を押し上げるでしょう。
【参考記事】
●米大型減税の行方がマーケットの関心事。米ドル/円118円上昇のカギを握るのは…!?(10月19日、西原宏一)
●今週は北朝鮮情勢に絡むリスクに警戒! でも、無風で通過すれば米ドル買い再開か(10月9日、西原宏一&大橋ひろこ)
■政権交代がNZドルのゲームチェンジャーになる可能性
先週(10月16日~)は米上院で予算案が可決、税制改革の実現へ一歩前進しています。
米ドル高の環境が整ってきた印象ですね。一方で先週(10月16日~)目立ったのがNZドルの下落。9年ぶりの政権交代が起きた影響だそうですね。
9月23日(土)のNZ総選挙では与党・国民党が過半数を獲得できず、ポピュリスト政党であるNZファーストがキャスティングボートを握る形となっていました。
NZファーストは先週(10月16日~)、野党第一党である労働党への協力を発表して連立政権が成立。それを受けて為替市場ではNZドルが売られました。
(出所:Bloomberg)
NZファーストは外資制限や中央銀行の役割の変更などを主張しており、不透明感の高まりがNZドル売りを誘ったようです。
トレンドがはっきりしなかったNZドルですが、今回の政権交代がゲームチェンジャーとなる可能性もゼロではありません。
ニュージーランドの貿易収支は8~9月にボトムアウトして改善するサイクルがあることから、例年NZドル/米ドルには9月から12月にかけてNZドル高になりやすい傾向があるのですが、今年(2017年)は政権交代の行方を見極める必要がありそうですね。
今週(10月23日~)は日経平均へのキャッチアップが始まる可能性のある米ドル/円の押し目買いを基本に考えてよいでしょう。
(出所:Bloomberg)
あとはユーロ/米ドル。ヨコヨコの動きが続く可能性もありますが、ECB理事会通過後に1.16ドル台ミドルを下抜けるようなことがあれば注目です。
それとともに、政治的な不透明感が増しているNZドル/米ドルにも気をつけたいですね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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