(「【超初級】 ビットコイン・仮想通貨入門(1) そもそも、ビットコインとは何なんですか?」からつづく)
■「電子マネー」と「仮想通貨」の違いって?
さて、「仮想通貨」はなんとなくわかってきたけど、それなら「電子マネー」だって「電子的にやりとりできる財産的価値」なんじゃない?と思いますよね!?
そうなんです。電子マネーも確かに「電子的にやりとりできる財産的価値」なんです。しかし、Suicaを例に、前回の記事で紹介した法律の要約に照らし合わせてみると、どうでしょうか?
【仮想通貨とは次の1または2いずれかの「財産的価値」である】 (資金決済法2条5項を要約) 1.以下の(a)~(d)の条件を満たすもの (a)物を買ったり借りたり、サービスを受けたりするときに、不特定の 相手に対して支払いができる (b)不特定の相手から買ったり、不特定の相手に売ったりできる (c)電子的に記録されていて、インターネットなどを通じて電子的に やり取りできる (d)日本円建てや、外国通貨建ての資産ではない 2.不特定の相手が持っている(a)~(d)の条件を満たす仮想通貨 と、インターネットなどを通じて電子的に互いに交換できるもの |
<Suicaを例に法律に当てはめた結果>
1.の(a)の条件を満たさない
→SuicaはSuicaの加盟店でしか使えないため、「不特定の相手」に対して支払いができると言えない
1.の(b)の条件を満たさない
→Suicaは不特定の相手から買ったり、売ったりはできない
1.の(d)の条件を満たさない
→Suicaは、あくまでも前払いした「円」を電子的に記録しているだけの、「日本円建て」の資産である
ということで、Suicaなどの電子マネーは、「仮想通貨」の定義に当てはまらないということになります。まとめると、こんな感じです。
資金決済法 2条5項1号の要件 |
仮想通貨 (ビットコインなど) |
電子マネー (Suicaなど) |
物を買ったり借りたり、 サービスを受けたりする ときに、不特定の相手に 対して支払いができる |
〇 | × |
不特定の相手から 買ったり、不特定の 相手に売ったりできる |
〇 | × |
電子的に記録されていて、 インターネットなどを通じて 電子的にやり取りできる |
〇 | 〇 |
日本円建てや、 外国通貨建ての 資産ではない |
〇 | × |
■「電子マネー」と違うなら、リアル店舗でどうやって使うの?
「仮想通貨」と「電子マネー」が違うことはわかった。仮想通貨が加盟店云々に関係なく、不特定の相手に対して使えることもわかった。
じゃあ、実体もなくって、「SuicaのICカード」みたいに利用者が共通で使うツールのないものを実際の店舗でどうやって使うの???というのが第2関門。
結論から言うと、「ビットコインで支払いを行う≒自分の銀行口座から他の銀行口座に支払金額を送金する」という感じです。
ビットコインをやり取りするには、「ウォレット」という銀行口座のようなもの(文字どおり訳せば「財布」ですが…)と、「ビットコインアドレス」という銀行口座番号のようなものが必要になります。
ウォレットには、いろいろな種類があり、詳細は別の機会に紹介したいと思いますが、店頭での支払いに利用するウォレットは、おもにスマホやタブレットのアプリです。
そして、ビットコインで支払いを行うときは、
「インターネットを通じて、自分のウォレットから支払先のビットコインアドレスに、支払金額のビットコインを送金する」
という手続きになります。
手順だけ見ると、「相手のメールアドレスを入力して、メールを送信する」くらいの作業でしょうか。

なるほど~。ビットコインを店頭での支払いに使えるお店が増えてるって聞くけど、世界中の人が共通で使える「ピピッ」とタッチするICカードやアプリのようなしくみがあるとも思えず、ナゾは深まるばかりだったのですが…、「相手がこちらから引き落とす」のではなく、「こちらから相手に送る」ということだったんですね!
しかも、支払先のビットコインアドレスはQRコード化されていることも多いため、QRコードの読み取り機能があるウォレットアプリなら、「スマホをかざす→支払いボタンを押す」だけで支払い完了です。かんたん!
この手軽さで、世界中どこでも使えるようになっていくと考えると、ものスゴい可能性を秘めているのかも…と期待したくなるのも、わかる気がします。
■日本円で売っている商品を、どうやってビットコイン価格に?
でも、新たな疑問が…。日本円で売っているものをどうやってビットコイン価格で支払うの?
これも電子マネーとの大きな違いですよね。
と言うのも、電子マネーは、あくまでも「日本円」をICカードなどに電子的に記録しているだけなので、1000円チャージすれば1000円分の買い物ができます。
ところが、ビットコインなどの仮想通貨は、米ドルやユーロなどの外貨と同じように、円に対して価格が変動します。1ビットコイン=80万円になったり、90万円になったり、いつの間にか100万円とか200万円になったりする…つまり相場があるわけです!
これでは、「1000円」と値段が付いた商品を買うために用意しなければならないビットコインの量は、都度、変わってしまうことになります。ネットショップなどには、もともとビットコイン価格で提示しているところもありますが、実店舗ではそういうわけにもいきませんよね。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/円 1時間足)
いったいどうするのか?
bitFlyer(ビットフライヤー)のシステムを利用しているビックカメラを例に挙げると、どうやら、店員さんがビックカメラ側のスマホアプリに円建ての金額を入力して宛先ビットコインアドレスとなるQRコードを表示すると、その時のビットコイン/円(BTC/JPY)レートで商品を購入するために必要なビットコインの価格が決定され、それが画面に表示されるようになっているようです。
■値動きが激しいのに、瞬時に価格が変わったりしないの?
ただ、ビットコインは値動きが激しいのも事実。ザイFX!でもビットコインチャートを掲載しているので、ご覧になっている方もいると思いますが、ビットコインは、たった数分で何万円も動く! なんてこともザラにあります。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/円 10分足)
【参考コンテンツ】
●FXチャート&レート:ビットコイン/円チャート
いざビットコインで決済しようというときに、もし、2万円も動いたら…どうなっちゃうのー!? と心配になってしまいますが、冷静に考えてみましょう。
まず、2017年12月12日(火)現在のビットコイン/円のレートは、1BTC=約190万円です。ここではザックリ200万円と仮定しましょう。このとき、たとえば、日本円で1万円の値段がついているモノを、ビットコインの支払いで購入するとします。すると、
1BTC÷200万円×1万円=0.005BTC
になりますね。
ここで瞬時にビットコインが202万円になったとします。すると、0.005BTCは円換算でいくらになるかというと、
0.005BTC×202万円=1万100円
というわけで、1万円程度の買い物ならば、レートが2万円動いても、その差は100円ぐらいと、驚愕するほどではないわけです。
海外で買い物することを想定すると、現金での外貨両替でも、たとえば、銀行で米ドルから円に換えると1ドルあたり2.5~3円程度の手数料はかかりますし、クレジットカード決済だと1.5~2%程度の手数料を取られる上に、利用してから数日後のレートで決済されたりします。
そう考えると、店頭での決済に利用する際、ビットコインの変動リスクについて、そこまで神経質にならなくても大丈夫なのかもしれません。
【参考コンテンツ】
●ビットコイン・仮想通貨の取引所/販売所を比較。取引コストが安いのはどこ?
(「【超初級】 ビットコイン・仮想通貨入門(3) 円などの「法定通貨」と「仮想通貨」の違い」へつづく)
(ザイFX!編集部・上岡由布子)
【目次】 【超初級】 ビットコイン・仮想通貨入門
■【第1回】 そもそも、ビットコインとは何なんですか?
■【第2回】 「電子マネー」と「仮想通貨」の違いとは?
■【第3回】 円などの「法定通貨」と「仮想通貨」の違い
■【第4回】 ブロックチェーンって結局、何なの!?
■【第5回】 マイニングとはいったい何をしているのか?
■【第6回】 マウントゴックス事件はどんな事件だった?
■【第7回】 ビットコインアドレスはなぜ匿名性が高い?
■【第8回】 ビットコインはどうやって手に入れるの?
■【第9回】 ビットコインの値動きの要因は何だろう?
■【第10回】 利益に税金はかかる? 詐欺や盗難に注意
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