■「暗号資産CFD」とは?
「暗号資産CFD」とは、暗号資産(仮想通貨)を対象とした差金決済取引(CFD)です。
【参考記事】
●CFD取引とは? 初心者にもわかりやすくしくみや特徴を解説したCFD入門ガイド
差金決済取引は、対象となる資産の受け渡しは行わず、売買で発生した損益のみを受け渡すことで取引が完結します。
ですから暗号資産CFDも、トレーダーと取扱業者との間で暗号資産のやりとりはなく、売買した差額(円)が増えたり、減ったりするしくみになります。
また、暗号資産CFDも既存の証券CFDやFX同様、証拠金を預け入れ、それを担保にレバレッジをかけた運用ができますし、「売り」からでも「買い」からでも取引を開始することができます。
当記事では、今後注目を集めそうな暗号資産CFDについて、どんな暗号資産が対象となっているのか、利益が出た場合の税金はどうなるのかなどについて、まとめています。
【目次(もくじ)】
■暗号資産CFDの特徴(メリット・デメリット含む)
・メジャーな暗号資産が対象となっている
・レバレッジをかけた取引ができる
・取引の相手方が取扱業者である
・24時間、365日取引ができる
・「売り」からでも取引できる
・暗号資産が流出する心配がない
・取引手数料無料
・スプレッドが取引コストに
・レバレッジ手数料が発生する
■暗号資産CFDの特徴(メリット・デメリット含む)
・メジャーな暗号資産が対象となっている
2021年2月現在、国内で暗号資産CFDを取り扱っているのはSBI FXトレードとマネックス証券の2社。
SBI FXトレードでは、ビットコイン、エックスアールピー、イーサリアムの3種の暗号資産と円とのペア、そして米ドルとのペアの、全6種の暗号資産CFDが取引できます。
(出所:SBI FXトレード)
ビットコインは、暗号資産の代名詞ともいえる、最大の時価総額を誇る暗号資産。2020年10月下旬ごろから大きく上昇し、2021年1月上旬には430万円近辺まで上昇。その後、300万円付近まで下落しましたが、2月中旬には600万円超えまで急騰。と思ったら、1日で約100万円下落するなど、急変動を繰り返しています。
(リアルタイムチャートはこちら → 仮想通貨リアルタイムチャート:ビットコイン/円(BTC/JPY) 日足)
エックスアールピーは、ちょっと聞きなれないという方もいらっしゃるかもしれませんが、リップルと言えば聞いたことがある方も多いかも。暗号資産名(通貨名)としてリップルを使用しているケースも多いですが、厳密に言うとリップルは暗号資産名ではありません。リップルは暗号資産を利用した新しい国際送金のシステム全体のことを指し、そこで使われる暗号資産の名称がエックスアールピー(XRP)ということになります。時価総額は第3位です。
そしてイーサリアムは時価総額が2位の暗号資産。スマートコントラクトと呼ばれる、人の手を介さずに契約を自動履行するしくみのプラットフォームとなる暗号資産です。ビットコインやエックスアールピーは発行上限が決められていますが、イーサリアムは今のところ、発行上限が決まっていません。
一方、マネックス証券では、SBI FXトレードで取り扱っている3種に加えて、ビットコインから分裂した暗号資産であるビットコインキャッシュも取り扱っています。
【参考記事】
●ビットコインキャッシュの特徴とは?神様も推奨!? ビットコインを超えるかも!
(出所:マネックス証券)
ただし、マネックス証券では暗号資産と円とのペアの暗号資産CFDのみとなりますので、取引できる暗号資産CFDは全4種となります。
・レバレッジをかけた取引ができる
暗号資産CFDは証拠金取引ですから、少ない証拠金でレバレッジをかけた運用ができます。現在暗号資産CFDを取り扱っているSBI FXトレード、マネックス証券ともに、レバレッジは最大2倍となっています。つまり、暗号資産の現物取引の半分の資金で、同じ利益が出せるということです。
ただし、レバレッジをかけている分、逆方向に相場が動くと、レバレッジをかけない取引よりも最大2倍のスピードで損失が膨らむことに。暗号資産は値動きも大きいですから、余裕を持った証拠金を準備するのが賢明です。
・取引の相手方が取扱業者である
暗号資産CFDは、取引の相手方がサービスを提供する業者となる「店頭取引」となります。よって、基本的には注文時に提示されている価格で約定します。
なお、暗号資産CFDというサービス名以外で、暗号資産の証拠金取引(レバレッジ取引)を提供している業者もあります。そのサービス名は暗号資産FX(以前は仮想通貨FX)などと呼ばれていたりします。その中にはユーザー同士が取引を行う「取引所取引」になっているものもありますが、その場合、自分が注文したい量に対して、他のユーザーが出している注文量が少なければ、自分の思ったような価格で注文が約定しない可能性があります。
・24時間、365日取引ができる
暗号資産CFDは24時間365日動いている暗号資産の値動きが対象となっていますので、暗号資産CFDも24時間365日取引ができます。ただし、取扱業者のメンテナンスなどによって、取引ができない時間帯が生じることもあります。
・「売り」からでも取引できる
暗号資産の現物取引では、「買った暗号資産を売って利益を出す」のが基本ですが、暗号資産CFDは「売り」からでも「買い」からでも取引ができます。ですから、下落相場でもトレードチャンスがあり、利益を得られる可能性があります。
・暗号資産が流出する心配がない
暗号資産CFDは、暗号資産の受け渡しは行わず、売買で発生した損益のみがやり取りされます。ですから、顧客は自分の保有する暗号資産のポジションについては不正に流出してしまうというリスクがありません。
ちなみに、暗号資産CFDを取り扱っているSBI FXトレード、マネックス証券ともに、暗号資産のデリバティブ取引ができる「第一種金融取引業者」ではありますが、顧客に対して現物の暗号資産を取り扱うことができる「暗号資産交換業者」の登録はしていません。
暗号資産CFDとは現時点では、FXや株式の取引でなじみのある会社で暗号資産が取引できるサービスと言うこともできそうです。
・取引手数料無料
暗号資産CFDの取引では、現在取扱いのあるSBI FXトレードおよびマネックス証券では、取引手数料がかかりません。
・スプレッドが取引コストに
暗号資産CFDの取引では、売値と買値にスプレッドが生じます。スプレッドは取引に伴うコストになります。いずれの取扱業者もスプレッドの具体的な数値や、変動制なのか、原則固定制なのかといった文言は明記していません。
しかし、取引画面などで実スプレッドを確認すると、マネックス証券はレートが変わるたびにスプレッドも変動していましたが、SBI FXトレードは一見しただけだと、通常の値動きの際に、スプレッドの値に変化がありませんでした。
(出所:SBI FXトレード)
ただ、取引アプリのスプレッド一覧を確認すると、SBI FXトレードのスプレッドは、1回あたりの取引量によって4つの区分に分かれており、スプレッドが動かないのは取引量がもっとも少ない区分だけでした。残りの3区分では、レートが変わるとスプレッドも変動していました。
・レバレッジ手数料が発生する
暗号資産CFDの取引では、デイトレードでない場合、レバレッジ手数料が発生します。レバレッジ手数料とは暗号資産以外の金融商品では聞き慣れない用語ですが、これはFXでいうロールオーバーにあたる時間帯をまたいでポジションを持っていた場合に、ポジションの保管費用として発生する手数料です。
SBI FXトレードのレバレッジ手数料は、もともと保有建玉総量の0.039%と設定されていたのですが、2020年末以降の暗号資産相場の急激な変動に伴い、2021年2月22日(月)のロールオーバー時より変動制となりました。
マネックス証券は、保有建玉総量の0.04%となっています。
■暗号資産CFDの税金・確定申告
暗号資産CFDの取引で生じた利益は、所得税の課税対象となり、「雑所得」に区分されます。
雑所得は原則として、「総合課税制度」の対象となりますので、暗号資産CFDで生じた利益は、給与所得などのほかの所得と合算し、確定申告を行って、総所得金額に応じた所得税を納めることになります。
「総合課税制度」において、所得税は所得に応じて5%~45%の税率となります。さらに住民税もかかります。
すでにFXや証券CFD取引などについて確定申告を行ったことのある方は、「トレードで得た利益は『申告分離課税』で、給与所得などとは合算せずに分離して、所得税と住民税をあわせ一律20%(※)の税金を支払う」というイメージがあるかもしれませんが、暗号資産にかかる取引はそうではないんです。
(※2013年~2037年は復興特別所得税がさらにかかるため、正確には20.315%の税率になる)
ちなみに、「損失が出ても確定申告しておけば、3年間繰越控除ができる」というルールにも、暗号資産CFDは該当しません。
【参考記事】
●【超初級】 ビットコイン・仮想通貨入門(10)利益に税金はかかる? 詐欺や盗難に注意
暗号資産CFDの取引を始める際には、各取扱業者の公式サイトなどで確定申告や税金に関する記載をチェックしたり、国税庁の公式サイトなどで基本的な知識を確認したりしておきましょう。
そして、確定申告や税金などについてわからないことが出てきた場合は、勝手な判断はせず、必ず税理士や管轄の税務署などで専門家の見解を確認するようにしてください。
(ザイFX!編集部)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)