■米金融政策の正常化に向けた動きが加速
寒波やハリケーンの被害に見舞われながらも、米国経済は2017年も好調を維持。ユーロ圏や英国、日本でもプラス成長が続き、先進国の経済状況は総じて良好だったと言える1年でした。
こうした中、各国の金融政策にも少しずつ変化が見られるようになり、どこもかしこも超緩和的な金融政策を継続、といったような感じではなくなったことが、2017年のもう1つの特徴でした。
先ほども触れたとおり、米国は3回の利上げとバランスシートの縮小に着手。2015年と2016年は、どちらも1回、12月に利上げをするのが精一杯といった状況だったのが、2017年はまだ緩やかとはいえ、正常化に向けた動きが明らかに加速しました。
FOMCの金利予測からは、今のところ、2018年も3回程度の利上げが実施されると想定されます。米経済がFOMCの見通しどおりに進展すれば、2018年末のFF金利は2.25%(正確には2.00~2.25%のレンジ)に達することになります。
(出所:FRB)
イエレン議長の退任に伴い、新FRB議長として2018年2月から金融政策の舵取りを行う予定となっている、パウエル氏(現FRB理事)の手腕も注目されますね。
金融危機後の「異次元大規模緩和」から脱却するという難しい舵取りを迫られる中、5度の利上げとバンスシートの縮小開始を決定してきたイエレンFRB議長。2018年2月に議長職から退き、残っている理事の任期切れを待たずにFRBから去ることが決まっている (C) Bloomberg/Getty Images
そうそう、次期FRB議長の座を巡っては、一時期、指名争いでパウエル氏の有力対抗馬に、スタンフォード大学教授のジョン・ブライアン・テイラー氏が浮上して話題となりました。
テイラー氏が過去に提唱した「テイラー・ルール」という金融政策ルールが注目を集めたわけですが、もし、テイラー氏がFRB議長に就任すれば、FRBの金融政策スタンスが一気にタカ派路線へ転換。米国の金利が上昇し、米ドルは買われるだろうとの思惑から、マーケットがあわただしく動いた場面もありましたね。
【参考記事】
●注目集まる「テイラー・ルール」とは? テイラーFRB議長誕生なら米金利は3%に!?
最終的には、金融政策に対する考えがイエレン議長に近いとされるパウエル氏が次期FRB議長に就任する予定となったことで、2018年以降の米利上げペースも、これまでのように緩やかだろうという見方が多数となっています。
ただ、イエレン議長が2018年2月に退任すると、FRB理事のポストは全7席のうち4席が空席となります。その空席がどんな人物で埋まるかによって、FRBの利上げペースが今の想定から変化する可能性はあります。
トランプ大統領は先日、量的緩和に否定的で、タカ派な金融政策を主張すると予想されるグッドフレンド氏を理事に指名しています。パウエル氏はFRBの合意形成を重視するタイプだと見られているため、グッドフレンド氏だけでなく、他の理事の空席もタカ派な金融政策を主張する人物で埋まれば、利上げのペースが速まるかもしれませんね。
■カナダは約7年ぶりの利上げを実施。追加利上げも
米国以外を見ると、カナダでは、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])が7月に、約7年ぶりとなる利上げを実施。その後、9月にも追加利上げが決定されました。
※BOCのデータを基にザイFX!が作成
加ドル/円は2度の利上げを受けて、9月に一時、2015年12月以来の高値となる91円台まで上昇する強い動きとなりました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:加ドル/円 週足)
その後、加ドル/円は年末にかけて上値が重くなってきています。これは、BOCがここからの一段の利上げには、慎重な姿勢を示しているからです。しかし、カナダの経済がこのまま底堅く推移すれば、さらなる利上げが実施される可能性は高いと考える市場参加者も少なからず存在するようです。
■ニュージーランドはポピュリズム政党が躍進し、政治が混乱
一方で、オーストラリアとニュージーランドでは、金融政策に変化がなく、2017年を通じて、ともに過去最低水準の政策金利が据え置かれました。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 各国政策金利の推移)
どちらからも一段の利下げは必要なく、次の一手が利上げになるとの認識が示されていましたが、利上げ開始は来年以降に持ち越されることとなりました。
ニュージーランドに関しては、政治の混乱が材料になりましたね。
ニュージーランドでは、9月の総選挙でポピュリズム的な政策を掲げる「NZファースト党」が大躍進し、これまで野党だった労働党らと連立を組んで、新たな政権が誕生しました。
首相に就任した労働党党首のアーダーン氏が、移民の抑制や海外企業の投資に制限を設ける考えを示したことで、ニュージーランド経済への影響が懸念されました。
【参考記事】
●ドル/円は118円への上昇過程! 注目は…!? NZドルを反落させたネガティブ材料とは?(10月26日、西原宏一)
ニュージーランドの新首相に就任した、労働党党首のアーダーン氏。移民抑制や海外企業の投資に制限を設けるなど、ポピュリズム的な考えを示したことで話題に (C)Hagen Hopkins/Getty Images
夏ごろから上昇に転じていたNZドルは、新政権に対する警戒感が高まったことで、年末にかけて弱い動きとなりました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/円 週足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/米ドル 週足)
新政権は、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])に為替介入を増やすよう主張するなど、中央銀行にも大幅な改革を迫っているようです。ただ、先日、RBNZの次期総裁に、かつて副総裁を務めた経験があるオア氏が指名されると、金融政策に精通している人物が選ばれたという安心感から、市場の警戒感は少し後退しているようです。
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