■政治イベント相次いだユーロ圏。口火は仏大統領選
英国に離脱される側のユーロ圏でも、今年は政治イベントがいくつかあり、ECB(欧州中央銀行)の金融政策にも変化がありました。
政治イベントで口火を切ったのは、フランスの大統領選挙でした。
4月23日(日)の第1回投票では、支持率の拮抗する「国民戦線」のルペン氏、「左翼党」のメランション氏、「共和党」のフィヨン氏、「前進!」のマクロン氏の4名が、四つ巴の戦いを繰り広げました。
【参考記事】
●極右と極左が人気!? 恐怖指数は急上昇! 混沌の仏大統領選とユーロ相場を徹底解説(4月19日、松崎美子)
結果、EUからの離脱や移民の制限を公約に掲げた極右のルペン氏と、政治改革を進めてEUとの統合を深化させると訴えたマクロン氏が決選投票に進出。
5月7日(日)の決選投票では、フィヨン氏の支持も取り付けたマクロン氏が勝利し、39歳という若さで第25代フランス大統領に就任することとなりました。
【参考記事】
●仏決選投票はマクロン氏が大差で勝利へ! ECBは年内にテーパリング開始を発表!?(4月25日、松崎美子)
為替市場では、4月の第1回投票でマクロン氏とルペン氏が決選投票に進むことが判明すると、すぐに大統領はマクロン氏に決まり!といったムードが高まり、ユーロは上昇を開始。
実際にマクロン氏が勝利したあとも、ユーロは「セル・ザ・ファクト」で売られることなく、政局への警戒感が後退したことを背景に一段高となりました。
【参考記事】
●窓埋めトレードの絶好のチャンスだった仏大統領選後のユーロ相場でひと儲け!
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
政治リスクが杞憂に終わり、ECBによる超緩和政策の終了時期が早まるかもしれない……と思われたことも、ユーロが上昇する要因でした。
ちなみに、ユーロ/米ドルが今年の安値をつけたのは1月3日(火)。そう、前回の記事の冒頭で触れましたが、米ドル/円が今年の高値をつけたのとまったく同じ日です。
【参考記事】
●ザイFX!で2017年を振り返ろう!(1) 為替相場よ、トランプ・ラリーは何処へ?
ここからも、2017年は年初から米ドル安に傾いたことがわかりますね。
■メルケル政権に暗雲。ドイツで再選挙の可能性!?
そして、9月24日(日)には、ドイツで連邦議会選挙がありました。
メルケル首相率いる「キリスト教民主・社会同盟(CDU)」は第1党の座を維持したものの、議席数が大きく減少。
一方、フランスと同じようにドイツでも極右政党が大躍進し、難民の受け入れに反対する「ドイツのための選択肢」が大きく勢力を伸ばしたことから、4期目を迎えるメルケル首相は、連立政権樹立に向けた取り組みを行わなくてはいけなくなりました。
しかし、約1カ月におよぶ少数野党との連立協議は失敗に終わり、今度は大統領の仲介のもとで、大連立政権の継続に向けた話し合いを始めています。
現在進行中のこの協議がうまくいかなければ、ドイツでは再選挙が実施される可能性も出てきます。
今のところ、ユーロ圏ナンバーワンの経済大国、ドイツの政局不安が、ユーロ相場を大きく揺さぶる展開にはなっていません。ただ、もし再選挙が実施されて、そこでメルケル首相が敗北して退陣…なんて展開になったら、ユーロ相場に激震が走るかもしれません……。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
■スペインで独立運動が過熱。他国への飛び火が心配…
それから、10月にスペインでは、カタルーニャ自治州で独立を問う住民投票が行われ、独立賛成派が圧倒的多数となったことから、独立を認めないスペイン政府と独立を支持する住民との間で衝突が起こる事件もありました。
カタルーニャ州では、これまでも独立の可能性がさんざん話題になってきたが、10月の住民投票では独立賛成票が9割を超え、独立を認めないスペイン政府との間で衝突が相次いだ。写真はカタルーニャの独立を求めて実施されたデモの様子 (C)David Ramos/Getty Images
そもそも、投票率4割、独立賛成票が約9割と、独立反対派はほとんど投票していないような状況だったワケですが、すったもんだの末、カタルーニャ自治州議会は独立宣言を賛成多数で可決。中央政府は州政府幹部を更迭して、カタルーニャ州の直接統治に乗り出すなど、混迷を極めています。
独立の旗振り役となっていたプチデモン前カタルーニャ州首相は、その後、ベルギーに避難(亡命?)。ユーロ圏のあちこちで、独立機運が高まる可能性が、現在も警戒されています。
【参考記事】
●欧州で懸念される「2つのドミノ」に警戒! 美子さんが注目している意外な通貨って…!?(11月23日、松崎美子)
もし、ユーロ圏の各地で独立運動が盛んになってくれば、来年(2018年)のマーケットを賑わすテーマになるかもしれませんね。
■ECBが動いた! それってテーパリングでしょ?
こんな感じで、ユーロ圏では今年(2017年)、政治的なイベントが相次ぎました。そのユーロ圏の金融政策を担当するECBは、何か行動を起こしたのでしょうか?
結論から言えば、主要政策金利は1年を通じてゼロ%で変わらず、金融機関がECBに資金を預ける時に適用される中銀預金金利もマイナス0.40%のままということで、金利面での変更はありませんでした。
※ECBのデータを基にザイFX!が作成
その一方で、ECBは10月の理事会で、量的緩和策の縮小を決定しました。具体的には、現在、月額600億ユーロのペースで実施している資産の買い入れを、来年1月からは月額300億ユーロに減らすというものです。買い入れ期間は2018年9月まで延長されたものの、2015年1月に始まった異例の緩和政策を、徐々に解除していく決断を下したのです。
市場はこれをテーパリング(※)とみなしていますが、このときドラギECB総裁は、必要に応じて購入額を増やしたり、期間を再延長するかもしれないので、「政策の『再調整』であってテーパリングではない」と説明しました。
(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
ただ、どちらにしても、ECBの資産購入ペースが来年(2018年)から緩やかになるのは事実です。利上げはまだ先の話になりそうですが、ユーロ圏の金融政策にも変化が出てきたということですね。
最後は、新興国通貨の中から、動きのあったものを…
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