(「教えて、美子さん! 英ポンドはどう動くの? 1992年の屈辱を避ける利上げやるやる詐欺」からつづく)
■英ポンドの「通貨の天秤」はどうなっている?
Brexit交渉の難航や利上げによる個人支出の低迷、通貨安による物価高、それに企業の英国流出など、暗い話ばかりの英国。短期的な乱高下はあっても長期的な上昇余地は限定的なのかも。
「私の書籍でも紹介した『通貨の天秤』で考えても、ファンダメンタルズ、とくに政治の部分で売り。
金融政策は引き締めというより正常化にすぎないし、利上げ余地も少ないことを考えると、英ポンドの天秤は売りの側に傾いていますよね」

■欧州で懸念される「2つのドミノ」とは?
じゃあ、離脱される側のユーロはというと、こちらも明るい材料はない。懸念されるのは独立ドミノと離脱ドミノ、2つのドミノだ。
「カタルーニャ情勢は日増しに悪化して驚かされましたが、注目してほしいのが独立運動の旗を振っていたプチデモン前カタルーニャ州首相がベルギーに出国していたこと。
ベルギーのフランダース地方は独立機運が高まっている地域。ベルギー政府は寝た子を起こしてほしくないでしょう」

写真はカタルーニャの独立を求めて実施されたデモの様子。その後、旗振り役となっていたプチデモン前カタルーニャ州首相はベルギーへ出国していた (C)David Ramos/Getty Images
スペインでも独立運動が懸念される地域がある。
「スペインのバスク地方では以前から独立運動がくすぶっています。『独立ドミノ』のような形で波及していくとユーロの不安要因ですよね」
さらには中欧でも火種が。
「ポーランドやハンガリー、チェコ、スロバキアの4カ国は仲がよく、『ヴィシェグラード・グループ』を形成しています。
10月に行われたチェコの総選挙で反EUのポピュリズム政党が大勝しました。ハンガリーでも反EUへの機運が高まっています。
きっかけは難民問題です。この2カ国に感化され、ヴィシェグラード・グループ全体が反EUに染まっていくことも考えられます」

「独立ドミノ」と「離脱ドミノ」、2つのドミノを警戒する松崎さん。これが波及していくとユーロの不安要因になるそうだ
ポーランドの通貨、ポーランドズロチはFXプライム byGMOが2018年1月20日からの取り扱い開始(予定)を発表するなど、隠れた注目通貨。ザイFX!でも以前に取り上げたことがある。
【参考記事】
●JPモルガン棚瀬氏に聞く新興国通貨(2) 2017年のおすすめ新興国通貨はコレだ!
■「マクロン効果」と「メルケルのつまずき」
さて、こうした離脱ドミノを食い止めようと必死なのがドイツやフランス、それにイタリアだ。
「先日の選挙で苦戦したのがメルケル独首相。EUの中心であるメルケルのつまずきは懸念材料です」
「欧州の落第生」と美子さんに言われていたフランスとイタリアは?
「フランスは『マクロン効果』が出ています。PMI(購買担当者景気指数)が上昇傾向で、マクロン大統領も統合の深化をめざして頑張っている。落第生からイチ抜けた感じがあります。
イタリアはというと、来年(2018年)春の総選挙を前に、選挙法の改正を進めているのがプラス材料。前回総選挙で注目されたポピュリズム政党『5つ星運動』の政権獲得が難しくなり、政治的な不安材料は払拭されつつあります。
ただ、イタリアは銀行の不良債権問題が深刻。破たんせずに解決できるのかどうかが気がかり。落第生から抜けるのはもう少し先になりそうです」

独立と離脱の不安はありながらも…
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