■「30年レジスタンス」をブレイクした米10年債金利
先週(2月5日~)、NYダウの週間下落幅はリーマンショック以来の大きさに。日経平均も1891円の大幅下落となりました。原因は何なのでしょうか?
(出所:Bloomberg)
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根本にあるのは米金利の急上昇ですが、VIX指数が急騰したため、先週も紹介した「リスクパリティ」(※)からの売りが出ているようです。
「CTAとリスクパリティ戦略(の投資家)は2000億ドル(22兆円)の世界株を売却している過程にある」との試算もあり、今後も売りが出てくる可能性はありそうです。
(※編集部注:「リスクパリティ戦略」とは、ボラティリティが低い資産を多めに、高い資産を少なめにと調整して、特定の資産の影響を受けにくくしていく投資戦略のこと)
【参考記事】
●NYダウは665ドル安! 日経平均も大幅安! それでも米ドル/円が下げなかったワケは?(2月5日、西原宏一&大橋ひろこ)
●NYダウ、史上最大の暴落にVIX指数の影。ビットコインも真っ青。2日で96%下落って!?
(出所:Bloomberg)
米長期金利は2.8%に達していますね。1988年から引いた30年来のレジスタンスラインをとうとうブレイクしました。とても大きな変化ですよね。
(出所:Bloomberg)
かつて債券王といわれたビル・グロス氏(※)も、現在そう呼ばれているジェフリー・ガンドラック氏も債券バブルへの警鐘を鳴らしていましたが、とうとう実現しましたね。
(※編集部注:「ビル・グロス氏」は、米国の債券運用会社「パシフィック・インベストメント・マネジメント・ カンパニー(PIMCO)の共同創業者で、世界的に有名なファンドマネージャー)
■市場の混乱、いつまで続く?
先週、2月9日(金)のNYダウは引け間際に巻き返し、日足では長い下ヒゲをつけました。米国株は下げ止まったと思いますか?
先週(2月5日~)はVIX指数の下落、つまり低ボラティリティが続くと儲かる商品の価格が暴落しました。それによってポートフォリオが傷んだ投資家の投げ売りも出ています。
同じような商品を持っていた人は多いでしょうからこれで投げ売りが終わったとは思えませんし、リスクパリティからの売りもまだ出てくるでしょう。下落はもう少し長引きそうな感じです。
ただし、VIX指数が高まるということは、上であれ下であれ値動きが荒くなりやすいということ。700ドル下げて500ドル戻すような乱高下に警戒が必要です。
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ボラティリティが高い相場ですので、大きな反発にも気をつけないといけないですね。
■「黒田再任」で円安再開はあるのか?
株式市場やVIX指数は急落していますが、為替市場、とくに米ドル/円は動きが少ないですね。
これも先週話したことですが、現在の動きは米ドル高、円高。ユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルが下がる一方、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も下がっています。
世界的にリスク資産をキャッシュ、つまり米ドルに戻す動きが活発化している一方、国外に出していた円を国内に戻すレパトリエーションの動きも発生しているためです。
そうなると米ドル/円は動きが出にくいのですが、クロス円が下がっている以上、いずれ米ドル/円も下方向に動くと考えています。
【参考記事】
●NYダウは665ドル安! 日経平均も大幅安! それでも米ドル/円が下げなかったワケは?(2月5日、西原宏一&大橋ひろこ)
●VIX指数急騰で低ボラティリティ相場終焉! 株暴落でも底堅いドル/円も下値余地拡大(2月8日、西原宏一)
先週(2月5日~)末には黒田東彦・日銀総裁の再任が決まりましたよね。
米欧がテーパリング(※)へ動く中、日本だけが金融緩和路線を継続しています。今すぐとはいわないまでも、いずれ円安回帰が始まってもおかしくないように思いますが……?
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
「黒田総裁の退任」という円高材料は払拭されましたが、かといって黒田さんにはもう打つ手がないですから円安材料とはなりにくい。
米ドル/円は105円、さらには100円割れもあるのではないでしょうか。ましてトランプ政権の今年(2018年)のテーマは通商問題。なおさら米ドル/円は上がりにくいでしょうね。
【参考記事】
●米通商問題が争点となり米ドル安が進む。ドル/円は110円が決壊! 次は105円へ…!?(1月25日、西原宏一)
共和党政権では米ドル安の傾向がありますものね。コモディティ市場では、短期的に米ドルの巻き返しが起こっていることもあって全般下落しています。
高止まりが続いていたWTI原油もいよいよ下落してきました。ゴールドも足元では下げているのですが、市場の混乱が長引くと「安全資産であるゴールドを買っておこう」と考える人が増えてくるとの見方も出ています。
「3月の米利上げ見送り」との見通しが高まったり、バランスシートの縮小ペースを見直す、といった話が出てくるようだと、ゴールドが一斉に買われ出すような場面も想定されます。
(出所:Bloomberg)
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■13日の日本株オープンは波乱必至!?
今週(2月12日~)気をつけたいのはカレンダー。今日(2月12日)は建国記念日の振替休日のため、日本株市場が休場です。
建国記念日というと2年前の日本株急落を思い出します。個人的にも痛い目を見た思い出が……。あのときはSQ(※)を翌日に控えた木曜日が建国記念日でした。
(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと)
今年(2018年)はSQこそ通過済みですが、先週、2月9日(金)のナイトセッション(夜間取引)がシステム更新のために停止されており、今日(2月12日)も祝日。
つまり明日、2月13日(火)は1.5営業日ぶりの再開となります。急落、急騰いずれも考えられるため、日本株に注意が必要です。
西原さんは今週(2月12日~)、どんな戦略を?
米ドル/円とクロス円、とくに豪ドル/円の戻り売りでいいでしょう。べったり売り続けているのではなく「落ちたところでは一部を利食って、戻ったところで売り直す」といったオペレーションができると、利益をより増やせると思います。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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