■NYダウは9年ぶりの下げ幅を記録
先週、2月2日(金)のNYダウは665ドル安と、9年ぶりの下落幅を記録。週明け(2月5日)の日経平均も前場で565円安と、大きく下げていますね。
(※編集部注:この対談は2月5日(月)午前中に実施されています。日経平均は、前営業日比マイナス592.45円安の2万2682円で後場の取引を終えました)
(出所:Bloomberg)
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原因は、米金利上昇でしょう。これまでの株高は低金利に支えられていましたが、10年債利回りは2.8777%まで上昇しています。
【参考記事】
●ムニューシン財務長官のドル安歓迎発言はやっぱり本音? ドル/円は105円目指す過程(2月1日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
2月2日(金)の米雇用統計が強い結果となったことで、今年(2018年)3回の米利上げへの確信が深まり、もしかして4回も!? との思惑も出てきているようです。
米雇用統計が強かったことが米国株を崩すきっかけになったのかもしれませんね。
■株安でも米ドル/円が下げなかった理由は
先週、2月2日(金)でFRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長が退任し、パウエルさんへと交代しました。FRB議長の交代時、株の急落が起こりやすい経験則があるのですが、早々に発動しましたね。
米国株がこれだけ高い位置にあるなか、株価を崩さないよう、金利を上げていくというのは至難のワザですし、パウエルさんも前途多難です。
あれだけ米国株が落ちたのに、米ドル/円は先週(1月29日~)、110円台で引けましたよね。これは、なぜでしょう?
日銀が2月2日(金)に行なった「指値オペ」(金額に制限を設けず指定した利回りで国債を買い入れるオペレーション)の影響だと思います。
ただ、本日(2月5日)は109円台へと下げているように、タイムラグは伴いながらも、株安とともに米ドル/円も下げていくのではと考えています。
(出所:Bloomberg)
■「リスクパリティ」からの売り
株安はまだ続く、と?
NYダウのチャートは天井を打ったように見えますし、気になるのは「リスクパリティ」からの売り。
「リスクパリティ」は、運用戦略のひとつで、ボラティリティにあわせてポートフォリオを構築する戦略です。
単純に言えば、「ボラティリティが低い資産を多めに、高い資産を少なめに」と調整して、特定の資産の影響を受けにくくしていきます。米国株は、ボラティリティが高まっており、リスクパリティからの売りが出やすい環境となっています。
(出所:Bloomberg)
米国株の急落でボラティリティが高まると、リスクパリティからの売りが出て、さらに下がってしまう。負のスパイラルですね。
彼らはボラティリティを見て機械的に切っていくでしょうから、落ちるときはスパッと落ちやすくなります。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによれば、急落を警告するシグナルが出ているそうで、そのシグナルによる株式市場の平均下落率は12%です。
■株価急落をアップルが示唆していた!?
これまでは、米国株を売る理由がなかったんですよね。低金利だし、景気も業績もいい。しかし、先週(1月29日~)、アップルはiPhoneXの生産数を半減させると発表しました。これが象徴的事象だったのかも……。
リスク回避の動きが強まると、米ドル高・円高になるのが、これまでの教科書的な動きでした。今回もリスク回避、有事の米ドル高になる可能性はありませんか?
大きく言えば株安・債券安(金利高)・米ドル高・円高でしょうし、為替で言えば米ドル高・オセアニア通貨に対する円高のイメージです。
先日、2月のアノマリーを調べたのですが、過去23年のうち、14回は円高となっています。
2月は季節性から言っても円高になりやすいようですね。リスク回避の動きが強まると、ユーロはどう動くのでしょう?
ユーロは、そのときどきによって動きを変えるので、一概に言いにくいのですが、今回で言えばユーロ/米ドルが1.25ドル近辺にある中で、さらに買われるかというと……。
1.21ドル台だった1月でさえ、ECB(欧州中央銀行)高官からユーロ高牽制発言が出ましたから、ここから勢いよく上がるというのは想定しにくいですよね。
【参考記事】
●日銀会合で黒田総裁は「出口」をどう語る? 何をしても上がらないドル/円は売り継続で(1月22日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:Bloomberg)
■NYダウと原油の相関性
コモディティ市場は、まだ急落というほどではないですが、下げ始めていることは、たしか。
最近では、NYダウとWTI原油の相関性が強まっていますし、原油先物市場では、原油の買い越し幅が過去最高に積み上がっています。
(出所:Bloomberg)
米国株上昇で潤ったオイルマネーが原油価格を押し上げているとも指摘されていましたが、米国株が下げるとWTI原油も売りに回るかもしれません。
原油ロングが切らされて原油が急落すれば、今度は、原油の急落を見て米国株がさらに売られるという可能性もありそう。いずれにしろ、原油と米国株の相関性は強まっています。
今週(2月5日~)は、株安の継続を想定して、豪ドル/円の売り、それに米ドル/円の売りを中心に考えていきたいですね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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