■米ドル/円の底割れを判断する2つの「基準点」とは
一方、「底割れ」の定義にもよるが、一体どの水準をもって「底割れ」を判断すべきなのか。こういった質問に答えるには、以下のシンプルなチャートをもってお答えしたいと思う。
(出所:IG証券)
筆者の基準として、まず上のチャートに引かれたように。2015年高値や2016年安値から形成してきた大型トライアングルを維持できるかどうかが挙げられる。同大型トライアングルを維持できる限り、やはり底割れとは言えないかとみる。
次に、やはりトランプ氏当選日(2016年11月8日)の安値101.20円を取り上げたい。同安値を割り込めない限り、米ドル/円の「底割れ」は回避されるといった見方も、それなりの理屈がある。
なにしろ、当日(2016年11月8日)安値はいわゆる「トランプラリー」の起点だったので、下回らない限り底割れとは言い切れないかと思われる。
いずれにせよ、かなり不確実性の高い外部環境において、この2つの「基準点」より上に位置する米ドル/円に関して、過度な弱気はもはやいらないのではないかと思う。
もちろん、「底割れ」を回避できたとしてもすぐにブル(上昇)基調に復帰できるとは限らない。
目下、米ドル/円のリバウンドは、値幅にしてもモメンタムにしても、たいしたものではないから、これから切り返しの継続があっても当面109円台~110円台に制限されるだろう。諸外部材料の変動でまた反落、「二番底」を確認するような値動きがあっても全然不思議ではないから、米ドルの高値を追える段階には来ていない、という認識も重要かと思う。
■ドルインデックスは早期の底割れがなければ一転上放れか
肝心のドルインデックスは、安値圏でのトライアングルを維持し、ここからブレイクの方向次第で大きな値動きをみせてくれると思う。
(出所:Bloomberg)
しかし、前述のように、外部要素の不確実性にトランプ政権の米ドル安志向の割には堅調、といった見方もできるかとみる。ドルインデックスの早期「底割れ」がなければ、逆に一転して上放れしやすいタイミングに入っていくだろうと推測される。
■英ポンド/米ドルはダブル・トップで米ドル全面安一服を暗示
この見方は、最近の英ポンド/米ドルの値動きからも伺えるかと思う。
英ポンド/米ドルは一時高値更新したものの、昨日(4月19日)の急落もあって、日足では「ダブル・トップ」のフォーメーションをもって再度頭打ちの可能性が示唆され、米ドル全面安の一服を暗示しているとみる。
(出所:IG証券)
まとめてみると、米ドル/円を含め、米ドル全体の底打ちは近いと思われ、米ドルの安値を追っていく環境ではないことを記しておきたい。
換言すれば、ユーロなど外貨の高値追いは避けたほうがよいだろう。いずれにせよ、目先はまだ明確なサインがないから、サインが鮮明になるまで辛抱強く待たなければならないが、米ドル全体の春が近いことを念頭に置きたい。
■トランプ政権はアンフェアな争いに先手を打ってきた
最後にまた余計な話かもしれないが、少し政治の話をしたい。前述のように、民主主義国家と全体主義国家の競争自体がアンフェアであること、実はそのことを強く意識しているのがトランプ政権である。
たとえば、ツイッターやフェイスブック、さらにグーグルやGmailも、中国国内での使用が遮断されているが、中国政府機関やその参加組織の多くはツイッターやフェイスブックに多数のアカウントを持ち、日本語を含め、多数の言語で毎日たくさんの情報を流し、非常にうまく宣伝やプロパガンダをやっている。
一方、米政府など民主主義国家やその政府機関の多くはWeChat、Weiboなど、中国本土の主流SNSにアカウントを持つことが難しい。持ったとしても自由な使用は認められず、また、発言ごとにチェックされたり、削除されたりして、完全に中国政府の監視下に置かれる。
民主主義だからこそ、米国生まれのツイッターやフェイスブックなどのSNSは中国政府のプロパガンダを審査したり、遮断したりできるわけがなく、民主主義国家はアンフェアな情報戦を強いられる。
情報戦のみならまだマシだが、民主主義国家はあらゆる面において全体主義国家との競争に不利な面に置かれ、このままでは敗北の運命にあることも自明の理だ。
このような危機感からか、トランプ政権はすでに多くの先手を打ってきたので、その効果も徐々に表れている。当然のように、為替市場にも多大な影響を与えるから、このあたりの話はまた次回。市況はいかに。
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