■トランプ氏の影響による市場の値動きは「ホンモノ」である
前回のコラムでは、「トランプ氏のような変わった者でなければ、冷徹かつ狡猾な長期戦略を持つ中露などの全体主義国に対抗できない恐れが大きいから、米大統領に選ばれたこと自体が歴史的な必然性を表し、また、トランプ米大統領が歴史を作っていく。ゆえに、市場における値動きも歴史の一部であり、『ホンモノ』である」ということを強調した。
【参考記事】
●トランプ氏の言動は乱心ではなく計算ずく!? 変な指導者でなければ中露に対抗できない!(2018年4月13日、陳満咲杜)
中露との対抗は、貿易など実務的な側面が目立つが、本質的にはイデオロギーの競争と言える。究極的に言えば、民主主義と全体主義の対抗と競争であり、西側の民主主義制度自体が、統制が効く全体主義との競争に弱いところがたくさんある。
全体主義の国は、自らの長所をよく知り、また、武器として使用してきたから、同じ武器が使えない民主主義国家としては、トランプ氏のような、乱暴かつ朝令暮改のように見えて、実は巧みな戦略や不屈の意志を持つ「変わり者」がリーダーにならないと、この厳しい競争に負ける可能性が大きい。こういった見方が、前回のコラムの骨子だ。
■最近の市場の値動きを見る上で重要なポイント2点
政治的な話はさておき、相場の話を優先するが、まず強調しておきたいのは、最近の市場の値動きを観察する上で、以下の2つのポイントを忘れてはいけないということだ。
1つは、ファンダメンタルズ上、いろいろな材料が続出したが、リスク緩和(北朝鮮と会談など)の材料があれば、リスクオフにつながる材料(森友問題、米中貿易戦争、シリア空爆、ロシア経済制裁強化などなど)も圧倒的に多かったから、外部環境は総じて不安定であるということ。
もう1つは、トランプ氏が中露の通貨政策を攻撃したように、トランプ政権は相変わらず米ドル安志向にあり、また、それを隠そうとしていない、ということである。
■米ドルはすでに底打ちしたか、底打ちに近い?
ところで、相場の値動きをみる限り、こういった外部要素につられた米ドル全面安にはなっていないことがわかる。トランプ政権の米ドル安志向からすると、むしろ底固いという率直な感想さえある。前回のコラムにて強調していたように、不確実性の高い相場も相場なので、こういった外部要素に左右されそうな相場だからこそ、重要なシグナルを発してくれているかと思う。
【参考記事】
●トランプ氏の言動は乱心ではなく計算ずく!? 変な指導者でなければ中露に対抗できない!(2018年4月13日、陳満咲杜)
それは他ならぬ、米ドル全体(ドルインデックス)にしても、米ドル/円にしても、すでに底打ちしたか、底打ちに近い状況が暗示されていることではないかと思う。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
米ドル/円に関しては、「アベグジット」、すなわち安倍内閣退陣でアベノミクスの終焉といったリスクが完全には織り込まれていないと思うが、それにしてもここから仮に安倍総理の退陣が現実になっても、「底割れ」が生じるほど、インパクトが強いとは限らないだろう。
言ってみれば、相場はいつも先見性をもって将来の出来事を予測しつつ値段を形成していくので、多くの不確実性も想定されればされるほど、現実になった場合のインパクトは低下していく。したがって、米ドル/円の「底割れ」のリスクも低下しつつあるとみる。
一方、「底割れ」の定義にもよるが、一体どの水準をもって…
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