■シリア攻撃もリスクオフの円買いは回避
トランプ大統領が、4月11日(水)にツイッターで、「ロシアは準備しろ。ミサイルがやってくるぞ」とつぶやき、シリア情勢をめぐる地政学リスクが高まりました。
その時点では、いつ攻撃するのかは定かではなかったのですが、4月13日(金)のマーケット終了後に、米英仏が合同でシリアを攻撃しました。
地政学リスクが高まると、安全通貨とされる円は買われやすいことになりますが、英国やマティス米国防長官が「1回だけの攻撃」と発言したこともあり、リスク回避の円買いとはならず、週明け4月16日(月)の米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は、ギャップ(窓)を上に空けて始まりました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 1時間足)
まだ、シリア情勢は緊張状態にありますが、いったんは落ち着いた展開になっています。
【参考記事】
●シリア空爆へのマーケットの反応は限定的。M&Aと原油高で英ポンドに買い妙味アリ!?(4月16日、西原宏一&大橋ひろこ)
●どんな結果でもシリア問題の影響は一時的! 米ドル/円は当面、上下1円程度の動きかも(4月12日、今井雅人)
■トランプ大統領の次の狙いは日本!?
4月13日(金)には、米財務省から為替報告書も発表されました。
サプライズな内容はなかったのですが、円の実質実効レートが、過去20年間の平均と比較すると25%の円安水準で、また、日米間の貿易不均衡を懸念していることが指摘されています。
【参考記事】
●膠着相場が続く中、典型的な教科書通りのヘッド&ショルダーを形成した通貨ペア発見(4月10日、バカラ村)
トランプ大統領は、貿易不均衡の是正を公約に挙げていることから、米ドル/円の水準を下げたいと考えているのではないかと思います。
米国の貿易赤字の相手国としては、中国、ドイツ、日本などが挙げられますが、すでに中国に関しては、関税をかけるという対応をしています。 また、ドイツに関しては、すでにユーロ/米ドルの相場が上昇しているということがあります。
一方、米ドル/円の水準は、ユーロ/米ドルと比べても、米ドル安とはなっておらず、次のターゲットは日本になりやすいのではないかと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 月足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 月足)
■トランプ大統領の圧力を安倍首相はどうかわす?
4月17日(火)~18日(水)には、日米首脳会談が開催されます。
トランプ大統領が、日本を名指しで貿易不均衡だと発言していることもあり、安倍首相とトランプ大統領の蜜月の関係は崩れつつあります。今回の会談は、安倍首相にとって、厳しい会談になるのではないかと思います。
安倍首相とトランプ大統領の蜜月の関係は崩れつつある。今回の日米首脳会談は安倍首相にとって厳しい会談とりそうだ… 写真は2017年の日米首脳会談後に行われた記者会見の模様 (C)Chip Somodevilla/Getty Images
日米首脳会談のテーマは、北朝鮮に関することや、通商政策になります。
北朝鮮に関しては、4月27日(金)に南北首脳会談、5月から6月上旬の間に米朝首脳会談、6月には日朝首脳会談が予定されています。
北朝鮮については、核ミサイルや拉致問題に関して、進展を目指すものになると思います。特に、安倍首相は現在、支持率が低下していることもあり、外交面からこの改善を図ろうとするのではないかと思います。
ただ、トランプ大統領は、11月の中間選挙に向けて、貿易不均衡の是正を進めようとしてくることが予想されます。
トランプ大統領が、米ドル安へ圧力をかけてくると思いますが、安倍首相はそれをかわすことができるのか、今回の日米首脳会談は、重要なイベントになりそうです。
■108円を超えるか超えないかが問題。まだ下落リスクが高い
約2カ月間、米ドル/円は悪材料が出ても、105円以下が底堅く、徐々に下値を切り上げてきていることから、108円を超えると、テクニカル的にはなべ底型となり、110円に向けた上昇となりそうです。
(出所:Bloomberg)
ただ、昨年(2017年)にサポートされていた108円付近が、まだレジスタンスとなっており、ここで上値を抑えられている間は、下落リスクが残ったままになります。
(出所:Bloomberg)
クロス円が、チャート的には上昇の形となっており、米ドル/円もそれに連れる可能性が出てきていますが、108円で上値を抑えられている間は、105円への動きが出てくる可能性の方が高いのではないかと思います。
テクニカル的に米ドル/円は、まだ108円を超えることができていないため、下へ推移する可能性の方が高い状態です。
今回の、日米首脳会談の内容次第となりますが、トランプ大統領の貿易不均衡是正に向けた内容が中心になると、105円をトライする動きが出てくるのではないかと思います。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)