■トルコリラ下落はシリア内戦とともに開始。その逆が起こる!?
ひろこ トルコリラの中長期的な見通しはいかがでしょうか?
エミン このチャートを見てください。トルコリラの下落が始まったのは、シリアの内戦が始まったのと同じタイミングです。つまり、シリア情勢が落ち着けば、この流れが逆に行く。
6月の選挙によって短期的な上下動はあるかもしれません。しかし、エルドアン大統領が勝とうが負けようが中長期的にはポジティブではないかと思います。

(出所:Bloomberg)
ひろこ シリア情勢次第ということですね。3月にアメリカがシリアを攻撃したのは米国内向けのパフォーマンスに過ぎないと見る人もいます。エミンさんはどう考えますか?

3月にアメリカがシリアを攻撃したのはパフォーマンスだったのか質問する大橋さん。シリア情勢は混沌とした状況が続くのだろうか?
エミン パフォーマンスではないでしょう。ただ、アサド派も反アサド派も永遠にシリアで争うわけにはいかない。
来年(2019年)には譲歩しあって今のアサド派が生き残る形であれ、アサドが辞任する形であれ、なんらかの和平が結ばれる可能性もあると思います。
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■揺れる北朝鮮。エミンさんの懸念は「南北統一コスト」
ひろこ 中東と同様、東アジアも揺れています。今年(2018年)に入り、北朝鮮情勢は急速に動き出しました。エミンさんにはどう映っていますか?
エミン 先を見すぎているかもしれませんが、気になるのは南北統一のコストです。ドイツでは東西が統一したとき、20年間で200兆円もの統一コストがかかりました。
ひろこ すごい金額ですね。
エミン 当時の東ドイツは世界17位の経済大国でしたが、それでも200兆円です。北朝鮮のGDPは125位ですから、200兆円どころではないかもしれない。

ドイツでは東西が統一したとき、20年間で200兆円ものコストがかかったという。韓国と北朝鮮の統一は、それどころではない金額になる可能性もあるそうだ。いったい誰が負担するのか…
ひろこ 統一コストを誰が負担するのか。「日本も応分の負担を」という話になるでしょうか?

エミン 「日本のせいで分断したのだから」と請求される可能性はあるでしょう。そもそも韓国人は統一したいのだろうかという疑問もあります。統一に対して高齢者はエモーショナルなアタッチメント(執着)もあるでしょうが、若い人には関係ない。
ただでさえ失業率が高まっている中で統一すれば、自分たちの職を奪われるかもしれない。韓国の若者は切実に心配しているでしょう。
■本当の貿易戦争は「モノを売らない」
ひろこ 現実的に統一の可能性はどう考えますか?
エミン 東西ドイツの統一ではソ連の崩壊というバックグラウンドがありました。しかし、今の北朝鮮にはそうした事情がない。
金正恩が自らの体制を放り出すとは考えにくく、内政は別の体制を維持したまま、外向きにはひとつの朝鮮といったような国家連合をめざすのかもしれません。中国が崩壊するようなことでもあれば話は別ですが。
ひろこ 中国とアメリカの貿易戦争も始まっています。報復関税の応酬がありましたし、4月には中国企業のZTEへ米企業が製品を売ることを禁止する措置もとっています。
エミン 本当の貿易戦争は関税や「我が国の製品を買え!」と要求するのではありません。「うちの製品は売らないよ」ということなんです。

エミンさんいわく、本当の貿易戦争とは自国の製品を対象の国に売らないことだという。米企業が製品を売ることを禁止した中国企業のZTEは、部品調達ができず、苦境に陥っている
ひろこ 日本が太平洋戦争へと突入したときもそうでした。
エミン 1973年のオイルショックでも原油の禁輸措置から中東戦争が始まりました。2010年には尖閣問題の先鋭化から、中国が日本に対して「レアアースを売らないよ」と言った。これも貿易戦争です。
アメリカはこれを理解しているでしょうし、長期的な国家政策として貿易赤字を縮小させようとしているのでしょう。
(取材・文/ミドルマン・高城泰 撮影/和田佳久 編集担当/庄司正高)
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