■日銀の政策調整で住宅ローン金利は上昇へ
注目された先週(7月30日~)の日銀会合は、おおむね事前にリークされていた内容のとおりでした。
サプライズとしては「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持」と期間を示すフォワード・ガイダンスを導入したこと。
「当面の間」については3年程度がコンセンサスとなっているようです。これが「隠し玉」となり、発表直後に株高・円安となりました。
【参考記事】
●日銀は長期金利上昇を条件つきで容認! 米ドル/円の下値余地は徐々に拡大へ…(8月2日、西原宏一)
あわせて長期金利の変動幅を拡大しましたが、この影響はどうでしょうか?
キャップ(上限)はついてはいますが、日銀が現行よりも高い金利水準を容認したことになるので円高要因となります。
また、為替とは関係ありませんが早速、住宅ローン金利を引き上げる銀行が出てきました。住宅ローンを抱えている人、検討している人には気になるところですね。
(出所:Bloomberg)
■貿易戦争、中国の「弾切れ」は近いか
米中貿易戦争では、中国が新たな対抗措置を発表しました。
追加関税第1弾の340億ドル、第2弾の160億ドルに対しては中国も同額の報復関税を発表しましたが、今回はアメリカの2000億ドルに対して中国は600億ドル。弱腰となりつつあります。
中国の「弾切れ」も近いんですね。
4-6月期のGDPが4.1%だったように米国経済は絶好調。貿易戦争では米中ともに痛みを被りますが、より痛みが大きいのは中国です。
共和党系の人たちは「今の米経済が好調さを保っている時が中国を攻めるチャンス」と見ているようです。
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
■中国が困るのに、豪ドル高になるシナリオとは?
今回の中国の発表で注目したいのが、対象品目にLNG(液化天然ガス)が加わったこと。これは自分の首を絞めることになりかねませんよね。
自国に不可欠なものに高額の関税をかける、というのは滑稽といえば滑稽ですね。
写真はLNGを運ぶ輸送タンカー。中国は報復関税の対象品目にLNGを加えたが、これは首を絞めることになりかねないか… (C)Bloomberg/Getty Images
電力をまかなうためには、LNGを他国から買うか、別のエネルギーに切り替えるしかない。ところがLNGは長期契約が主でスポット市場にはあまり出ません。
ここからは私の妄想ですし、長期的な話になりますが、もし、LNGの調達が困難となった場合、石炭に切り替える可能性があります。
そのときに輸入先として浮上するのが北朝鮮やオーストラリア。北朝鮮は経済制裁中ですから、オーストラリアから石炭輸入を増やすのなら豪ドル高の要因となるかもしれませんね。
(出所:Bloomberg)
■「北戴河会議」では習近平への突き上げも?
逆にトランプ米大統領は7月のユンケル欧州委員長との会談で、欧州向けのLNG輸出拡大で合意済み。中国への輸出減少に対する対策はすでに打ってあるわけです。よく練られたシナリオだなという印象ですね。
エネルギーシフトの影響はあるのかもしれないですが、中国頼みだった国は景気の先行きが不安になりますし、シンガポール人などは影響を強く気にしています。
中国では、今週(8月6日~)から「北戴河(ほくたいが)会議」が開催されているようです。共産党首脳や長老が集結し、重要な方針や人事について話し合われる非公式の会議です。
中国国内では習近平国家主席への批判が高まっているようですし、政策転換を求められるかもしれません。なにか情報が漏れてくるようなら要注意ですね。
■ユーロ/円の戻り売りがいいと考える理由とは?
通商政策については、延期が続いていたFFR(日米新通商協議)が8月9日(木)(日本時間10日(金))に開催されます(※)。
(※編集部注:場合により、10日以降も協議が続く可能性がある模様)
そこまで厳しい交渉にはならないだろうと思います。韓国は3月にアメリカとのFTA(自由貿易協定)見直しで合意していますが、その際に結ばされたのが通貨安誘導を禁じる為替条項。
日本に対しては求めてこないだろうと思いますが、マーケットが気にするようだと円高リスクになる可能性もありますね。
マーケットの動きはいかがですか?
気にしている節目はユーロ/米ドルの1.15ドルと、豪ドル/米ドルの0.73ドル。先に割り込むのは0.73ドルかと思っていたのですが、先週(7月30日~)からユーロ/米ドルが下げ始めており、1.15ドルに近づいてきました。
【参考記事】
●日銀の金融緩和政策修正は「地ならし」程度のものに!? 米ドル/円はどう動くのか?(7月30日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:Bloomberg)
原因のひとつはイタリアかもしれませんね。来年(2019年)度予算をめぐって財政収支悪化への懸念が高まっています。
緊縮派の財務相が辞任に追い込まれる可能性も指摘されており、マーケットではイタリア国債が売り込まれて10年債利回りは一時3.1%を上回っています。
(出所:Bloomberg)
5月にイタリアの金利が急騰してユーロが売り込まれたときも1.15ドルはブレイクできませんでした。もし今回、1.15ドルが決壊すると1年ぶり。下げが大きくなる可能性があります。
それに加えて、米ドル/円は日銀の政策により上値の重い展開が予想されます。そう考えると、今週(8月6日~)はユーロ/円の戻り売りがいいのではないでしょうか。
(出所:Bloomberg)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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