■米国株は史上最長の強気相場を記録!
海外出張で本コラムを1回お休みさせていただいた間、またいろいろな材料が出てきた。いつものように、いろいろな見方があるが、もっとも重要なのは、以下の2つではないかと思う。
1つは、米国株ブルラリーの史上最長記録更新。もう1つは、トランプ米大統領による米利上げ牽制だ。
米国株の総合指数とされるS&P500は、8月22日(水)までの過去3453日連続という新記録をもって、史上最長の強気相場を記録した。2009年3月9日(月)安値から320%の上昇率を達成し、この間、弱気相場の定義とされる20%以上の調整はなかったから、ブルラリーとして歴史に刻まれるに違いない。
(出所:Bloomberg)
しかし、注意していただきたいのは、この記録は目先も毎日更新されており、20%以上の下落がなければ強気相場が継続し、また、いつ終焉するかは誰も判定できないということだ。
「米株『史上最長』の強気相場を疑う」といったウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などの有力紙の記事タイトルからしても、市場関係者の多くは新記録に「浮かれている」わけではなさそうだ。だからこそマーケットセンチメントはなお、正常範囲にあると考えられる。
高揚感を伴わないバブルは存在しないから、逆に冷静な市場心理が広がっているうちは、バブルの心配があっても、行きすぎた懸念は不要だと思う。
■米国株の動向はリスクオン・オフを左右する最大決定要因
筆者が米国株の動向をもっとも大事な要素として挙げてきた理由は、他ならぬ、リスクオン・オフを左右する最大決定要因と考えているからだ。
たびたび指摘してきたように、米利上げサイクルにおいて、米国株は容易には崩れないから、逆説的に言えば、米国株が堅調なうちは、米経済成長は健全で、利上げの余地がまだ大きいことが示唆される。
だからこそ、米国株が堅調でさえあれば、本格的なリスクオフ云々はあり得ないと言い切れたわけだ。
このロジックを理解できれば、中国株や中国人民元の暴落(※)にしても、トルコをはじめ、新興国通貨の暴落にしても、また米中貿易戦争の泥沼化にしても、さまざまな悪材料が出てきても為替市場に本格的なリスクオフがもたらされなかったことに、納得できるかもしれない。
(※執筆者注:中国人民元安は一時、2015年のチャイナショック時を超えた値幅だった)
■トランプ氏が常識外れのことを言っても影響は限定的
次に、トランプ氏が「FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げを牽制した発言」についてだが、発言自体は品がなく、また常識外れであり、「違法」とまで言われてもおかしくないレベルのものだった上、トルコ大統領のエルドアン氏の言うことと大して変わらず、この意味では「衝撃」だった。
しかし、これで米ドル安が決定されると思うのも、短絡すぎて幼稚である。トルコリラが暴落したように、米ドル全体が暴落する気配はまったくなく、これからトランプ氏が何を言おうと、基本的にマーケットにもたらす影響は一時的で、また限定的であると思う。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
なぜなら、米国は成熟した民主主義国家であり、いくら変わり者が大統領になったとはいえ、大統領個人の思想で国の根幹やしくみが変わるはずもないことを、市場はよく知っているからだ。
FRBの、中央銀行としての独立性が憲法によって保障されている以上、トランプ氏の発言がいくら過激だったとしても、市場関係者は深刻に受け取らないはずだ。
一方、トルコや中国のような新興国、特に全体主義色の…
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