■中国人民元の反発で米ドル安に
為替市場で目先、注目されているテーマは、トルコリラと中国の貿易戦争になります。
これまで、米中の貿易戦争により、中国人民元安トレンドとなっていて、米ドル/中国人民元は昨年(2017年)からのレジスタンスとなる7.0元手前まで上昇(米ドル高・中国人民元安)していました。
ただ、8月22日(水)~23日(木)に、米中の次官級協議が開催されることが決まり、それをきっかけに中国人民元が反発しています。
(出所:Bloomberg)
中国人民元と相関性が高い金(ゴールド)や、豪ドル、NZドルなども、同じように反発しています。
(出所:Bloomberg)
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そして、金と逆相関性が高い米ドルも、同じように反転(=米ドル安)しています。
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■米中貿易戦争は継続。中国人民元反発は一時的か
しかし、11月に米中首脳会談が開催される可能性があり、今回の次官級協議は、その事前準備のための協議となりそうです。そのため、今回の次官級協議で何かが決まるということはないと思われるため、現在の中国人民元の反発も、一時的な動きではないかと考えています。
今週(8月20日~)はその他にも、20日(月)~23日(木)に、米国で対中関税の第3弾となる2000億ドル規模の関税に関する公聴会が開催されます。
また、23日(木)には、第2弾となる160億ドル規模の関税措置が、米中双方で発動されます。
米中間の貿易戦争はすぐに収まるようには思えず、11月の米中間選挙に向けて継続すると予想されるため、現在の中国人民元の反発などは、一時的ではないかと考えています。
■今週はジャクソンホール会議が注目イベント!
今週(8月20日~)は、23日(木)~25日(土)に、ジャクソンホール会議(※)も開催され、その中で、24日(金)にパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演が予定されています。
(※編集部注:「ジャクソンホール会議」は米ワイオミング州ジャクソンホールで開催される、カンザスシティー連銀主催の年次経済シンポジウムの通称。世界中の中央銀行総裁や金融関係者の多くが参加するイベントのため、毎年、市場参加者から高い注目を集めている)
ジャクソンホール会議は経済シンポジウムで、基本的には各国の金融政策に関する発言を行う場ではないのですが、相場を動かす発言が出てくることもあります。
リーマンショック以降、先進各国の中央銀行が量的緩和政策を進めてきましたが、それが出口に向かっていることにより、新興国市場からの資金流出が起きており、トルコリラショックも、それが要因の1つになっています。
【参考記事】
●トルコ人ストラテジストが分析! 牧師釈放は近そう。ならばトルコリラ/円は19円まで反発(8月15日、エミン・ユルマズ)
●トルコリラ/円は一時15円台まで大幅続落! 原因はトランプとエルドアンの両大統領!?
FRBは年内にあと2回と、来年(2018年)もまだ、利上げを継続していく予定となっていますが、トルコリラショックの直後ということもあり、ジャクソンホール会議で新興国市場の資金流出や、貿易戦争による中国の景気減速に関する内容が出てくるようであれば、米ドル安に推移する可能性があります。
■ユーロ/米ドルは買い材料ないが…
ユーロ/米ドルは、1.1500ドルのサポートも下抜けたことで、先週(8月13日~)、一時1.1300ドルまで下落しました。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルは三角保ち合いブレイクで1.15ドル割れに再挑戦!? クロス円も売り時か?(8月7日、バカラ村)
●ユーロ/米ドルが約1年ぶりに1.15ドルを下抜け! テクニカルが示唆する下値メドは?(8月14日、バカラ村)
ただ、8月20日(月)にトランプ大統領が、パウエルFRB議長の利上げに不満があると発言をしたこともあって、ユーロ/米ドルは1.1480ドル付近まで反発してきています(※)。
(※編集部注:本記事の寄稿後、8月21日(火)の東京時間にユーロ/米ドルは一時、1.1542ドル付近まで上昇した)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
市場参加者のポジションも、1.15ドルが下抜けたことで短期的に売りに偏り、反発しやすい状況となっていたところに、そのような発言も加わったため、ユーロ/米ドルはショートカバーとなっています。
また、金が4カ月続いた下降トレンドから、下ヒゲのあるローソク足で反発を示唆していたこともあって、相関性からもユーロ/米ドルは反発しやすい状況にありました。
ユーロ/米ドルは、買うほどの材料があるわけではないため、戻り売りですが、相関性がある金が底打ちをしていることもあって、ユーロ/米ドルがすぐに下げを再開するような状況でもなくなっています。
■米国債への投機筋の売り越しが過去最大!
米ドル/円は、110~112円のもみ合いが続いていますが、CFTC(全米先物取引委員会)が発表するIMM(国際通貨先物市場)における米10年物国債の投機筋の売りポジションが過去最大になっていることから、米長期金利が上昇しにくく、そのため、米ドル/円も上がりにくい展開が続くと考えています(※)。
(※編集部注:本記事の寄稿後、8月21日(火)の東京時間に米ドル/円は一時、109.78円付近まで下落した)
※CFTCのデータを基にザイFX!が作成
(出所:Bloomberg)
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株式市場も、トルコや中国などのリスクもあって楽観的になれないことから、米ドル/円の上値は重いままではないかと考えています。
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