■ドルインデックスの調整とドル/円の押し目買いについて検証
前回の本コラムでは、2つの見方を提示していた。1つはドルインデックスの調整が続くこと、もう1つは米ドル/円は押し目買いのスタンスを維持することだ。今回は引き続き、その検証を行いたい。
【参考記事】
●米ドル全体が大きく反落しても米ドル/円は例外!? 押し目買いのスタンスを維持せよ!(2018年9月14日、陳満咲杜)
まずドルインデックスだが、昨日(9月13日)続落、目先も94台前半で軟調に推移と、前回の見方を証左する値動きになっていると思う。
前回は主にエリオット波動論の視点で見ていたが、今回はプライスアクションの視点でチェックしておきたい。
前回のコラムでも指摘したように、9月4日(火)の高値(B)が重要であった。この高値を早期突破できない限り、ドルインデックスの調整が続く見通しだった。

(出所:Bloomberg)
その後、9月7日(金)の陽線(矢印)に注目していただきたい。同線は強気「アウトサイド」(※)、また「リバーサル」(※)のサインを点灯したものの、やはり一時的なものに留まり、9月4日(火)高値のブレイクにはつながらなかった。そして、逆に9月12日(水)に、9月7日(金)安値の割り込みが確認されたから、一段と軟調な値動きを強化したとみる。
さらに細かいプライスアクション上の視点もあるが、ここでは省略し、大まかな判断の提示に留めたい。
要するに、ドルインデックスの調整波は、8月15日(水)の値からスタートし、8月28日(火)安値をもっていったん下げ一服を果たしたが、前述のシグナルが確認され、再度調整(下落)に復帰したとみるべきだ。
戻りの高値は9月4日(火)の95.68前後なので、同じ値幅で測ると、これから93の節目近くまで下落余地が想定されるかと思う。
(執筆者注:すべてプライスアクション用語。詳細は筆者の新刊『パターンを覚えるだけで勝率7割超! FXチャートの読み方~欧米投資家が好んで使うプライスアクションの教科書』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス))をご参照)
【ドルインデックスの参考記事】
●米ドル全体に賭けろ! FX界の日経平均=ドルインデックスを取引する方法があった!
■ユーロ/米ドルは1.18ドル台後半にトライの可能性も
ドルインデックスの対極はユーロなので、ユーロ/米ドルの切り返しの継続もわかりやすかったかと思う。
8月15日(水)安値~8月28日(火)高値までの上昇途中、8月23日(木)のみ陰線引けだったので、当然のように、同安値のチャートポイントとしての意味合いは大きかった。
その後の反落で、9月4日(火)の「スパイクロー」をもって8月23日(木)安値の水準を確認したことで、同水準(1.1530ドル前後)のサポートの意味合いを強化したことがわかる。
9月10日(月)の陽線(B)が、同水準をいったん下回ったものの、一転して陽線で大引けしたことで、事実上「フォールス・ブレイクアウト」、すなわちサポートに対する打診や一時の下放れが「ダマシ」であったことを暗示した。
となると、ユーロは続伸し、また、9月6日(木)高値のブレイクをもって8月高値の突破につながる公算が高まるだろう。同じジグザグ変動の見方を取れば、これから1.18ドル台後半の上値トライがあってもおかしくなかろう。
■米ドル/円押し目買いスタンスは、リスクオンが前提条件に
そして、米ドル/円の押し目買いのスタンスだが、その前提条件として、まず強調しておきたいのは、ほかでもない、米国株をバロメーターとすると、リスクオフの環境ではないということだ。
周知のとおり、リスクオフになれば安全資産とされる円が大幅に買われてもおかしくないから、まず、この前提条件を確認しておかないといけない。
新興国通貨や株の軒並み下落や、米中通商摩擦の懸念で、リスクオフ云々の論調も根強いが、的を射ていないだろう。
繰り返し強調してきたように、米国株が崩れない限り、リスクオフはあり得ない。米利上げが確実視される中、ダウ輸送株指数が高値更新するなど、米国株の堅調さがむしろ目立ち、新興国リスクがあったからこそ、米国株に資金が集中したという感さえある。
詰まるところ、トルコの利上げとか、米中交渉再開とか少し「好材料」が浮上すれば、株式市場がすぐそれに好感し反応する状況から考えて、目先、リスクオンの環境にあることは間違いない。日米通商摩擦の懸念もいずれ剥落していくと思う。
■ユーロ/円の値動きも、リスクオン環境を示している
こういったロジックがわからなくても、単純にユーロ/円の状況を見ればわかる。
要するに、ドルインデックスが調整していくから、ユーロは切り返しが継続される公算なのだが、その一方、もしもリスクオフの環境であれば円が買われるため、結局、ユーロ/円は上がれない、または下落していくと推測される。
逆に言うと、ユーロ/円も切り返しの構造を示すなら、リスクオフ云々は余計だ。言い換えれば、市場の構造自体がリスクオン・オフを示すのだが、それにはユーロ/円のプライスアクションが大いに参考となり、事前に解読可能、ということだ。
その解読の仕方は、9月12日(水)にレポートにまとめたので、開示しておきたい。本文は以下のとおり。
(出所:FXブロードネット)
ユーロ/円は保ち合いしながら、やはりGMMAチャートにおける「鰯喰い」、即ち調整済のサインを点灯しているとみる。同見方、PA(プライスアクション)の視点でも検証され、また蓋然性が高まりつつある。
8月安値~8月高値までの「10連陽」は既述の通り、8月30日の大陰線をもって途中のスピード調整を始めたが、ジグザグ変動構造自体が示した構造にしても、全上昇幅に対する半分押しから見ても、同調整がすでに完成された見通し。
更に、一昨日の陽線は実質上の「強気リバーサル」のサインを点灯、昨日の続伸をもたらしたこともあって、一段と調整変動の完成を証左。昨日の高値、前記ジグザグ変動の切り返しに当たる5日高値に近く、同日高値129.98のブレイクがあれば、ブル基調も一段と強まる公算。
オシレーター系指標らの多くも基調の好転を支持、MACDのシグナルが鮮明化されていないものの、ゼロラインの上にキープ、8月安値を起点とした切り返しの継続を示唆。本日の値動きが限定的になる可能性(昨日陽線とインサイドを形成するといった局面が想定される)もあるが、早晩上放れの機運が高まるでしょう。ユーロ/円の堅調、リスクオンの環境の継続を示すから、マクロ的な視点において、やはり米株市場を中心としてブルラリーの継続を有力視。
■米ドル/円もユーロ/円も上放れを果たしたとみる
この前提条件が確認されると、米ドル/円の押し目買いにも安心感が出る。米ドル/円については、昨日(9月13日)、配信したレポートをもって、プライスアクションの視点を説明したい。本文は以下のとおり。
ドル/円は保ち合いを続けている。日足では一目均衡表の「雲」ゾーンにて保ち合いの局面を長引いているが、9日安値からの切り返し、同ゾーンの下限を再確認、またGMMAチャートにおける「鰯喰い」のサインの形成に繋がり、やはりブレイク待ちしつつ、上放れの土台をできているとみる。
プライスアクションの視点では、7日の陽線引き、8月31日罫線が示した「スパイクロー」の意味合いを強化、またレンジの下限に対する一時の下放れ自体が「ダマシ」であったことを暗示していた。
同じ視点では、5日の高値もレンジの上限を一旦トライして失敗していたので、「フォールス・ブレイクアウト」に近いサインを点灯していたとみる。従って、ここから上放れの確認、5日高値111.76のブレイクを前提条件となり、またブレイクをもって上昇波への復帰を示唆しよう。
同見方、前記GMMAのサインとの整合性のほか、上のチャート上記しているように、「逆三尊型」の形成や上放れにも繋がるから、一段と上昇モメンタムの加速をもたらす公算。ブレイク待ちを。
昨日(9月13日)、米ドル/円もユーロ/円も大きく続伸したので、ともに上放れを果たしたとみる。ゆえに、米ドル/円の押し目買いのスタンスは不変。また、これとリンクするように、煮詰まりつつある日経平均もそろそろ本格的な上放れを果たすだろう。円売り・日本株買いの戦略は不変。
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