■米雇用統計、平均時給は2009年以来の高水準
8月の米雇用統計は、強い数字が出ましたね。特に注目されたのは、平均時給。2.9%増と2009年以来の高い伸び率となり、米10年債利回りは2.94%まで上昇しました。
ジャクソンホールでのシンポジウム以降、意識されていた利上げサイクルの終焉、金利先高感の後退に、いったん歯止めがかかりましたね。
【参考記事】
●FRB議長が利上げの終盤を印象づけた!? 新興国から流出した資金が向かう先は…?(8月27日、西原宏一&大橋ひろこ)
でも、この1、2カ月、米長期金利は、2.8%から3%をウロウロしているだけ。今回の米雇用統計で3%を上抜けするかというと、そこまでの強さは感じません。
(出所:Bloomberg)
米10年債先物のポジションもショートが拡大し、大口の売り越しは前週の52万枚から68万枚へ。米金利は、上がりにくいのかもしれませんね。
為替市場では、米ドル安の流れが、いったん反転したようにも見えますが、いかがでしょうか。
(出所:Bloomberg)
■米ドル/円は通商問題とM&Aの綱引きでジリジリ円高へ
短期的な上がり下がりはあるのでしょうが、ドルインデックスやユーロ/米ドルが反転した8月15日(水)を転換日として、米ドル安へと流れが変化した、との見方は変えていません。
【参考記事】
●FRB議長が利上げの終盤を印象づけた!? 新興国から流出した資金が向かう先は…?(8月27日、西原宏一&大橋ひろこ)
金(ゴールド)が安値をつけたのも8月15日(木)でしたね。金のナンバーワン需要国であるインドが収穫期、婚礼期で需要が高まるため、ここからカレンダー的には上昇しやすい時期になります。
これまで米ドル高トレンドであったことが金売りを強めてきましたが、米ドル安転換なら金も強気でよさそうです。
(出所:Bloomberg)
一方では、トランプ米大統領が中国に対して2000億ドルの追加関税に加えて、「私が望めば、さらに2670億ドル相当の追加関税を発動する用意がある」と発言。
日本に対しても、「私が彼らに対し、彼らがどれだけ支払う必要があるか告げた途端に(安倍首相との親しい関係は)終わるだろう」と述べています。
通商摩擦への懸念が高まれば米ドル/円は売られますが、下がれば日本企業によるM&Aが出てくる。通商問題とM&Aが綱引きしながら、ジリジリと円高方向に進むのではないでしょうか。
(出所:Bloomberg)
■レイバーデイ明けは流れが変わりやすいので注意
株式市場も弱含みです。特に、DAX(ドイツの代表的な株価指数)は三尊天井を形成しつつあり、ネックライン割れとなれば大きな下落となりそう。
(出所:Bloomberg)
ドイツ銀行が、ユーロ・ストックス50指数から除外されることが判明し、大株主だった中国の海航集団は株を売却するそうです。
アメリカでも、テスラCEOのイーロン・マスクが大麻を吸引しながら生放送に登場したことが話題となりました。
【参考記事】
●イーロン・マスクCEOに大麻騒動!? 株価は10%下落。テスラ株をカラ売りする方法は?
カリフォルニア州では大麻が合法なのですが、我々だってビールを飲みながら番組に出演することはありません。イーロン・マスクの人間性に、大きなクエスチョンがついてしまいます。
テスラは、これからの資金調達が厳しくなるかもしれないですね。
それはともかく、例年レイバーデイ(9月3日)明けは、市場の流れが変わりやすい時期。株式市場の動向には気をつけたいですね。
【参考記事】
●9月入りで相場のセンチメントに変化…!? 米国株調整入りなら豪ドル下値余地拡大!(9月6日、西原宏一)
■トルコ中銀など、13日20時台に金融政策イベント集中!
今週(9月10日~)は、13日(木)にECB(欧州中央銀行)、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])、そして、トルコ中銀の政策発表が集中します。
欧英は、ともに動きはないでしょうが、英ポンドはちょっとした発言で大きく動くので要注意。
市場が注目しているのは、BOEと同じく20時に発表されるトルコです。トルコ中銀は、「9月の金融政策委員会で金融のスタンスを調整する」と表明済み。市場は5%程度の利上げを期待しています。
ハードルが高いだけに、利上げに消極的なエルドアン大統領の反対を振り切って5%以上の利上げに踏み切れるのかどうか…。トルコリラが戻さないと、新興国から資金が抜ける動きは止まらないのではないか、と思います。
(出所:Bloomberg)
日米新通商協議も再開予定ですね。9月20日(木)の自民党総裁選が終わってから本格的に動き出すのではとの見方があり、25日(火)に首脳会談を行なう方向で調整中との報道も出ています。
11月6日(火)の米中間選挙に向けて、何らかの「戦利品」を渡さないといけないのでしょう。大手外銀から「米国株の下落に備えよ」とのレポートが相次いで出ていますし、中間選挙へ向けたヘッジを推奨する銀行もあります。
【参考記事】
●9月入りで相場のセンチメントに変化…!? 米国株調整入りなら豪ドル下値余地拡大!(9月6日、西原宏一)
ボラティリティが低下している米ドル/円ですが、中間選挙へ向けて動き出す可能性があり、方向性としては、株式市場が崩れるのであれば下なのでしょう。
■豪ドルクロスでの豪ドル売りを継続
今週(9月10日~)の戦略は、どう考えますか?
対米ドルで主要通貨の動きを見ると、8月15日(水)以降、もっともパフォーマンスが悪いのは豪ドル。
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
年初来でも豪ドルやNZドルは売られており、逆に買われているのはスイスフランと円です。
豪ドルは米中貿易戦争の犠牲となっており、上海総合指数を見ながら、豪ドルクロス(米ドル以外の通貨と豪ドルとの通貨ペア)で豪ドルを売っていくのがいいのではないでしょうか。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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