■雇用統計は好結果だが、米ドル/円は111円付近でもみ合い
先週、9月7日(金)の米雇用統計は、平均時給がプラス0.4%、前年比ではプラス2.9%と、かなり良い数字が出ました。
FRB(米連邦準備制度理事会)の今年(2018年)の利上げは、あと2回という予想が多いですが、1回という予想もあり、その理由は、低インフレや貿易戦争懸念などでした。
しかし、今回の米雇用統計の数字を受けて、低インフレを理由とした懸念が後退し、年内の利上げ予想も2回の可能性が高まっています。
とはいえ、米ドル/円は、米国が中国への2000億ドルの追加関税を発動する可能性もあるため上昇も一時的で、111円を中心とした、もみ合いが継続しています。
(出所:Bloomberg)
また、先週(9月3日~)後半には、トランプ大統領が、「日本と貿易交渉で争う」と発言していたこともあり、米ドル/円の上値を抑えています。
■英ポンドはブレグジッド絡みのヘッドラインで乱高下!
ユーロ/米ドルも、1.16ドルを中心としたもみ合いが継続していますが、英ポンドに関しては、ヘッドラインで乱高下が続いています。
(出所:Bloomberg)
先週(9月3日~)、5日(水)には「英独のブレグジット交渉で主要な要求を取り下げる」との報道で、英ポンド/米ドルが1.2982ドルまで急騰しましたが、すぐにドイツ報道官から「ブレグジット交渉は変わっていない」と、それを否定するような内容が出てきて、急落へ。
そして、昨日(9月10日)は、EU(欧州連合)のバルニエ首席交渉官が、「6~8週間でブレグジット交渉の合意は現実的」になると発言し、再度、急騰しています。
(出所:Bloomberg)
英ポンドを売るようなネガティブな材料もあるのですが、英ポンドはポジティブな材料に反応しており、ここまで売られ過ぎていた英ポンドのポジションの買い戻しが入っているのではないかと思います。
とすれば、まだ英ポンド/米ドルは上昇する可能性が高いのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
■利上げ幅が小さければ、トルコリラは、また下落!?
今週(9月10日~)、13日(木)はBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])やECB(欧州中央銀行)の金融政策発表がありますが、トルコ中銀の金融政策の発表もあります。
市場では5%前後の利上げ予想が多いですが、予想の利上げ幅は、ばらけており、発表時にはトルコリラは乱高下するのではないかと思います。
【参考記事】
●9月会合でトルコ中銀は500bp利上げ必要!? まさかの無策なら、トルコリラ/円は14円へ…(9月5日、エミン・ユルマズ)
もし、利上げ幅が小さいようであれば、トルコリラは下落することになると思います。
(出所:Bloomberg)
ユーロ/米ドルは、1.15ドルが8月10日(金)まで約1年間サポートされていましたが、トルコリラショックの影響でサポートが下抜け、1.1301ドルまで下落しました。
(出所:Bloomberg)
今回は、トルコリラが下がったとしても、先月(8月)ほどの大きな動きにはならないと思いますが、ある程度の影響は、ユーロ/米ドルにも出てくるのではないかと考えています。
■中国株はテクニカル的に下落余地アリ!
トランプ大統領は、中国への通商政策による圧力を弱めておらず、2000億ドルの追加関税が発動される可能性がまだあり、また、2670億ドルのさらなる追加関税の可能性も示唆しています。
【参考記事】
●米中間選挙前の米ドル/円は下がりやすい! 2000億ドルの対中関税は米国にも悪影響!?(9月4日、バカラ村)
それも影響しているため、中国株は上値が重たいのですが、サポートは、まだ割れていない状況です。
徐々に上値が下がってきており、ディセンディングトライアングルを形成している状況で、波動的には、もう一度、上値を試す動きは出てくると思いますが、その後は、サポートを下抜けて下落してしまうのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
■膠着する米ドル/円だが、112円~113円台では売りと見る
現在、米ドル/円の買い材料には、金利差や米国の景況感、資金還流などがあり、売り材料には、貿易戦争懸念やトランプ大統領の米ドル安発言、日本と争う発言、日銀のステルステーパリング観測などがありますが、結果、その綱引きで膠着している状態です。
ただ、中国株が下落すれば、他の株式市場も軟調となり、それに連れて米ドル/円も下がるのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
お伝えしたとおり、中国株は、もう一度、上値を試す可能性があるため、しばらく、もみ合いが続く可能性があります。米ドル/円も、まだ、もみ合いが続くと思います。
しかし、ディセンディングトライアングルということもあって、中国株は今後、下落する可能性が高いので、米ドル/円も、それに連れて下がってしまうのではないかと考えているわけです。
【参考記事】
●米長期金利に3%上抜けの勢い感じず…。短期的な上昇はあっても米ドル安は不変!(9月10日、西原宏一&大橋ひろこ)
米ドル/円は、まだ膠着状態にあるため、売るような状況ではないですが、112円~113円台では売りではないかと考えています。
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