■ドルインデックスのスピード調整はクロス円の反騰要因に
一方、ドルインデックスにおけるスピード調整は、主要外貨のリバウンドを意味するから、それが主要外貨の円に対するリバウンドにつながるのも容易に推測される。
というのは、繰り返し指摘してきたように、今回の世界株式の大波乱は、そもそも米ドル/円に対する影響が少なかったから、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における円高圧力は、ほぼ主要外貨安から形成されてきたと言える。
換言すれば、リスクオフ型の円買いは今回の急落局面では見られなかったから、株式市場の大波乱は、本格的なリスクオフ云々よりも、「買われすぎ」の反動やプログラム取引に主導される変動率の拡大が主因であったのではなかいかと思われる。
もちろん、相場は複雑であり、一言で片付けられるものではなかろう。
米中貿易戦争の行方、米中間選挙の状況、英EU離脱の不確実性、新興国における通貨危機、経済危機の蔓延、そして、日本サイドでは来年(2019年)予定されている消費税増税がもたらすセンチメントの悪化などなど、懸念材料が噴出してきたのが株価に大きな打撃を与えたのも事実であり、これからの懸念材料続出も警戒されるところだろう。
しかし、強調しておきたいのは、相場には常に進んで諸材料を織り込み、また、市場参加者の思惑を織り込んでいく性質があるから、前述の懸念の多くはもう株価に織り込まれているうえ、株価の反応自体が「行きすぎ」であった可能性も大きいということだ。
■日米株はもう最悪の市況をすぎている
前述のように、確かに懸念材料は多いが、市場関係者は常に最悪の局面を想定して判断し、また、株価に反映させてきた上、プログラムよる一方通行になりやすい取引の蔓延もあって、こういった最悪の判断や思惑はすでに株価に織り込まれた公算が大きい。
市場はあとになって同じ材料を蒸し返すことがあっても、事後的に同じ材料を織り込んでいくことは基本的にないから、日米株に限っていえば、もう最悪の市況をすぎていると思う。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
それどころか、最悪と想定されていただけに、少し緩和の兆しがあれば、今度はサプライズとして好材料にあわてて反応していく可能性も大きい。
この場合、テクニカル視点におけるいわゆる「売られすぎ」に対する修正が始まり、場合によっては一転して大きく反騰し、V字型リバウンドを形成していくだろう。
昨日(11月1日)、トランプ米大統領による「習氏と長い電話をし、これから話し合う」という内容のツイートが、本日(11月2日)の日経平均2万2000円回復につながったのが目先の好例で、リバウンドにつれ、不思議なことにファンダメンタルズ上の好材料も続出してくるのが、今までの相場の常だった。
Just had a long and very good conversation with President Xi Jinping of China. We talked about many subjects, with a heavy emphasis on Trade. Those discussions are moving along nicely with meetings being scheduled at the G-20 in Argentina. Also had good discussion on North Korea!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2018年11月1日
よって、逆説的にいえば、筆者が想定していた日経平均のV字型回復が継続する場合は、米中間選挙を含め、これからの材料は、どちらかというと「好材料」になりやすいかと推測される。
■米ドル/円に大きなサイン点灯、年内115円超えも?
最後に肝心の米ドル/円だが、既述のように、2018年年内に115円の大台トライの見方は不変、また場合によっては上方修正の必要も出てくるだろう。なぜかというと、米ドル/円に大きなサインが点灯したからだ。
このサインに関して、10月30日(火)のレポートで説明したので、以下に開示する。
(出所:FXブロードネット)
10月25日レポートをもってドル/円の究極なサインの形成を予想していたが、結果的に先週末一旦安値更新となり、サインの点灯はもうないかと思いきや、今度こそ究極なサインが点灯されている模様だ。そのポイントはやはり22日高値に接近していること、またこれからブレイクされていく公算が大きいとみるが、何よりも10月26日の安値更新、一時に留まった上、22日高値のブレイクをもって究極な「ダマシ」のサインを点灯する見込みにあるからだ。
既述のように、22日の112.88の高値トライ、この前の「IOi」(a)のサインを一旦上放れを果たしたから、本来続伸するはずだったが、その後の「インサイド」(b)の形成や下放れをもって先週末の安値トライに繋がり、22日の上放れ自体が「ダマシ」だったことを示唆していた。
一方、26日の安値更新、ザラ場において15日安値を一旦下回ったものの、大引けでは比較的高く、「スパイクロー」のサインを点灯、15日安値に対する安値更新自体も「ダマシ」の可能性を暗示していた。ここで重要なのは、前記のように、本来、15日安値に対する更新、22日の上放れが「ダマシ」だったことが証左したからこその出来事なので、再度「ダマシ」のサインが点灯されば、非常に大きな反転の力が内容構造にあり、またそれこそ究極な反転のサインと言える。
従って、昨日の大幅反転や本日目先までの続伸は同反転の蓋然性を示し、22日高値のブレイクがあれば、正式にこの究極なサインを点灯しよう。詰まるところ、26日の罫線は大きな「フォールス・ブレイクアウト」のサインなので、これから切り返しを継続させ、また年初来高値の更新に繋がっていくでしょう。世界株式市場の大波乱に鑑み、このサインの蓋然性は一段強まれるかと思う。
何回も強調してきたように、米ドル/円は株式市場とリンクした下落を見せなかったので、今回のサインはホンモノの公算が高い。また、株価の反騰が見られる場合、米ドル/円は先に進み、2018年年初来高値の更新を果たすだろう。市況はいかに。
(14:00執筆)
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