■世界同時株安でも米ドル/円は下落せず
日経平均やNYダウなどをはじめ、今月(10月)に入ってから、世界同時株安となっていますが、米ドル/円は112円台を中心とした推移が続いています。
(出所:Bloomberg)
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10月26日(金)には、株安だけでなく、米長期金利が3.06%まで低下したこともあり、米ドル/円は一時、111.37円まで下がりましたが、すぐに反発し、現在も112円台で推移しています。
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111円台には、M&Aや外債投資の買いもありますが、111.60円に大きなオプションもあるため、下落の続かない状態となっています。
【参考記事】
●株式市場が二番底付けるタイミングが来る!? その時、米ドル/円は再び下落する可能性大(10月23日、バカラ村)
●世界的株安でも米ドル/円はなぜしっかり? 米ドル高鮮明に。111円台は買い方針で!(10月26日、今井雅人)
●日経平均の下落に米ドル/円が連動しない異常事態! 「間違った動き」はどっち?(10月26日、陳満咲杜)
■トランプ大統領の発言でも動かなかった理由は?
11月6日(火)は米中間選挙ですが、米国株はこれが終わるまでは、本格的な上昇も難しいのではないかと思います。
市場のコンセンサスでは、上院は共和党が、下院は民主党が勝利し、ねじれ議会になることが予想されています。
トランプ大統領は、「中所得者層への追加減税を中間選挙前に発表する」と発言していましたが、ねじれ議会になると、その実行性も難しくなるため、市場もそれには反応していない状況です。
先週末(10月27日)には、トランプ大統領が「日本の自動車に20%の関税をかける」との発言もしましたが、市場は中間選挙に向けた発言だと考えており、これも市場への影響は、ほとんどない状態です。
最近のトランプ大統領の発言は米中間選挙に向けたものとの見方が優勢。中間選挙では民主党が下院で過半数を奪還して議会にねじれが生じる可能性が高く、そうなると、政策の実現も難しくなることから、トランプ大統領の発言で為替が動くことが少なくなっているようだ
(C)Chip Somodevilla/Getty Images
トランプ大統領の発言によって、為替が動くことは少なくなってきました。これからも、中間選挙に向けた発言が多くなるものの、選挙のための発言というのがわかるため、それを材料に継続的には動くことはないと考えています。
米ドル/円は下がらず、ただし上がる材料もないため、しばらくは112円を挟んだ推移がまだ続くのではないかと考えています。
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■なぜ、いったんは米ドル安になってもおかしくないのか?
欧州では、Brexit(英国のEU離脱)協議が継続しており、その影響もあって、英ポンドは軟調に推移しています。
11月にEU(欧州連合)首脳会談が開催できるのかは、まだ不透明な状態で、時間の経過とともに、合意なき離脱(※)の可能性が高まることになります。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
要人からは、離脱を1年延ばすとの発言もあります。そのような発言があるということは、合意にたどり着くのもまだ遠いのではないかと思います。
英ポンド/米ドルは、1.29ドルのサポートを下抜けたことで、8月の安値1.2660ドルをメドとした、下落の可能性が出てきています。
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ただ、米ドルの総合的な強さを表すドルインディックスは、年初来高値の96.98まで、あと少しに迫っています。
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ユーロ/米ドルは1.13ドルのサポート目前、米ドル/スイスフランは1.0068スイスフランの高値目前と、一度は米ドル安に推移しても良いような水準まで来ています。
(出所:Bloomberg)
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英ポンドは軟調になりやすいものの、英ポンド/米ドルは、戻りを売っていくべきではないかと思います。
■オセアニア通貨は底堅いけれど、上昇も期待しにくい
欧州通貨は軟調な展開となっていますが、オセアニア通貨は底堅い展開となっています。
NZドル/円は72円台前半で4回、反発しており、豪ドル/円も79円や9月の安値を下抜けたにも関わらず、下ヒゲの長いローソク足となりました。
(出所:Bloomberg)
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株式市場が下落すれば、オセアニア通貨が一番売られることが多かったのですが、今回は底堅い展開です。
ただ、底堅くはありますが、上昇するほどの状況でもないようで、膠着した動きというのが、正しいです。
米中の覇権争いや貿易戦争が緩和されない限り、豪ドルの上昇も、期待しにくい状況のようです。
【参考記事】
●米中貿易戦争は収まるどころか深刻化…!? 下値余地拡大の豪ドルには戻り売りで臨む!(10月18日、西原宏一)
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