■米ドル/円は200日線ブレイクの可能性も
ところで、前回の本コラムにおいても強調したように、米ドル全体の上昇モメンタムが著しく強まっている場合は、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における外貨安も鮮明になってくるから、米ドル/円にとっても受動的な円高圧力になりかねない。
【参考記事】
●米ドル高は新たなステージに入りそうだが、ドルインデックスの強気で米ドル/円頭打ち!?(2019年2月15日、陳満咲杜)
一方、2月15日(金)高値からドルインデックスが調整してきた分、足元はなお保ち合いの市況にすぎず、米ドル/円の切り返しの一服も、後ずれの可能性は大きい。
したがって、頭打ちになる前に、米ドル/円はいったん200日線(≒111.30円)にトライ、また一時にせよ、いったんブレイクを果たす余地がある。
(出所:Bloomberg)
米中交渉への期待や日米金利差拡大の観測は、円の反騰を抑える側面もあり、米ドル全体の高値保ち合いは、米ドル/円にとって「居心地がいい」環境であることを示唆している。次にきっかけや決定的な材料が出るまで、緩やかな切り返しを保つ可能性が大きい。
一方、ドルイデックスが持ち直しているところから考えて、米ドル高の構造が証左された以上、早晩上値打診、また、ブレイクを果たすだろう。
■主要外貨の反発はすでに終焉に近い
米ドル高の途中におけるスピード調整は、ユーロや英ポンドなど主要外貨の反発を許していたが、それはすでに終わったか、終わる段階に近いところまで来ているとみる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
実際、EU(欧州連合)圏2月製造業PMIは、68カ月ぶりの安値、ドイツ同指標は74カ月ぶりの安値を更新したことが示しているように、EU圏の景気減速感は、米国より著しい。
英国に至っては、市場をうんざりさせるほど離脱問題が長引き、EUとの協議が期待されているものの、やはりハードランディングの可能性を排除できずにおり、主要外貨の下値リスクはくすぶる。
仮に、これから米景気減速が一段と鮮明になれば、世界景気はもっとダメになるから、消去法による米ドル選好は、引き続き市場のロジックとして有効と思われるわけだ。
換言すれば、ユーロにしても、英ポンドにしても、昨年(2018年)だいぶ下落してきたから、再度の底割れまでいくぶんのスピード調整を果たす余地はあるものの、ベア(下落)トレンド自体の修正は容易ではない。
■豪ドルが他の主要外貨の値動きに先行
前述のように、前回のFOMCに際しても、今回のFOMC議事録の発表に際しても、米ドル高の構造を繰り返し確認した以上、主要外貨の安値打診、また、底割れは避けられないとみる。その時、クロス円経由の円高圧力の高まりで、米ドル/円の年初から継続してきた切り返しもいったん頭打ちとなろう。
先行しているように見えるのが豪ドル/米ドルと豪ドル/円だ。昨日(2月21日)豪ドルは対米ドルにしても、対円にしても大陰線をつけ、日足では「弱気リバーサル」のサインを点灯し、頭打ちを示唆した。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
詳細にみると、昨日(2月21日)は豪雇用統計好調で切り返しの高値にトライしたものの、豪大手銀行による利下げ予測で一転して急落、その後、米中貿易協議進展の報道でいったん持ち直したが、中国による石炭禁輸報道で再度急落してきた経緯があった。かなり波乱となった1日だったが、弱気サインを形成した以上、これから下値余地を拡大するだろう。
■今後のクロス円における円高は、米ドル/円より外貨しだい
注意していただきたいのは、やはり、豪ドル/米ドルの大幅反落があったからこそ、豪ドル/円も追随した点だ。なにしろ、米ドル/円が小動きに留まるなら、なお切り返しを保っていることになるから、この豪ドルの値動きは「これからのクロス円における円高は、米ドル/円より外貨しだい」ということへ大きな示唆を与えているのではないかと思う。
こういった値動きや傾向は、豪ドルが先行し、その後、ユーロや英ポンドなど主要外貨が追随してくる公算が高い。このシナリオに関する検証はまた次回。市況はいかに。
(10:30執筆)
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