■為替市場は総じて米ドル高の基調を維持
為替市場は保ち合いを繰り返しながら、総じて米ドル高の基調を保っている。
テクニカルの視点で見ると、ドルインデックスが96付近のサポートゾーンを維持しているところは大きく、ブル(上昇)基調の継続が有力視される。
(出所:Bloomberg)
ドルインデックスは昨年(2018年)年末高値に迫る状況にあった。ドルインデックスは2月15日(金)高値97.23からすでに調整してきているが、こういった調整自体をブルトレンドにおけるスピード調整の一環と見なせば、むしろ、この調整はこれから昨年(2018年)高値にトライする値動きを、より健全化させる側面が大きい。
米ドル高の内部構造を検証するイベントとして、2019年1月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)は最も重要であった。
既述のとおり、FRB(米連邦準備制度理事会)のハト派スタンス表明があったにもかかわらず、ドルインデックスが200日移動平均線(200日線)のサポートを再確認してから上昇してきたのが、大きなヒントであった。
(出所:Bloomberg)
1月24日(木)高値96.37が、それ以前の戻り高値だったが、そのレベルのブレイクも確認されたことが、米ドル高の基調をより鮮明化させたとみる。
■FOMC議事録は「思ったほどハト派ではない」?
同じ理屈で2月20日(水)に公表された1月29日(火)~30日(水)のFOMC議事録も、重要なヒントをくれたと思う。
前述のように、ドルインデックスは96の節目を守り、昨日(21日)陽線で大引けしたから、上昇途中の調整はすでに完了した公算が高い。
なぜなら、同議事録をもってFRBはバランスシート縮小終了に関する計画を近いうちに公表する方針を示し、「忍耐強い」とされる金利水準のキープ期間に関する論議が行われたことを明らかにしており、同議事録はFRBのハト派スタンスを証左する内容ではあったが、市場の値動きに照らして考えると、どちらかというと、「FRBは思ったほどハト派ではない」といった認識が市場では形成されつつあると思うからだ。このような反応パターンは1月末のFOMC後と似ているようにみえる。
いつものように、市場関係者の同議事録に関する見方はわかれるところだ。全方位型のハトであることが繰り返されたとみる向きもあれば、不透明な期間を通過すれば、次は利上げだとみる向きもある。総合的にみれば、「思ったほどハト派ではない」といった思惑が強くなり、一時浮上した「次は利下げ」という思惑が後退したと思う。
■経済指標の悪化も米ドル売りにはつながらなかった
ゆえに、米経済指標の結果が芳しくなくても、米ドル全体が一段と反落することはなかった。耐久財受注、中古住宅販売件数など指標は軒並み市場予想に届かず、特に2月フィラデルフィア連銀製造業景況指数はマイナス4.1と、2016年5月以来のマイナス圏に沈み、また、市場予想のプラス14の数値と大きく開きがあったが、それは米ドル売りにはつながらなかった。
あとを追う形での米経済指標の悪化は、FRBの慎重姿勢を証左する内容としてむしろ受け入れやすいといった解釈もあるが、大事なのは相場の反応だ。前述のように、ドルインデックスは96の節目や96前半を守り、持ち直しているところが最大のヒントであるとみれば、やはり米ドル高の基調は崩れず、これからも継続される公算は高い。
(出所:Bloomberg)
ところで、前回の本コラムにおいても強調したように…
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)