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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

米ドル高構造再確認! 米経済指標が悪化
しても、なぜ米ドルは大きく売られなかった?

2019年02月22日(金)15:12公開 (2019年02月22日(金)15:12更新)
陳満咲杜

FXトレーダー・羊飼いに聞く、初心者におすすめのFX口座の選び方とは?

■為替市場は総じて米ドル高の基調を維持

 為替市場は保ち合いを繰り返しながら、総じて米ドル高の基調を保っている。

 テクニカルの視点で見ると、ドルインデックスが96付近のサポートゾーンを維持しているところは大きく、ブル(上昇)基調の継続が有力視される。

ドルインデックス 4時間足
ドルインデックス 4時間足

(出所:Bloomberg)

 ドルインデックスは昨年(2018年)年末高値に迫る状況にあった。ドルインデックスは2月15日(金)高値97.23からすでに調整してきているが、こういった調整自体をブルトレンドにおけるスピード調整の一環と見なせば、むしろ、この調整はこれから昨年(2018年)高値にトライする値動きを、より健全化させる側面が大きい。

 米ドル高の内部構造を検証するイベントとして、2019年1月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)は最も重要であった。

 既述のとおり、FRB(米連邦準備制度理事会)のハト派スタンス表明があったにもかかわらず、ドルインデックスが200日移動平均線(200日線)のサポートを再確認してから上昇してきたのが、大きなヒントであった。

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足

(出所:Bloomberg)

 1月24日(木)高値96.37が、それ以前の戻り高値だったが、そのレベルのブレイクも確認されたことが、米ドル高の基調をより鮮明化させたとみる。

■FOMC議事録は「思ったほどハト派ではない」?

 同じ理屈で2月20日(水)に公表された1月29日(火)~30日(水)のFOMC議事録も、重要なヒントをくれたと思う。

 前述のように、ドルインデックスは96の節目を守り、昨日(21日)陽線で大引けしたから、上昇途中の調整はすでに完了した公算が高い

 なぜなら、同議事録をもってFRBはバランスシート縮小終了に関する計画を近いうちに公表する方針を示し、「忍耐強い」とされる金利水準のキープ期間に関する論議が行われたことを明らかにしており、同議事録はFRBのハト派スタンスを証左する内容ではあったが、市場の値動きに照らして考えると、どちらかというと、「FRBは​思ったほどハト派ではない」といった認識が市場では形成されつつあると思うからだ。このような反応パターンは1月末のFOMC後と似ているようにみえる。

 いつものように、市場関係者の同議事録に関する見方はわかれるところだ。全方位型のハトであることが繰り返されたとみる向きもあれば、不透明な期間を通過すれば、次は利上げだとみる向きもある。総合的にみれば、「思ったほどハト派ではない」といった思惑が強くなり、一時浮上した「次は利下げ」という思惑が後退したと思う。

■経済指標の悪化も米ドル売りにはつながらなかった

 ゆえに、米経済指標の結果が芳しくなくても、米ドル全体が一段と反落することはなかった。耐久財受注、中古住宅販売件数など指標は軒並み市場予想に届かず、特に2月フィラデルフィア連銀製造業景況指数はマイナス4.1と、2016年5月以来のマイナス圏に沈み、また、市場予想のプラス14の数値と大きく開きがあったが、それは米ドル売りにはつながらなかった。

 あとを追う形での米経済指標の悪化は、FRBの慎重姿勢を証左する内容としてむしろ受け入れやすいといった解釈もあるが、大事なのは相場の反応だ。前述のように、ドルインデックスは96の節目や96前半を守り、持ち直しているところが最大のヒントであるとみれば、やはり米ドル高の基調は崩れず、これからも継続される公算は高い

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足

(出所:Bloomberg)

■米ドル/円は200日線ブレイクの可能性も

 ところで、前回の本コラムにおいても強調したように、米ドル全体の上昇モメンタムが著しく強まっている場合は、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における外貨安も鮮明になってくるから、米ドル/円にとっても受動的な円高圧力になりかねない。

【参考記事】
米ドル高は新たなステージに入りそうだが、ドルインデックスの強気で米ドル/円頭打ち!?(2019年2月15日、陳満咲杜)

 一方、2月15日(金)高値からドルインデックスが調整してきた分、足元はなお保ち合いの市況にすぎず、米ドル/円の切り返しの一服も、後ずれの可能性は大きい

 したがって、頭打ちになる前に、米ドル/円はいったん200日線(≒111.30円)にトライ、また一時にせよ、いったんブレイクを果たす余地がある。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:Bloomberg)

 米中交渉への期待や日米金利差拡大の観測は、円の反騰を抑える側面もあり、米ドル全体の高値保ち合いは、米ドル/円にとって「居心地がいい」環境であることを示唆している。次にきっかけや決定的な材料が出るまで、緩やかな切り返しを保つ可能性が大きい。

 一方、ドルイデックスが持ち直しているところから考えて、米ドル高の構造が証左された以上、早晩上値打診、また、ブレイクを果たすだろう。

■主要外貨の反発はすでに終焉に近い

 米ドル高の途中におけるスピード調整は、ユーロや英ポンドなど主要外貨の反発を許していたが、それはすでに終わったか、終わる段階に近いところまで来ているとみる。

米ドルVS世界の通貨 日足
米ドルVS世界の通貨 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足

 実際、EU(欧州連合)圏2月製造業PMIは、68カ月ぶりの安値ドイツ同指標は74カ月ぶりの安値を更新したことが示しているように、EU圏の景気減速感は、米国より著しい。

 英国に至っては、市場をうんざりさせるほど離脱問題が長引き、EUとの協議が期待されているものの、やはりハードランディングの可能性を排除できずにおり、主要外貨の下値リスクはくすぶる

 仮に、これから米景気減速が一段と鮮明になれば、世界景気はもっとダメになるから、消去法による米ドル選好は、引き続き市場のロジックとして有効と思われるわけだ。

 換言すれば、ユーロにしても、英ポンドにしても、昨年(2018年)だいぶ下落してきたから、再度の底割れまでいくぶんのスピード調整を果たす余地はあるものの、ベア(下落)トレンド自体の修正は容易ではない

■豪ドルが他の主要外貨の値動きに先行

 前述のように、前回のFOMCに際しても、今回のFOMC議事録の発表に際しても、米ドル高の構造を繰り返し確認した以上、主要外貨の安値打診、また、底割れは避けられないとみる。その時、クロス円経由の円高圧力の高まりで、米ドル/円の年初から継続してきた切り返しもいったん頭打ちとなろう。

先行しているように見えるのが豪ドル/米ドルと豪ドル/円だ。昨日(2月21日)豪ドルは対米ドルにしても、対円にしても大陰線をつけ、日足では「弱気リバーサル」のサインを点灯し、頭打ちを示唆した。

豪ドル/米ドル 日足
豪ドル/米ドル 日足

(出所:Bloomberg)

豪ドル/円 日足
豪ドル/円 日足

(出所:Bloomberg)

 詳細にみると、昨日(2月21日)は豪雇用統計好調で切り返しの高値にトライしたものの、豪大手銀行による利下げ予測で一転して急落、その後、米中貿易協議進展の報道でいったん持ち直したが、中国による石炭禁輸報道で再度急落してきた経緯があった。かなり波乱となった1日だったが、弱気サインを形成した以上、これから下値余地を拡大するだろう。

■今後のクロス円における円高は、米ドル/円より外貨しだい

 注意していただきたいのは、やはり、豪ドル/米ドルの大幅反落があったからこそ、豪ドル/円も追随した点だ。なにしろ、米ドル/円が小動きに留まるなら、なお切り返しを保っていることになるから、この豪ドルの値動きは「これからのクロス円における円高は、米ドル/円より外貨しだい」ということへ大きな示唆を与えているのではないかと思う。

 こういった値動きや傾向は、豪ドルが先行し、その後、ユーロや英ポンドなど主要外貨が追随してくる公算が高い。このシナリオに関する検証はまた次回。市況はいかに。

(10:30執筆)

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