■金融ショックが起こる可能性は高くないが、新興国通貨に注意
リーマンショックから10年が経過し、次の金融危機はいつ来るのか、と気になる投資家も多いだろう。中島氏は、今のところ、大きな金融ショックが起きる予兆は乏しいと言う。
「ITバブルやサブプライムショックなど過去の例を見ると、その直前に世界の株価時価総額とその世界GDP比が急激に上昇している傾向が見られます。これに対し、現状の株価は高値から下落した水準で落ち着いており、バブル状態とはいえない」

(出所:独立行政法人・経済産業研究所 中島厚志氏の資料より)
株式市場でバブルがはじける心配はなさそうだが、為替にはやや不安材料があるという。新興国通貨に対する米ドルの水準を示すOITP指数が、公表されるようになった1995年以降で最高水準に達していることだ。

※名目OITP指数は米国の主要貿易相手国でその通貨の交換性が乏しい国を対象としたドル指数。1997/1=100
(出所:独立行政法人・経済産業研究所 中島厚志氏の資料より)
OITP指数とは、米国の主要貿易相手国の中で、中国、韓国、台湾、アルゼンチンなど通貨の交換性が乏しい国々の通貨に対する米ドルの水準を示しており、上昇するほど新興国から資金が流出し、通貨下落が加速する可能性が高まるのだという。
「新興国全体では債務残高の対GDP比は安定しているのですが、とくにトルコや南アフリカ、アルゼンチンといった対外債務が積み上がっている国ほど、流出の危険が高いことには注意しておく必要があるでしょう」
■ファンダメンタルズを凌駕する急変動に注意
2019年は年明けからフラッシュ・クラッシュという激しい変動に見舞われたが、中島氏はこれはファンダメンタルズとは無関係の値動きだと指摘する。近年の為替市場では、こうした根拠に乏しいリスク懸念にだけ基づく急変動が起こりやすくなっているという。
「ファンダメンタルズから導き出した予想レンジも、こうした行き過ぎた変動には役に立たない。前後のトレンドとは無関係の予期せぬ値動きには十分注意する必要があるでしょう」

中島氏は、近年の為替市場では、根拠に乏しいリスク懸念にだけ基づく急変動が起こりやすくなっていると指摘。前後のトレンドとは無関係の予期せぬ値動きには十分注意する必要があるという
投資家はリスク管理を怠ることなく、慎重に2019年相場に向き合いたい。
(取材・文/森田悦子 撮影/和田佳久/ 編集担当/ザイFX!編集部・庄司正高)
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