昨日の英議会で一連のBREXIT関連法案の採決を終えた。メイ首相の離脱案は否決され、「合意なき離脱」は回避すべきとの決議が通過し、そして最後に離脱の延期である。これらはすべて予想通りの展開であった。
そもそも現時点において何も決まらないのだから、離脱を延期するしかないのはわかりきったことだ。それをもったいぶったように日数をかけている姿は、やったフリをしているだけと世界からは見通されている。
想定の範囲内のことしか起こらなかったことで、この2、3日のマーケットの動きも実に乏しい。為替相場も株価も値幅が実に小さい。さらに懸念されるのは今後のボラティリティの低下である。
結果が見込み通りだったとは言え、BREXITは今年第一四半期の最大の不安定要因の一つでもあったのだ。それが終わった段階となっては、次なる材料を欲する展開にならざるをえないのは確かだ。
とくにポンドの動きに顕著に表れており、ポンドドルはまったく激しい動きを止めている。そして離脱延期が決まった後にはむしろポンドの利食い売りの形となった。ニューヨーク時間だけではドル円もユーロドルもほとんど動かなかった。いずれも20ポイントほどしか動いていない。これでは為替相場を相手に手を出そうという気が失せるのも仕方がない。
マーケット的には離脱延期のほうに傾いたことが、ハードBREXITは遠のいたと思って歓迎している。離脱が延期されるということは、現状のEU残留というステータスを維持するということだ。
資本市場に混乱が起こらないことは確かに歓迎かもしれないが、そもそもの国民投票の原因になった移民・難民問題もそのまま継続されることになる。多くの移住者が生活を脅かすことにノーを示したのではなかったか。
難民を受け入れること自体は誰も反対はしないし、自分が負担を強いられるならば我慢もしよう。それが先進国の務めだとも考えていたはずだ。しかし自分自身のことならばまだしも、子供や孫の生活に関連してくると我慢できるものではなくなるのが人情だ。
自分の子供には教育費のためなどで携帯電話の使用を禁止しているのに、難民の子供がスマホで通信しているのを見ていると、大いなる矛盾にさらされたはずである。トランプ大統領の支持と同じで、声には出せないが移民政策に反対する声のマグマが貯まっていたからBREXITになったようなものだ。
そういうわけで離脱延期を先延ばしといってのんきに構えてもいられないのが、イギリス国内の事情である。5月のEU議会に人を出すのか。そして最終的にはEU離脱がかなうのか。議会での論戦でも解説できない深刻な問題に直面している。
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