■超ハト派なFOMCで米ドル全体は一段と反落
日本時間3月21日(木)未明、3月FOMC(米連邦公開市場委員会)を通過し、米ドル全体は一段と調整(反落)してきた。市場の予想を上回るハト派的な決定がなされたからだ。
(出所:Bloomberg)
FOMCメンバーの政策金利見通しの中央値として、「2019年年内政策金利引き上げなし」と示されたから、前回(2018年12月)示された2回分の引き上げから、一気に下方修正された上、2020年の政策金利引き上げは1回と、2015年以来の政策金利引き上げの最終局面が示された。
一方、月間500億ドルペースで進めているFRB(米連邦準備制度理事会)の保有資産縮小策は、2019年9月末に停止することも決まった。
FOMC後、米ドルの反落が一段と進んだのは、市場コンセンサスより一段とハト派寄りとなったFRBの決定が理由だと思われる。
大きなサプライズはないものの、市場関係者の多くが2019年年内1回の利上げ、またバランスシートの縮小は年末時点で停止と考えていたところへ、FRBの一段とハト派シフトした政策が発表され、やや戸惑った模様だ。
■市場はすでにハト派姿勢を警戒、影響は今のところ限定的
とはいえ、その戸惑いがもたらした影響は、現時点では限定的だと思う。なにしろ、マーケットはFRBのハト派姿勢をすでに警戒していた。昨年(2018年)年末以降、トランプ氏の攻撃に耐えられなかったか、それとも株安の影響で臆病になったかは定かではないが、パウエル議長の政策運営は事実上、驚くほどハト派方向にシフトしてきていたから、市場関係者の大半は腹をくくっていた。
要するに、FRBの「豹変」がすでになされていた以上、市場関係者にとって大きなサプライズにならないはずだ。実際、ドルインデックスは昨日(3月21日)反騰し、一時割り込んでいた200日移動平均線(200日線)をまた回復している。
(出所:Bloomberg)
■米利上げ最終局面にあることは覚悟すべきだが…
とはいえ、昨年(2018年)年末のFOMC以降、経済情勢に特段大きな変化があったわけでもなく、また、米国株がだいぶ戻ってきたところに、FRB政策の一段のハト派シフト自体が大きなメッセージとなった可能性は大きい。
言ってみれば、今回の一段踏み込んだ政策は、経済・金融情勢の変化を受けた一時的なものではなく、より構造的なものだと考えられる。
そうなると、米利上げ最終局面にあることは覚悟すべきであろう。歴史に照らして考えると、利上げ最終局面における各セクターのパフォーマンスに何かのヒントが得られるなら、今だからこそ参考にすべきではないか。
以下は、あくまで前例であり、また、大まかな傾向であることをご注意いただきたいが、利上げ最終局面における各セクターのパフォーマンスの、大まかな傾向の比較である。
1.商品>債券>株式
2.先進国>新興国
3.市場変動率拡大
4.原油>貴金属(金を含め)
5.米ドル全体は上昇するが、段階ごとに相違が大きい
ここで大事なのは、過去の事例をまとめてみると、巷の常識に反して、利上げ最終局面における米国株や米ドル全体のパフォーマンスはおおむね良好だ、ということである。
■米ドルの高安は米国以外の主要経済圏との比較で決まる
米長期金利の低下に伴い、米国株は往々にして上昇傾向を強めていくというのは理解しやすいと思うが、米ドルの高安が米国株のパフォーマンスよりもEU(欧州連合)など米国以外の主要経済圏との比較で決定されることは、広く認識されたロジックとは言えないかもしれない。
要するに、米利上げの最終局面は、往々にして世界景気後退の懸念が出やすい時期に差し掛かり、米国に比べ、諸外国や地域の状況がより悪化していた、といった前例が多かった。
つまるところ、消去法による米ドル選好はむしろ、米利上げ最終局面の後半において一段と鮮明になってくるから、米利上げ停止=米ドル安といったロジックは短絡的すぎると言える。
もっとも、主要中銀におけるバランスシート政策は…
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