■ブレグジットに関する採決で英ポンドが乱高下
先週(3月11日~)の為替市場は、ブレグジット(英国のEU離脱)に関する採決で、英ポンドが乱高下しました。
3月12日(火)に、離脱修正案の採決が行われましたが、その前に、「法的拘束力のある修正を確保した」との報道で英ポンドは上昇し、採決が可決されるとの期待も膨らみました。
ただ、英法務長官が「法的リスクは変わらない」と発言したことで、英ポンドの上昇分は吐き出され、採決前の水準に「行ってこい」となる、乱高下となりました。
離脱修正案の採決に関しては、否決されました。
【参考記事】
●英離脱修正案の採決にサプライズはある? 結果次第で英ポンドのポジティブ要因に!?(3月12日、バカラ村)
そして翌日(13日)の、合意なき離脱(※)の是非を問う採決は、完全に排除する案が可決され、合意なき離脱の可能性が低くなったことから、英ポンドは上昇しました。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
【参考記事】
●英・合意なき離脱の可能性は、ほぼ消滅。円売り需要を背景に米ドル/円は115円へ!(3月14日、西原宏一)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
14日(木)は、離脱期限延期の採決でしたが、条件付きで可決され、今後は3月20日(水)までに離脱修正案が合意されれば、6月末までの短期の延期となり、合意できなければ、長期の延期をEU側に要請することになります。
【参考記事】
●メイ首相最後の賭け! 3月19~20日も山場、21~22日も山場。混乱の英国から直送レポ!(3月18日、松崎美子)
●3度目の採決はどちらに転んでもポジティブ!? 英議会見つつ英ポンド/米ドルを押し目買い(3月18日、西原宏一&大橋ひろこ)
●EU離脱期限の延期が可決されない可能性!? 基本戦略は対円・対ユーロでの米ドル買い(3月14日、今井雅人)
■EU残留なら英ポンドの大幅上昇を見込めるが…
離脱の延期に関しては、3月21日(木)からEU首脳会談が開催され、ここで27カ国すべての国が、延期を承認する必要があります。
要人の中には、延期に関して反対するような発言をする人も出てくると思いますが、ここで承認されないとなると、離脱期限が過ぎて、自動的に合意なき離脱となります。そうなると、金融ショックにもなりかねず、それを避けるために、承認されるものと思います。
長期の延期となった場合は、解散総選挙の可能性もありますが、再度の国民投票の可能性が出てきます。そうなると、EU残留の可能性も出てきて、英ポンドの上昇は大きくなることになります。
(出所:Bloomberg)
国民投票の可能性が出てくる場合は、離脱強硬派が反対することが予想されるため、実施の思惑が出るのは、まだ数カ月ぐらいは先になると思います。この可能性が出たら、英ポンドは上昇すると思いますが、それまでには、時間がかかることになると思います。
これまで、離脱修正案が否決され続けて、合意が遠く感じていましたが、離脱強硬派はEU残留を避けたいために、合意する可能性も浮上してきており、もし合意となれば、英ポンドは上昇することになります。
ただ、EU残留となった場合よりも、英ポンドの上昇幅は、小さくなると考えています。
【参考記事】
●メイ首相最後の賭け! 3月19~20日も山場、21~22日も山場。混乱の英国から直送レポ!(3月18日、松崎美子)
■合意なき離脱の可能性は低下。ヘッドラインには注意
英ポンドが下がるとすれば、合意なき離脱になったときですが、その可能性は非常に低くなっており、英ポンドは高止まりしている状態です。
大手金融機関は、合意なき離脱の可能性を5%程度と予想していますが、それよりも、もっと低いのではないかと考えています。
ブレグジットが大詰めを迎えていることもあり、英ポンドのボラティリティは高まっている状態です。要人発言などのヘッドラインで乱高下するため、ポジションコントロールには気をつけるべきかと思います。
■FOMCはハト派な内容か? 利上げ見通しに注目!
今週(3月18日~)は、19日(火)~20日(水)に、FOMC(米連邦公開市場委員会)も開催されます。
政策金利は、据え置きになると考えています。
※2008年12月以降は誘導目標レンジの上限を掲載
※FRBのデータをもとにザイFX!が作成
一方、昨年(2018年)12月時点の、FOMCメンバーの金利予想(ドットチャート)では、2019年の利上げ回数は2回となる見通しでしたが、市場の利上げ織り込み度を示すCME(シカゴマーカンタイル取引所)のFedウォッチでは、現在、年内の利下げ確率が約3割となっています。
(出所:FRB)
FOMCメンバーと、市場との見方が離れていることもあって、今回のFOMCで、2019年の利上げ見通しが1回、もしくはゼロになるとの予想が、多数となっています。
米長期金利も2.60%台まで下がってきており、今回のFOMCもハト派な内容となりそうです。
(出所:Bloomberg)
■明確な方向性が出てこない為替市場…
FOMCがハト派となると、米ドル安ということになりますが、FRB(米連邦準備制度理事会)がハト派化していることで、各国中銀もハト派化しているため、株式市場は底堅く推移しています。
ただ、為替市場は、明確な方向性が出てきていない状態です。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
特にユーロ/米ドルは、ECB(欧州中央銀行)理事会でTLTRO(貸出条件付き長期資金供給オペ)の導入が決定し、一時、1.1175ドルまで下落する場面もありました。長くサポートされ続けていた1.12ドルをブレイクし、チャートもファンダメンタルも、ユーロ/米ドルは売り方向でした。
【参考記事】
●英離脱修正案の採決にサプライズはある? 結果次第で英ポンドのポジティブ要因に!?(3月12日、バカラ村)
しかし、英ポンドに連れる動きや、FRBもハト派になっていたこともあり、ユーロ/米ドルは下げが続かず、昨日(3月18日)は1.1358ドルまで上昇しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
■ユーロ/米ドルはレンジと考えて戻り売りで!
テクニカルからは、ユーロ/米ドルは、ECB理事会を受けて大陰線をつけましたが、その日(3月7日)の高値も越えてきています。
ユーロ/円も同じように、ECB理事会後の下げを完全に取り戻しており、チャートからは、ユーロの弱さは見えない状態となっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
ただ、ファンダメンタルズ的には、ユーロ圏の景況感は弱く、金融政策もハト派となっていることから、ユーロは売り方向のままであるため、ユーロ/米ドルは1.1250~1.1400ドルのレンジと考えて、戻り売りで良いのではないかと考えています。
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